「お前にこの鍵を渡そう」
今の今まで眠っていた老人は目を覚ますなり花音に盗賊の鍵を手渡した。
花音
「あ、ありがとう?」
唐突なことに面食らって、戸惑いながら鍵を受け取ってしまう。
ここは塔の最上階。
何でもこの老人、先程まで花音に鍵を渡す夢を見ていたらしい。
それを予知夢だと言っていたが、どうにも納得いかない。
いくら弱いとは言え、イロウスが闊歩する塔で眠りこけていて何故無事なのか。
確かに塔の下にも宿を経営する男がいたが、その神経を疑ってしまう。
ひょっとしたらイリスやアルルの配下かもしれない。それならば得心がいく。
だとしたら、この鍵は罠?
うらら
「かのかの先輩?どうしたの?」
考え込む花音を覗き込んでうららが問いかける。
うらら
「ほんと、何だかゲームみたいだよね」
花音の迷いもどこ吹く風、あっけらかんと笑い飛ばす。
ゲーム、か。
花音はあまりテレビゲームはやらないが、確かにそんな感じなのかもしれない。
花音
「そっか、ゲームか」
詩穂
「花音ちゃん?」
花音
「分かってきたような気がする」
この世界に「親切な」街があり、助けとなる人がいること、敵がやたらに弱いこと…。
単に花音たちを倒したいなら、助けになる街も人も要らない。
無粋な物量で延々と攻め続ければ何時かは勝てる。
だがアルルはそれをしなかった。
花音
「アルルは時間を稼ぎたいんだ」
その稼いだ時間で何をしたいのかまでは分からないが。
心美
「確かに言われてみればそうかも…じゃあ急いだ方が良いんですね」
この鍵で新たな道が開けるはず。
倒すことではなく、時間稼ぎが目的と言うならアルルの「予定」より早くヤツを追い詰めることが出来れば勝機に繋がる。
花音たちは足早に塔を去り、転移装置を目指すが…。
派手好きなうららは大技を使い過ぎ…。
花音
「…アンタ!さっきの話、聞いてた!?」
詩穂
「花音ちゃん、落ち着いて…」
結局転移装置へ向かう途中の村で一泊することになった。
だがただ泊まるだけと言うのは惜しい。
この世界を進む為に有用なものがあれば、手に入れておきたい。
やはりこの村の人たちも親切に応じて、色々教えてくれる。
何でも今、アリアハンは鎖国中で転移装置は封印されているらしい。
その封印の壁を壊す為に、この村で作られている魔法の玉が使えると言う。
うらら
「ほら!ここに寄って良かったでしょ?うららの計算通りなんだから!」
花音
「ただの偶然でしょ!…まぁ怪我の功名と言えなくも無いんだろうけど」
花音たちは無償で魔法の玉を譲り受けると、翌朝早くに村を発った。
転移装置の先がどこなのか分からないが、間違いなくまた一歩、アルルに近付けるはずだ。
4話に続く
と言うわけで、昼の更新に続いて3話です。
花音ちゃん一行に急ぐ理由も出来たので、旅もペースアップするかもしれませんが、トラブルメーカーうららちゃんがいる以上、そう上手く事が運ぶでしょうか?
「最大の敵は味方」となってしまうのか、乞うご期待ですね。
それではまた。