前回…→追想の宙は燃えて 終幕
通達の主は…トラベルオーダー。
このシャード船団の根幹を支える技術集団からだった。
シャード船団は言うなれば私達の生きる大地と同義。
それを支えているともなれば、特権階級として手厚く遇されている。
そしてその技術はアクトレスの装備にも及んでおり、トラベルオーダー無しに人類の存続はあり得ない。
特権階級故の傍若無人な振る舞いも黙認されてしまい、感謝の気持ちも無くはないが嫌悪感を抱く者も少なくない。
届いた通達を開封し、目を通す。
…どうやら私に対しての出頭要請と言うことのようだが、その際に明日翔も同席の旨が記されている。
そして文末には…「尚この書類は読了後、自動で焼却される」と…。
輪島
「うぁ…っつ!?!」
いきなり手元で書類が燃え始め、驚いて反射的に投げ出してしまったが、幸い床に落ちるより前に燃え尽きたので火事は免れた…。
封書と言うアナログな手段で送ってきた上で書類自体を隠滅させたと言うことは、相当に重要な話があるらしい。
しかしどんな仕掛けが施されていたのだろうか…こんなものはドラマでしか見たことが無いが、改めて考えると高い技術が要求されることだろう。
文章を読み終わった事を感知する仕掛けに、それと連動する自動発火装置…特に前者は想像もつかない。
出頭した際にでも聞いてみたい気がする。
明日翔も連れていかなければならないので、スケジュールの確認をしなければ…。
この時間ならトレーニング中だろうか。
合成音声
「ミッションクリア」
シミュレータールームに入ると、丁度明日翔がトレーニングを終えたところだった。
シミュレーターの設定を見ると、危険度レベルは設定上限目一杯の100、陣容は先日起こった不慮の遭遇戦、後にOpハルジオンと銘打たれたが、その決戦となった特異型ストリックとの戦闘空域を再現したものとなっていた。
実戦で計測された危険度は120だったが、Aegisのシミュレーターでは安全性も考慮して、100までしか設定出来ないようになっている。
シミュレーターが開き、明日翔がふらつきながら出てくる。
明日翔
「…隊長さん…わたし、やりました~…」
こちらに気付いた明日翔が困憊しながらも微笑む。
あの陣容を、完全再現とまでは行かずとも単騎で突破するとは…。
更に腕を上げたようだ。
もう東京シャードで明日翔に敵うアクトレスはいないだろう。
トラベルオーダーは明日翔に一体何の用があるのだろうか、先程の封書の件を明日翔に伝え、了解を得る。
明日翔を、アクトレスを同席させる以上、装備周りの話になるのだろうか。
そして指定された日時。
アッパーシャードに赴く。
果たして何が飛び出すか。
次回…→共鳴する宙1