→…これは演習である 4より


朱音

「これなら勝ち目はあるわね」


深層の予想交戦ポイントはあと3箇所。


薫子達が侵攻する中層は、これから後半部分へと差し掛かるが、人数は向こうの方が圧倒的に多い。


進捗状況はお互い共有しているので、向こうも一気呵成の大攻勢を仕掛けてくるだろう。


まだまだ気を緩めることは出来ない。



朱音
「じゃぁ次はあたしの番ね」

朱音はメンバーに明日翔と地衛理を指名する。

少々…いや、かなり地衛理に負担のかかる編成だ。


利佳
「ならこっちは…美里江、絵美に頼もうか」

美里江
「了解しまシタ」

絵美
「はい、頑張りますね」

こちらも美里江に負担がかかるが、どちらもまだ正体のはっきりしない新型の大型ヴァイスを警戒しての事だろう。

謎の大型ヴァイスにティタニアの絵美、フェアリー オブ フェアリー明日翔をぶつける意図が見える。

今回も2点同時攻略を目論見、同時に2チームが発艦する。

先鋒は地衛理と美里江。


地衛理
「いいわ!この感覚!」

地衛理は初手からペルセウスを起動している。
目の前のVWスキャッターは下手な大型よりも危険な存在。

出し惜しみは得策ではないだろう。

一方、美里江は


正確にサーペントを撃ち落としていた。

地衛理なら「単調なマニューバ」と退屈してしまうだろうサーペントの緩慢な弾幕は美里江にも届く事は無かった。

そしてそのまま、VWジェズルに迫る。


地衛理も特異型アラゴギに挑みかかる。

特異型でなくともアラゴギは複雑かつ立体的な攻勢をしかけてくる難敵。

地衛理の眼差しに喜悦が滲む。


スキャッター同様にペルセウスを再起動。
アサルト兵装より放たれる冷たくも熱情を帯びたプラズマ弾がアラゴギのボディに食い込み、孔を穿つ。

地衛理
「私の戦いはここまで。あとは任せます」


美里江もアルクバリスタの主砲をジェズルに叩きつけ、大勢を決する。

美里江
「道は拓きまシタ。ご武運を」



朱音
「なに…これ?」

明日翔
「これは…大型が2体?」

戦闘空域の終着点に待ち受けていたのは、大型ヴァイス2体。

過去のデータベースを検索しても例の無いイレギュラーだ。

大型ヴァイスがワーカーを伴う事はあっても、同じ戦闘領域に大型が並立する事はなかった。

そう、これまでは。

途方もない例外が目の前に立ち塞がる。

朱音
「どうする?マンツーマンで一人一殺?」

明日翔
「いいえ…これは~片方に集中した方が良さそうです~」

朱音
「オーケー、貴女に従うわ」


大型ヴァイスによる連携攻撃。
まるで双子のような統制の取れた波状攻撃に明日翔も朱音も苦戦を強いられる。

巧みな連携に翻弄されながらも、片方の破壊に成功…


…したかに見えたのだが。

明日翔は不吉な違和感を感じたのか、迷いなくフェザリーヴェールを展開して体勢を立て直す。

その間に破壊された方を存命な方が取り込み、更に巨大な個体へと変貌した。

朱音
「こんなの反則でしょ!?」