一応無罪放免となったわたし達は今日もブラッドサンプルを求めてアビスを彷徨う。
今日訪れたのは学園の近くにある神社がアビス化した場所だ。
何でもこの神社、何やらかなり強力な物の怪を封印しているらしいとのこと。
そんな場所がアビス化したのだから、かなり探索には注意が必要になりそうだ。
こう言う場所がアビス化するとその土地や建物にまつわる伝承なんかが特徴として現れてしまうものらしい。
つまり物の怪が封印された神社なら…その物の怪が異形として顕現している可能性がある。
まぁそれを恐れていたらキリが無いのでアビス化した境内に踏み入る。
「ブラッドサンプルの反応、あります」
規子さんが解析結果を伝えてくれる。
ブラッドサンプルがあると言うのなら行くしかない。
わたし達は参道の鳥居を潜る。
……鳥居を潜った瞬間、何だかすごく嫌な感じがした。
背筋が冷たくなって全身に鳥肌が立つような…何だか良く分からないけど…まるで全身を舐め回されているように視線と…ねっとりとしたマジカの波動が纏わりつく。
わたしは足早にそこから立ち去ろうと歩く速度を上げようとしたんだけど…。
「あ!あそこに何かあるよ!」
穂波がデータチップを見付けて、それを取りに行く。
その時だった。
「穂波!逃げて!」
データチップを拾って満面の笑みを向ける穂波の背後に…大きな狐の妖怪が突然現れたのだ!
「え?…」
穂波にとっては完全な不意打ちだった。
背後から高濃度のマジカを叩きつけられてわたし達の足元まで吹き飛ばされる。
「けほ…」
穂波は小さく咳き込み、血を吐き出す…まずい、かなりの重傷だ。
いくら不意打ちとは言えあの頑丈さが売りの穂波がたったの一打でここまでやられるなんて…。
あんまり動かしちゃまずい状態だけど、この場に留まるわけにもいかない。
わたしは夢中で穂波を抱きかかえると一目散に逃げ出す。
追いかけてきたらどうする?
あの力の差からみてとても逃げ切れるとも思えない。かと言って応戦しても勝ちの目も見えない。
だがわたし達があの鳥居から離れると狐の妖怪は興味を失ったのか、追いかけてこなかった。
…助かった…のよね?
春花がヒールコードで穂波の怪我を治し、一応の態勢は整える。
しかしどうしたものかしらね?
あんなのがうろうろしてるんじゃ探索どころじゃない。
思案にくれているとわたし達の状況をモニターしていた海斗から連絡が入る。
海斗が言うにはさっきの狐が例のこの神社に封印された妖怪らしい。
「そう言った伝承が具現化した異形の場合、その弱点等も伝承に則っているケースが多いです」
つまりこの神社に伝わる伝承を読み解いて対応しろってことか。
取り敢えずあまり鳥居には近付かない方が良さそうね。
今のところあのねっとりとしたマジカは感じられない。
…あの鳥居の辺りが縄張りとかそんな感じの場所なのかしらね?
もしそうなら取り敢えずあそこに近付かないようにしていれば探索は出来そうか。
だがわたしの予想は少し外れていたようで。
境内をさらに奥に進み、また別の鳥居を潜った時…あのマジカを感じる。
でもこちらをじっと伺っている気配は感じるけど…襲ってくる様子は無い。
辺りに警戒しながらゆっくりと歩を進め…鳥居から離れる。
…今度は襲ってこなかったわね。
ほっと胸を撫で下ろす。
何とか神社の本殿まで辿り着き…伝承に関する何かが無いか漁ってみる。
いくつかそれっぽい情報が見付かり、どうも殺生石と言う物があの狐を封印するのに関係してるっぽいらしいことが分かった。
ただその殺生石をどうすれば良いのかが良く分からない。
集めれば良いのか、それとも壊せばいいのか…。
これ以上は調べても分かりそうになかったので、実際にその殺生石とやらを見てみることにした。
どんなものか実際見てみれば分かるかもしれないし。
それにしてもあの狐…どうもこの境内にある鳥居のある場所に出没するものらしい。
鳥居に近付く度にあの嫌なマジカを感じる。
でも何で襲ってこないのかしら?鳥居から足早に立ち去るとそこであの狐の気配は消えてしまう。
まぁ来ないのなら好都合。
わたし達は殺生石を探して境内を歩き回る…と、何だか小さな社があって、そこに大きな丸い石が祭られている。
何かしら?と見に行くとわたし達の行く手を阻むように小さな狐の妖怪が飛び出してくる。
ここでも狐、か。と言うことはあの大狐と何か関係があるもの、と見て良さそうね。
小狐の妖怪を退けて改めて社を覗き込むと…ぱきん、と丸石が割れてしまった。それと共に何かが抜け落ちるような雰囲気が立ち込める。
どうしよう?割れちゃったけど…粉々になった丸石の破片を観察してみるけど、もう何も感じ取れない。
仕方ないわね…こうなってしまったらもうどうしようもない。
わたし達は来た道を引き換えし、また鳥居に近付く。
「ん?」
纏わりついてくるマジカがさっきより…弱い?
