人里離れた原っぱでげらげら笑っている盗賊を木陰からこっそりとBFGで文字通り木端微塵に吹き飛ばす。


…やっぱりこの杖、強すぎじゃないかしら?いくら何でもやり過ぎ、よね?


撃たれた人は本当に肉と骨の破片になる。

どうもこの杖、少し冷気の魔法が込められていて撃たれた対象を瞬間的に凍結させることで破砕し易くしているみたいなんだけど…。


盗賊達の成れの果てから宝石の詰まった袋を拾い上げて一路サイリサイアムへ。

これを役人に渡せば今受けてるお仕事は全部片付く。


後は龍姫との旅を満喫(?)するだけだ。

そう思い役所に出向いたんだけど…。
「おい、賄賂っていうのはもっとこっそりと渡すもんだぜ?」
役所の守衛が用件を告げたわたしに耳打ちする。
「はい?賄賂?税金を納めに来ただけなんだけど?」
そう答えるわたしに守衛は「わかってねぇなぁ」と言う顔で一軒の酒場を教えてくれる。
そこで議員に宝石を渡せと言う。

村長は税金って言ってたんだけど…そう言う用途で集めたお金だったの?


でも言われてみれば確かに。税金なら態々宝石にする必要はないはずだ。相場による価格変動が起こるかもしれないし、金貨で払った方が確実よね。


はぁ…賄賂と分かっていたら引き受けなかったんだけどなぁ…。

わたしはしぶしぶ指定された酒場に顔をだし、店主に議員が居るか聞いてみる。
「いや、今日はまだ来てないな…でもそろそろ来る頃じゃないかな?」
なら少し待つか。面倒臭いけど一応お仕事だし。
(しかしほんに律儀な娘じゃな。わらわじゃったらネコババするぞ?)
「貴女ねぇ…そう言う事やってるとロクな事ないわよ?」
議員を待つ間に龍姫と会話を交わす。
傍から見たらわけの分からない独り言にしか聞こえないだろうけど。

折角の酒場だ。わたしもお酒を啜りながらのんびりと待っていると…何者かが話しかけてきた。


この人が話に聞いた議員の人かしら?と思ったんだけど、どうも違うらしい。


「一体議員に…それもこんなところで何用ですかな?」

「んー…ちょっと預かり物がありまして」


賄賂渡しに来たとも言えず言葉を濁すが、話しかけてきた男はそれで察してしまったらしい。

「この街は…いや街だけでは無く今や世界全体が腐敗しつつある!」

急に熱く語り始める。


どうも正義感は相当強いらしく、賄賂やらが横行する今の世の中を嘆いているようだった。
「その預かり物…もっと有効に活用するべきだとは思わないかね?」
一体何が言いたいのか?まさかこの男に渡せとでも言い出すつもり?

わたしが怪訝な眼差しを向けると男はある場所を指定する。
「そこに学校創設が予定されているのだが、資金繰りが上手くいっていないようでね。その”預かり物”を寄付してもらえないだろうか?」
まぁ汚職に使うよりはマシな使い方なんだろうけど…他人様のお金を勝手に横流ししろ、とでも?

どうしたものかしらねぇ?
正直かなり迷う。この宝石はわたしのお金ではないから渡したところで懐が痛むようなことは無い。
でも前金まで貰ったお仕事でもあるのよねぇ。
賄賂とは言え…おいそれと渡すのは契約違反行為だ。
それに今はややこしい事に…龍姫がわたしの行動を値踏みするように見ているはずだ。
わたしが迂闊な事をして龍姫から信頼を勝ち取れなかったら刀の解放どころの話では無い。
あぁ…もう!なんでこんな面倒なことになるのよ!

結局わたしはこの宝石の詰まった袋を学校に寄付することにした。
取り敢えずの格好つけだけど。
「正しい判断をしてくれたようで嬉しいよ」
このリオシラスを名乗る男は満足そうに頷く。
そして世界を良くするために、世直しに力を貸してほしいと持ちかけてきた。
何だか話が随分と大きくなってきたわね…。

「かなり危険な、それも長い旅になるだろう。無理強いはできないが、もしその用意と覚悟が出来たら私を訪ねて欲しい」
そう言うとリオシラスは酒場を出て行った。
(ふふ、そなたも気苦労が絶えぬな)
貴女もその気苦労の原因なんだけどね…。
わたしも宝石袋を寄付するべく酒場を出た。