前回→…金蓮花の花束を12
まさかのイレギュラーにより、想定していなかった事態に陥る。
新人のもえを守りながら、明日翔とアオイの二人で敵を追い返さなければならない。
アオイ
「私から行くわ」
明日翔がもえを背に庇い、アオイが更にその前に立つ。
リコサアラゴギは糸による行動阻害だけでなく、子機を配置して連携攻撃を仕掛けてくる。
その立体的で複雑な攻撃軌道は対処が難しい。
アオイの戦闘機動を見守っていると、通信が入った。
声の主はもえだ。
もえ
「隊長さん!助けてくれてありがとうございました。もえにも手伝わせてください!ご恩返ししたいんです!」
この場において戦力の手は多いに越したことはないが…。
もえがこの戦いに着いてこれるのか、そこが懸念される。
だがあのインバスとの戦いを見るに只者ではないのも確かだ。
即座に答えが出せず、逡巡する。
もえ
「隊長さん!もえもフェアリーなんですよね!?まだ戦えないかもですけど、守ることなら…!」
引き抜きの際にフェアリーハート隊の理念は伝えていたが、もえの中にもフェアリーの心構えが既に出来上がっているようだった。
輪島
「ではお願いします。攻撃の事は考えなくて良いので、お二人のフォローに回って下さい」
もえ
「わっかりましたー!もえ、頑張ります!」
明日翔とアオイが目まぐるしく入れ替わり立ち替わりする乱戦の最中、もえが前線に飛び出す。
そしてリペアユニットを搭載するボトムスを起動すると、勢いよく飛び回る。
もえ
「こっちこっちー!」
ヴァイスに人語は通じてないだろうが、新たな獲物に気付いたリコサアラゴギがもえに向けて、光学兵器を蜘蛛糸のように投げ掛ける。
もえはその光の網を潜り抜け、二人が体勢を整えるまで飛び続ける。
アオイ
「有難う、後は任せて」
アオイの放つ一閃がリコサアラゴギの命脈を撃ち抜く。
もえ
「やったー!」
喜色満面で跳ねるように飛ぶもえ。
…インバスを単身下し、リコサアラゴギのあの攻撃にも萎縮することなく、回避機動を取っていた。
この事実をどう判断するべきか。
ビギナーズラックで片付けるにはあまりにも出来すぎている。
フェアリーの片鱗を見出だしてスカウトしたが…もえは「本物」なのか。
…見てみたい。
輪島
「皆様、ステータスは如何ですか?」
こちらのコンソールでも三人のバイタル、ギアの状態は把握しているが、あえて問う。
明日翔
「は~い、問題ありません~」
アオイ
「コンディションはグリーン。異常無し、よ」
もえ
「えっと……もえも大丈夫です!」
輪島
「ではそのまま進軍して下さい。残るは…ジェズルのみです」
私は隊長失格だ。
本来ならここで一度帰艦させなければならない。
そして本来予定していた正規のメンバーでの再出撃を指示するべきだ。
我欲を優先したことで、前途有る少女の途を断ってしまうかもしれない。
もしこの生まれたての妖精の翅を手折るような事になるなら、私もその時は…相応の対価を支払わねばなるまい。