漸く水中の探索を始めたところで不意に携帯端末から呼び出し音が鳴る。
「誰かしら?」
エクスの通信とは違うみたいだけど…取り敢えず何かの連絡だとしたら放置するわけにもいかないので、電話に出る。
「あ、繋がった」
掛けておいて繋がったことに驚くんじゃないわよ…。
電話の主は以前青山の霊園アビスで出会った村 正八、通称ハチだった。
「ども、お疲れ様っす」
「どうしたの?電話してくるなんて余程のことなのかしら?」
「余程、って程の事じゃないんですけどね…皆さんもアビス探索の時って自販機使います?」
一体何だと言うのだろうか?
確かにどう言うわけかアビスには所々自販機が置かれていて功績値を使って買い物ができるけど…。
「まぁたまには、ね。戦闘が続くと喉乾くし」
「ですよねぇ。一服の清涼剤って感じっすよね」
「で、一体どうしたの?自販機に何かあるの?」
「えぇ、ちょっとばかり見過ごせないものが…あるんすよ。飲むカレーってご存知っすか?」
「は?飲む…カレー?何それ?」
カレールーを薄めてドリンク風にしたものしか想像できない。
「ふふふ、食いつきましたね?」
いや単にヘンな単語が出てきたから反応しただけで、別に食いついたわけじゃ無いんだけど…。
「実は前から噂は聞いてたんっすけどね…まだ現物を見たことが無いんすよ。で、もし探索の途中で売ってる自販機を見かけたら教えて欲しいんすよ」
「まぁ良いけど…見かけたら連絡するわ」
どうも用件はそれだけらしく、ハチは「じゃ、宜しく頼みます」とだけ言うと電話を切った。
そんなものが本当にあるのかも分からないけど、XPDでの経験が長いハチですら見たことが無いって言うんだからそうそう見付かる物でもないんだろう。
わたしはタカをくくると探索を再開した。
刑務所らしくほとんどの部屋は鍵がかかっていて開かない。
開かないとなるとどうしようもないので、とにかく歩いて回れる範囲を見て回るしかない。
通路の奥を見たり、階段を上り下りしてあちこち見て回ると…スイッチがあった。
どうもこのスイッチは災害時等の緊急時に牢を一斉に解放するためのものらしい。
つまりこれを押せばあちこちの鍵が一斉に開く、ってわけか。
ならば押さない手は無い。
スイッチを押すと同時に非常ベルがけたたましく鳴り響く。
そして試しに近場の牢屋を見てみると…ちゃんと鍵が開いていた。
成程ね…つまり各階でこのスイッチを見付けて牢屋を開けて行動範囲を広げていくしかないってわけか。
結構手間がかかりそうね。
わたし達は上に下にと歩き回り水中に出たり入ったりを繰り返して少しずつ牢屋を解放していく。
そんな探索をどのくらい続けただろうか…。
くぅ…と穂波のお腹が可愛く鳴る。
「はぅ…お腹すいた」
今正に育ち盛り食べ盛りな上に戦闘での運動量も一番多い穂波がへたり込む。
うーん、こんなことなら例のカレーケアとか幾つか持って歩くべきだったか。
参ったわね。今は食べられるようなものは持ち合わせが無いのよね。
…と思ったその時だった。
何故か牢屋の中に自販機が一つ。
大体売ってるのは飲み物だけど、それでも少しは空腹も紛れるだろう。
「ほら穂波、自販機あるよ。何か飲もうか?」
「…うん」
わたし達はその自販機の前に立ち、驚愕した。
メニューの中に燦然と輝く「飲むカレー」の文字。
…本当にあったんだ、こんなの。
「どうする穂波?飲むカレーだって」
「うん!それにする」
そしてカップベンダー方式の自販機から出てきたのは…かなり濃いとろっとしたペースト状のカレールーだった。
これを…「飲む」の?何と言うか飲みにくそう。スプーンでもあった方が良いんじゃないかしら?
だが空腹の穂波はそんな粘度の高いルーをモノともせずに啜る。
…これはちょっとどうなのかしら?女としてはとても人に見せられる状況じゃないわね。
春花もにこにこ笑顔で苦笑いしながら穂波の様子を見守っている。
あ、そうだ。ハチにも連絡しておかないといけないわね。
わたしはハチの端末に電話する。
「お疲れ様っす」
「見付けたわよ…飲むカレー」
「っ…!!!」
電話の向こうで声を失う程衝撃を受けるハチ。
「どこっすか!?」
わたしは不忍プリズンの現在位置をハチに伝える。
「有難うございます!必ず行きます!!…でお味の方は如何でした?」
わたしは飲んでないんだけど、穂波の飲みっぷり(?)を見てマズイ物では無いだろうと推測する。
「激ウマ」
「っ…!!!!!」
電話の向こうで卒倒した気配がする。
ハチが端末を取り落したのか、電話は切れてしまう。
わたしは端末を仕舞うと穂波を見る。
どうも飲み終わったみたいね。
「どう?もう大丈夫?」
「うん!美味しかったよ!」
「そう、それは良かったわね」
穂波も元気になったし、探索を続けるとしますか。
「誰かしら?」
エクスの通信とは違うみたいだけど…取り敢えず何かの連絡だとしたら放置するわけにもいかないので、電話に出る。
「あ、繋がった」
掛けておいて繋がったことに驚くんじゃないわよ…。
電話の主は以前青山の霊園アビスで出会った村 正八、通称ハチだった。
「ども、お疲れ様っす」
「どうしたの?電話してくるなんて余程のことなのかしら?」
「余程、って程の事じゃないんですけどね…皆さんもアビス探索の時って自販機使います?」
一体何だと言うのだろうか?
