アイオンチャペルの深部へと歩を進めるわたし達。
とは言え障害となる物はさっき突破したクイズ以降、特に無いらしく後は奥に進むばかりだった。

そして到着した大ホールには例の婚活パーティ参加者がかなりの数居るようだった。
「貴女も参加者ですね?こちらにどうぞ」
ホールの入り口で案内係の人に見付かってしまい、わたし達もその参加者の輪に加えられる。
…って言うかこんなコードライズした格好を見ても何とも思わないのだろうか?

まぁ良いわ。取り敢えず会場までの道のりは確保できたんだ。後はアイオンの幹部がどれだけ出てくるかチェックしないと…。
それにしてもパーティって何時始まるのかしら?
かなり人数集まってるみたいだし、程無く始まるとは思うんだけど…と思いながら辺りをきょろきょろと見回す。

するとそこには見知った顔が一つ。
天羽ヴェルン!
何でこんなところに!?
黒騎士と何らかの繋がりがあると思われる彼がこんな所にまで出てくるなんて…。
と思っていたら会場の一段高いステージに一人の女が登る。

「本日は婚活パーティにようこそ」
アレが幹部の一人か。
そしてその女は演説を始める。
まぁ内容は聞き流すとして…それにしても天羽だ。
一体こんなところで何を?と思って視線を戻すと既に彼は人ごみに紛れてしまったらしく見失っていた。
こんなところにも天羽! 
まだ多分この会場にいると思うんだけど…と思い視線を巡らすもどうにも見付からない。

そうこうしていると演説も終わりが近付いてきたようで、周囲の参加者が幹部の呼びかけに呼応して教義の唱和が始まる。
「浮気は進化!」
「結婚は宝くじ!」
その時だった!
会場で大きな爆発が起こる!
一体何事?パーティの演出?
それにしてはちょっと派手すぎじゃないかしら?
爆煙で辺りが白く煙る。

そして次の瞬間、目を疑いたくなるような光景が、惨劇が始まった。
参加者達が突然苦しみだして…まるで脱皮するように…人から異形に変貌していく!
何これ!?
次々と周囲の人が人間を止めていく光景はまるでリアリティが無くまるで夢でも見ているかのような気分になる。
怯えた穂波がわたしにしがみ付く。
けどこれは今実際に起こっている現実だ。しがみ付く穂波の体温がそれを教えてくれる。

でも何で…?さっきの爆発が何か関係してる?
ふとステージ上にいる幹部を見ると…何と言うことか、幹部も今正に人間を止めたところだった…。
どう言う事?幹部まで巻き込まれるなんてこのイベントの一環じゃないってことなの?

そして程無く。
コードライズで身を守っていたわたし達を残し…幹部を含めパーティの参加者は残らず異形と化した。
そして異形の群れは変化しないわたし達を取り囲み…異形化した幹部が号令を出す。
「そいつらを殺しなさい!」
明らかに多勢に無勢…でもここまで十重二十重に囲まれては逃げることも出来ない。
会員が異形化!一体何が!? 
わたしは覚悟を決める。

「穂波!守りをお願い。春花はサポートして」
わたしが手短に指示を出す。
多分この二人は戦えない。
今はもう完全に怪人系の異形になっているとは言え、元は人間だったのを目の当たりにしている。
でも二人からしたら目の前の異形は化け物には見えてないだろう。

わたしは弓を構え、矢をデータコードから具現化する。
番えた矢は躊躇いなく異形の眉間に放たれる。
…こうして見ると、あの光景を見てなお躊躇いなく矢を射かけられるわたしも充分化け物、なのかしらね?
後で二人に嫌われちゃうかもしれないわね。
ちょっとシロディールで殺すことに慣れ過ぎてしまったのかもしれない。
向こうじゃ正当防衛の名の下に野盗や山賊を返り討ちにしたり、闇の一党としてあまり言いたくないようなことも散々やったし。

結局会場にひしめいていた異形はわたしが残らず射殺すことになった。
異形化して間もないからなのか、数は居たけど強さは大したことなかったのが幸いした。
累々たる屍の山が出来上がったころになって漸くXPDの突入部隊が到着した。
まったく、遅いわよ…とは言っても異形相手じゃXPDも役には立たない、か。
不破さんが陣頭指揮を執って現場の鑑識を始める。
わたし達のお仕事はここまでね。
手短に状況を伝えるとわたし達は引き上げることにした。