「ちゃんと生き残ってくれたわね」
しずなと共闘して、と言うか大物をしずなが担当してその周りの雑魚をわたし達が散らしただけなんだけど、何とか化け物を退けることが出来た。

「これでこっちの任務は終わったけど、君達の任務は大丈夫?」
わたしはその問いに首肯して答える。
何せ目の前に任務の対象がいるんだから。

そのことをしずなに伝えると表情が強張る。
「あちゃ、そんな大事になっちゃったか」
わたしはしずなと共にエクスの司令部に帰還する。

「馬鹿かお前は」
隊長から叱責されるしずなを傍目にこっちはこっちで任務に関する報告をする。
今回は急な任務だったので、特にわたしはあれこれ説明が不足している、と言うことで改めて施設設備についてや、組織に関する規則について教わる。

そして今後はあちこちに点在するアビス化した領域への出撃許可が与えられた。
このコードライズ能力と言うのはあくまでもデータ的な存在と言うことで、その能力を向上させるにはコードライズ状態で様々な経験を積む必要があるんだそうな。
でも無条件で能力が向上していくわけではなく、ある程度成長に制限が加えられていると言う。
何でそんなことするのか、わたしにはさっぱり理解できないけど、このコードライズ能力と言うのは相当特殊なものらしく、アビスの化け物と同様、コードライズした人には現代兵器は一切通用しないんだとか。
それで隊員が暴走した時の歯止めとなるよう、成長に上限を課して危険人物に強い能力が渡らないようにしているらしい。

そんなわけで今後、わたし達は取り敢えずの目標がその成長上限…レベルキャップの解放となる。
あのヘンな学校は穂波が行きたがらないので、気分を変えて他のところにしようと御門水道なる地下水道に足を踏み入れてみた…んだけど。

「ぎゃぁああぁぁぁぁぁぁ!」
またしても響き渡る穂波の泣き声。
原因はこいつだ。
ぎゃぁぁ!出た!! 
…呪術師をやってるわたしみたいなのからしたら見慣れたものなんだけど…血塗れの幽霊とか、やっぱりまだ小さな女の子が見る物じゃない。
魔法に通じている春花はまだ大丈夫そうだけど。

「もうやだ帰る!」
ガン泣きする穂波を春花に任せて目の前の幽霊を見る。敵意は感じられない。
穂波は近寄りたがらないけど、どうしたものか。

と思っていたところにエクスのサポート部隊であるXPDから連絡が入る。
何でもこう言ったアビスの被害者になってしまった者の後始末もわたし達の任務の一環らしい。
携帯端末を幽霊に近付けろと言うので、試しにやってみると…幽霊が端末の中に封じ込められてしまった。
…何これ、どうなってるの?
かなり複雑な機械なので分解とかしたら後で直せなくなりそうなので、今まで手を付けてなかったけど…どう言う機械なのかしら?
推察するに霊体をデータ化して端末に保管してるんだろうけど…どう言う原理なのかしら?

とにかく今後はこう言った幽霊や、もっと直接的な被害者の亡骸、場合によってはアビスから脱出できなくなったXPD隊員のフォローなんかもやっていかないといけないらしい。
「ほら、穂波。もう幽霊いなくなったから大丈夫」
と励ましてみるが…穂波の視線はわたしの携帯端末に釘付けだ。
穂波からしたら何時端末から幽霊が這い出してくるか気が気じゃないんだろう。

これじゃ探索どころじゃないわね。
わたし達は一旦引き上げることにした。
しかしこんな様子じゃまともに探索なんて出来るのかしら?