気のせいでなければあのねっとりとしたマジカの密度が薄まってる気がする。
…つまりさっきの丸石が殺生石で、何か抜けたような感じがしたのは…大狐の力が削がれたってことか。
わたしはにやりと笑みを浮かべる。
さっきの一つではまだ足りないけど、あと二つ三つ見付けられれば…ちゃんと戦えるくらいまで大狐を弱らせることが出来そうね。
そうと分かれば話は早い。
境内をくまなく探してまん丸い殺生石を割っていく。
さて、と。そろそろ良さそうね。
もう鳥居の近くを歩いても纏わりついてくるマジカに恐れは感じない。
相当弱らせることが出来ているはずだ。
…そこでふとあることに気付く。
どうやったら襲ってくる?
何であの時穂波は襲われた?
こっちから姿を見付けて攻め込めれば良いんだけど、マジカは漂っているだけで居場所が特定できない。
と言うか、このマジカが凝集することであの大狐の姿になっているみたいなんだけど…。
あの時何があって襲われたのか…思い返してみる。
確か…穂波がデータチップを見付けたと言って鳥居の近くで拾い物をしてたのよね…。
とは言っても鳥居の近くに毎回データチップが落ちている訳も無く…。
こうして待ち構えていても一向に襲い掛かってくる様子も無い。
つまり…鳥居の近くを荒らしてみればいいのかしら?
何時もなら穂波をそそのかしてやらせるんだけど…流石に今回は可哀想よね。あんな目にあったばかりだし。
仕方ない。わたしがやるか。
わたしは鳥居の近くをふらふらと歩いてみる。
すると…マジカが集中する気配!
わたしは即座にそこから飛び退き、弓を構える。
かくして大狐はその姿を現すが…やはり殺生石を割った甲斐あってあの時の迫力は無い。
こうなってしまえばそこら辺の狐と大差なく、あっさりとわたしの弓に射抜かれてその存在が霧散する。
そして後に残るはブラッドサンプルが一つ。
「もう反応はありませんね」
司令部に確認してもらいわたし達は神社を後にした。
これで十個目、か。もう少しでサンプル集めも終わりそうね。
今日訪れたのは学園の近くにある神社がアビス化した場所だ。
何でもこの神社、何やらかなり強力な物の怪を封印しているらしいとのこと。
そんな場所がアビス化したのだから、かなり探索には注意が必要になりそうだ。
こう言う場所がアビス化するとその土地や建物にまつわる伝承なんかが特徴として現れてしまうものらしい。
つまり物の怪が封印された神社なら…その物の怪が異形として顕現している可能性がある。
まぁそれを恐れていたらキリが無いのでアビス化した境内に踏み入る。
「ブラッドサンプルの反応、あります」
規子さんが解析結果を伝えてくれる。
ブラッドサンプルがあると言うのなら行くしかない。
わたし達は参道の鳥居を潜る。
……鳥居を潜った瞬間、何だかすごく嫌な感じがした。
背筋が冷たくなって全身に鳥肌が立つような…何だか良く分からないけど…まるで全身を舐め回されているように視線と…ねっとりとしたマジカの波動が纏わりつく。
わたしは足早にそこから立ち去ろうと歩く速度を上げようとしたんだけど…。
「あ!あそこに何かあるよ!」
穂波がデータチップを見付けて、それを取りに行く。
その時だった。
「穂波!逃げて!」
データチップを拾って満面の笑みを向ける穂波の背後に…大きな狐の妖怪が突然現れたのだ!

「え?…」
穂波にとっては完全な不意打ちだった。
背後から高濃度のマジカを叩きつけられてわたし達の足元まで吹き飛ばされる。
「けほ…」
穂波は小さく咳き込み、血を吐き出す…まずい、かなりの重傷だ。
いくら不意打ちとは言えあの頑丈さが売りの穂波がたったの一打でここまでやられるなんて…。
あんまり動かしちゃまずい状態だけど、この場に留まるわけにもいかない。
わたしは夢中で穂波を抱きかかえると一目散に逃げ出す。
追いかけてきたらどうする?
あの力の差からみてとても逃げ切れるとも思えない。かと言って応戦しても勝ちの目も見えない。
だがわたし達があの鳥居から離れると狐の妖怪は興味を失ったのか、追いかけてこなかった。
…助かった…のよね?
春花がヒールコードで穂波の怪我を治し、一応の態勢は整える。
しかしどうしたものかしらね?
