これは演習である 序 より


コーカサス宙域、深層。


アクトレスキャリアのブリーフィングルームに12名のアクトレスが集合している。



フェアリーハート隊のエースであるティタニタ。

ミア・ヴォワザン
千島美幸
我龍絵美


そしてフェアリー オブ フェアリー、文島明日翔。


明日翔の親衛隊であるラプターウィング隊、通称スナイパーズ!


琴村朱音
君影唯
的場アオイ


コンペティションの結果、シタラを退けスナイパーズ!入りした、波佐見利佳。


そして今回の演習で肝となる新設部隊、ラプタービーク隊。


御茶ノ水美里江
紺堂地衛理
新居目安里


そしてティタニタと兼任になる、春日丘もえ。


ここにフェアリーハート隊の最大戦力が終結している。

輪島
「では今回の演習についてですが…」

利佳
「ごめん隊長、その前に…いいかな?」

利佳からの問いかけ。

利佳
「何でアタシ達なんだ?アタシ…だけじゃない。もえも予備役、実戦経験なんてほとんど無いんだ。こんなところに連れてこられて役に立つのか?」

利佳の不安ももっともだろう。
予備役として登録され、個人専用のスーツにドレスギアを与えられてはいるものの、これまで東京シャード近域での訓練しかしておらず、初陣はまだだ。

だが、もえは以前のOp.ナスタチウムで奇跡的な戦果を挙げた実績もあり、その後の考査でも戦力として申し分無いことは判明している。

利佳についても、スナイパートライアルで現行の隊員であったシタラを遥かに超えるスコアを叩き出している。

私としては何ら不安は感じていない。
その旨を伝える。

利佳
「高く買ってくれるのは嬉しいし、隊長には何かと助けてもらってるから、その恩は返したいけど」

アオイ
「不安なのはわかるわ、私もそうだったから」

利佳の言葉をアオイが柔らかく包み、諭す。

神南サポートに登録したてのアオイもまた、急な抜擢からナスタチウム戦役を戦い抜いた経験を持つだけに、利佳の気持ちも分かるのだろう。

利佳もそれで完全に納得出来たわけでは無さそうだったが、取り敢えずは引き下がった。

輪島
「さて、では今回の演習について説明を始めます。今回は幾つかのルールに則っての実習です」

私が投影された宙域図を前に演習の内容を伝えていく。


①3名1組で出撃すること

②編成はフェアリーハート隊、スナイパーズ!、ラプタービーク隊(以下マエストロ隊)より各1名ずつ選出すること

③編成は隊員達が協議の上で決めること


今回は新設されたマエストロ隊との連携確認の為の演習なので、各隊からの混成部隊で臨んでもらわなければならない。

輪島
「そして…四つ目のルール」

④薫子が率いるフェアリーハート隊が中層を攻略するまでに、この深層の攻略を完了すること。

ミア
「それまでに終わらなかったら、どうなるのでしょうか?」

輪島
「その時は罰ゲームとなります」

美幸
「罰ゲーム…ですか?」

平たい話、薫子達との競争であること、そして負けた場合は、薫子から再教育を受けることになる旨を伝えると、ブリーフィングルームに戦慄が広がる。

輪島
「この件は薫子さんにも了承を得ており、非常に張り切っていました(^-^)」

朱音
「アンタバカでしょ!?バッカじゃないの!?」

朱音がイの一番に悲鳴をあげる。

フェアリーハート隊及びその関係部隊は入隊時に薫子よりトレーニングを施される。

薫子が「フェアリーハートの鬼神」と呼ばれるのは、その戦い振りからだけでなく、教官としての容赦の無さも含まれており、隊員からの畏怖を一身に集めている。

美里江
「薫子さんがフェアリーハート隊を率いて中層まで攻略する時間予測は…約12時間38分デス」

「ちょっと!隊長が指揮してる時よりメッチャ速いじゃん!これ間に合うの!?」


私はテレビ映え等も配慮して、演出しているのだが…確かにそれは唯の預り知るところではないのだろう。

美里江
「深層の戦力は不明なので予測出来マセン」

安里
「?…絵美さん、大丈夫?」
もえ
「わわ…!絵美さん立ったまま気絶してますー!」

地衛理
「山野教官のトレーニング………いいわ…教官なら私を追い込んでくれるッ…!」

朱音
「紺堂さん!わざと手、抜いたらはっ倒すからね!」


喧々諤々となるブリーフィングルームで一人落ち着きを保っているのは

明日翔
「皆さん落ち着いてください~まだ慌てるような時間じゃないです~」

明日翔が私の隣に立ち、宙域図を改めて示す。

明日翔
「確かに深層はまだ何がいるか分かりませんが~、敵の布陣はかなり密集しています~」

その声で隊員達は騒ぎを収め、宙域図に注目する。

明日翔
「隊長も今回は連携の練習だとおっしゃいました~。それはきっとチームの中だけでなく、チーム同士のことも言ってると思います~」

宙域図にはまだ空白が多いが、長い経験から明日翔にはおおよその敵布陣が予測出来ているのだろう。

レーザーポインタで明日翔が予測する交戦空域を指し示していく。

その説明に耳を傾ける隊員達からは、明日翔ならきっと何とかしてくれる、と言う信頼すら感じ取れる。


明日翔
「まずは戦端を開きましょう~」

観測班から寄せらた敵布陣の解析結果を元に、それぞれの隊から1名ずつ選出されたのは


フェアリーハート隊 絵美
スナイパーズ! アオイ
マエストロ隊 地衛理

そろそろ薫子の方も浅層の攻略に取り掛かり始める頃合いだ。

輪島
「これは演習である。健闘を祈る」