確かにどう言うわけかアビスには所々自販機が置かれていて功績値を使って買い物ができるけど…。
「まぁたまには、ね。戦闘が続くと喉乾くし」
「ですよねぇ。一服の清涼剤って感じっすよね」
「で、一体どうしたの?自販機に何かあるの?」
「えぇ、ちょっとばかり見過ごせないものが…あるんすよ。飲むカレーってご存知っすか?」
「は?飲む…カレー?何それ?」
カレールーを薄めてドリンク風にしたものしか想像できない。
「ふふふ、食いつきましたね?」

いや単にヘンな単語が出てきたから反応しただけで、別に食いついたわけじゃ無いんだけど…。
「実は前から噂は聞いてたんっすけどね…まだ現物を見たことが無いんすよ。で、もし探索の途中で売ってる自販機を見かけたら教えて欲しいんすよ」
「まぁ良いけど…見かけたら連絡するわ」
どうも用件はそれだけらしく、ハチは「じゃ、宜しく頼みます」とだけ言うと電話を切った。
そんなものが本当にあるのかも分からないけど、XPDでの経験が長いハチですら見たことが無いって言うんだからそうそう見付かる物でもないんだろう。
わたしはタカをくくると探索を再開した。
刑務所らしくほとんどの部屋は鍵がかかっていて開かない。
開かないとなるとどうしようもないので、とにかく歩いて回れる範囲を見て回るしかない。
通路の奥を見たり、階段を上り下りしてあちこち見て回ると…スイッチがあった。
どうもこのスイッチは災害時等の緊急時に牢を一斉に解放するためのものらしい。
つまりこれを押せばあちこちの鍵が一斉に開く、ってわけか。
ならば押さない手は無い。
スイッチを押すと同時に非常ベルがけたたましく鳴り響く。
そして試しに近場の牢屋を見てみると…ちゃんと鍵が開いていた。
成程ね…つまり各階でこのスイッチを見付けて牢屋を開けて行動範囲を広げていくしかないってわけか。
結構手間がかかりそうね。
わたし達は上に下にと歩き回り水中に出たり入ったりを繰り返して少しずつ牢屋を解放していく。
そんな探索をどのくらい続けただろうか…。
くぅ…と穂波のお腹が可愛く鳴る。
「はぅ…お腹すいた」
今正に育ち盛り食べ盛りな上に戦闘での運動量も一番多い穂波がへたり込む。
うーん、こんなことなら例のカレーケアとか幾つか持って歩くべきだったか。
参ったわね。今は食べられるようなものは持ち合わせが無いのよね。
…と思ったその時だった。
何故か牢屋の中に自販機が一つ。
大体売ってるのは飲み物だけど、それでも少しは空腹も紛れるだろう。
「ほら穂波、自販機あるよ。何か飲もうか?」
「…うん」
わたし達はその自販機の前に立ち、驚愕した。
メニューの中に燦然と輝く「飲むカレー」の文字。
…本当にあったんだ、こんなの。
「どうする穂波?飲むカレーだって」
「うん!それにする」
そしてカップベンダー方式の自販機から出てきたのは…かなり濃いとろっとしたペースト状のカレールーだった。
これを…「飲む」の?何と言うか飲みにくそう。スプーンでもあった方が良いんじゃないかしら?
だが空腹の穂波はそんな粘度の高いルーをモノともせずに啜る。
…これはちょっとどうなのかしら?女としてはとても人に見せられる状況じゃないわね。
春花もにこにこ笑顔で苦笑いしながら穂波の様子を見守っている。
あ、そうだ。ハチにも連絡しておかないといけないわね。
わたしはハチの端末に電話する。
「お疲れ様っす」
「見付けたわよ…飲むカレー」
「っ…!!!」
電話の向こうで声を失う程衝撃を受けるハチ。
「どこっすか!?」
わたしは不忍プリズンの現在位置をハチに伝える。
「有難うございます!必ず行きます!!…でお味の方は如何でした?」
わたしは飲んでないんだけど、穂波の飲みっぷり(?)を見てマズイ物では無いだろうと推測する。
「激ウマ」
「っ…!!!!!」
電話の向こうで卒倒した気配がする。
ハチが端末を取り落したのか、電話は切れてしまう。
わたしは端末を仕舞うと穂波を見る。
どうも飲み終わったみたいね。
「どう?もう大丈夫?」
「うん!美味しかったよ!」
「そう、それは良かったわね」
穂波も元気になったし、探索を続けるとしますか。