あんなのがうろうろしてるんじゃ探索どころじゃない。
思案にくれているとわたし達の状況をモニターしていた海斗から連絡が入る。
海斗が言うにはさっきの狐が例のこの神社に封印された妖怪らしい。
「そう言った伝承が具現化した異形の場合、その弱点等も伝承に則っているケースが多いです」
つまりこの神社に伝わる伝承を読み解いて対応しろってことか。
取り敢えずあまり鳥居には近付かない方が良さそうね。
今のところあのねっとりとしたマジカは感じられない。
…あの鳥居の辺りが縄張りとかそんな感じの場所なのかしらね?
もしそうなら取り敢えずあそこに近付かないようにしていれば探索は出来そうか。
だがわたしの予想は少し外れていたようで。
境内をさらに奥に進み、また別の鳥居を潜った時…あのマジカを感じる。
でもこちらをじっと伺っている気配は感じるけど…襲ってくる様子は無い。
辺りに警戒しながらゆっくりと歩を進め…鳥居から離れる。
…今度は襲ってこなかったわね。
ほっと胸を撫で下ろす。
何とか神社の本殿まで辿り着き…伝承に関する何かが無いか漁ってみる。
いくつかそれっぽい情報が見付かり、どうも殺生石と言う物があの狐を封印するのに関係してるっぽいらしいことが分かった。
ただその殺生石をどうすれば良いのかが良く分からない。
集めれば良いのか、それとも壊せばいいのか…。
これ以上は調べても分かりそうになかったので、実際にその殺生石とやらを見てみることにした。
どんなものか実際見てみれば分かるかもしれないし。
それにしてもあの狐…どうもこの境内にある鳥居のある場所に出没するものらしい。
鳥居に近付く度にあの嫌なマジカを感じる。
でも何で襲ってこないのかしら?鳥居から足早に立ち去るとそこであの狐の気配は消えてしまう。
まぁ来ないのなら好都合。
わたし達は殺生石を探して境内を歩き回る…と、何だか小さな社があって、そこに大きな丸い石が祭られている。
何かしら?と見に行くとわたし達の行く手を阻むように小さな狐の妖怪が飛び出してくる。
ここでも狐、か。と言うことはあの大狐と何か関係があるもの、と見て良さそうね。
小狐の妖怪を退けて改めて社を覗き込むと…ぱきん、と丸石が割れてしまった。それと共に何かが抜け落ちるような雰囲気が立ち込める。
どうしよう?割れちゃったけど…粉々になった丸石の破片を観察してみるけど、もう何も感じ取れない。
仕方ないわね…こうなってしまったらもうどうしようもない。
わたし達は来た道を引き換えし、また鳥居に近付く。
「ん?」
纏わりついてくるマジカがさっきより…弱い?
気のせいでなければあのねっとりとしたマジカの密度が薄まってる気がする。
…つまりさっきの丸石が殺生石で、何か抜けたような感じがしたのは…大狐の力が削がれたってことか。
わたしはにやりと笑みを浮かべる。
さっきの一つではまだ足りないけど、あと二つ三つ見付けられれば…ちゃんと戦えるくらいまで大狐を弱らせることが出来そうね。
そうと分かれば話は早い。
境内をくまなく探してまん丸い殺生石を割っていく。
さて、と。そろそろ良さそうね。
もう鳥居の近くを歩いても纏わりついてくるマジカに恐れは感じない。
相当弱らせることが出来ているはずだ。
…そこでふとあることに気付く。
どうやったら襲ってくる?
何であの時穂波は襲われた?
こっちから姿を見付けて攻め込めれば良いんだけど、マジカは漂っているだけで居場所が特定できない。
と言うか、このマジカが凝集することであの大狐の姿になっているみたいなんだけど…。
あの時何があって襲われたのか…思い返してみる。
確か…穂波がデータチップを見付けたと言って鳥居の近くで拾い物をしてたのよね…。
とは言っても鳥居の近くに毎回データチップが落ちている訳も無く…。
こうして待ち構えていても一向に襲い掛かってくる様子も無い。
つまり…鳥居の近くを荒らしてみればいいのかしら?
何時もなら穂波をそそのかしてやらせるんだけど…流石に今回は可哀想よね。あんな目にあったばかりだし。
仕方ない。わたしがやるか。
わたしは鳥居の近くをふらふらと歩いてみる。
すると…マジカが集中する気配!
わたしは即座にそこから飛び退き、弓を構える。
かくして大狐はその姿を現すが…やはり殺生石を割った甲斐あってあの時の迫力は無い。
こうなってしまえばそこら辺の狐と大差なく、あっさりとわたしの弓に射抜かれてその存在が霧散する。
そして後に残るはブラッドサンプルが一つ。
「もう反応はありませんね」
司令部に確認してもらいわたし達は神社を後にした。
これで十個目、か。もう少しでサンプル集めも終わりそうね。