アイオンチャペルでの一件ではとんでもない物が見つかったと言う。
わたし達はその説明を受けるべく司令部に召集される。

あの参加者が異形化した原因はやはりあの爆発にあったらしい。
何か特殊な物質…それもコードが具現化したものが発見された。
つまりあの異形化にはコードライズ技術が悪用されていたことになる。

そして解析の結果、その特殊な物質には黒騎士のデータ要素、分かりやすく言えば遺伝子情報のようなものが含まれていたと言う。
黒騎士の遺伝子要素…あの現場で目撃された天羽。
黒騎士と天羽に何らかの繋がりがあるのはもう疑いようがないわね。
それにしても急老症と言い、今回の異形化と言い、黒騎士の目的が見えてこない。
とは言え放置することもできないわけで。

「そこで皆さんに集めてもらいたいものがあるんです」
そう言うと端末にデータコードが送られる。
「それは所謂ブラッドサンプル、とでも言いましょうか。あの爆発で使われた物質に含まれていた黒騎士の因子です」
急老症を発症させる「デスヘイル」や異形化物質に対抗するためにその因子がまとまった数欲しいと言う。
今後はその探索が主な任務ってことか。

今回の一件でわたし達のレベルキャップも更新して、よりブラッドコードの力を引き出せるようになり、さらに今まで突入許可の下りていなかったアビスにも行ける様に申請されていた。
ブリーフィングとして新たに突入許可の出たアビスについて説明を受けていたんだけど…とあるアビスの説明になった瞬間、穂波の顔から血の気が引く。
「遊霊病棟」
最近オープンしたばかりのお化け屋敷型のアトラクションなんだけど、オープン間も無い内にアビス化してしまい、閉鎖されてしまった施設だ。
よりによってお化け屋敷とは、またヘンな所がアビス化したものね。
ただのお化け屋敷だって絶対に入れない穂波にとっては鬼門以外の何物でもない。
うーん、ブラッドサンプルがどこにあるか分からない以上一度は入らないといけないんだろうけど…ここは出来るだけ後回しにするか。
出来れば他のアビスで必要なサンプルが集まれば良いんだけど…多分そう都合良く事が運ぶことは無いんだろうなぁ。

まぁ取り敢えず、新しく入れるアビスとやらを見てみますか。
と言うわけで何となく千代田坑道に足を向ける。
帰り道の道すがらだと学園のすぐ近くにある葵神宮もあったんだけど、わたしは地味に寺社仏閣に近付かないようにしている。
何せ本業が呪術師だからね。神仏とはできるだけ関わり合いになりたくない。
行くとしても夜中に丑の刻参りに行くのが精々だ。

それはともかく、地下鉄の駅近くにある坑道に入る。
一見、何て事の無い坑道だけど…アビス化しているだけあって異形がうろうろしている。
しかしこんなところアビス化してどうしようって言うのかしらね?
この坑道、かなり昔に閉鎖されてもう誰も立ち入ったりしないどころか、その存在すらもう忘れ去られたような場所のはずなのに。

そう思いつつ坑道を歩いているとXPDから連絡が入る。
何でもどこかの酔狂な人がこのアビスに忍び込んだと言うのだ。
…一体何を考えてるのかしら?
とにかくその人を救助しないといけない流れになってしまった。
まったくはた迷惑な人も居たものね。自主的に入ったのなら何があっても自己責任でお願いしたい。
わたし達は不法侵入者の反応がある所まで急ぐ。

すると…一人の女性が狼男みたいな連中に担ぎ上げられて奥の方に連れていかれる所に出くわした。
まだ向こうはわたし達に気付いてない。
なら不意を打つのが礼儀と言うもの。
わたしはこっそりと矢を射かけると驚いた狼男が担いでいた女性を放り出してこっちに向かってくる。
民間人保護 
しかし何で狼男って言うのは古今東西を問わずに頑丈にできてるのかしらね?
今撃った矢だって後頭部に深々と刺さってるんだけど…一向に倒れる様子は無い。

結局狼男達はわたし達の前に倒れ伏すことになったわけだけど…助けた人がまた風変わりな人で。
どうも探偵業を営んでるそうなんだけど、この坑道に何かあると踏んで忍び込んだは良いけど異形に捕まって…ってことらしい。
春花が手早くXPDに連絡して救助班を回してもらい、その女性にはアビスから退去してもらったんだけど…。
司令部の方から念の為坑道の奥の方を確認して欲しいと言ってきた。

今の狼男達は明らかに女性をどこかに連れて行こうとしていた。
その「どこか」に何があるのか調べておく必要があると言うのだけど…。
結局奥の方は行き止まり。と言うか道が無くてこれ以上は進めない。
遥か下には地底湖があるらしいんだけど、流石に飛び降りてみるわけにもいかず探索は打ち切りとなった。

「そう言えばこのアビスにブラッドサンプルの反応はある?」
「いえ…反応ありません」
「そう。じゃぁ出るとしますか」
始めのアビスは空振り、か。
結構数が要るらしいんだけど集まるのかしらね?