東京に住み始めてすぐ、学生時代から
よく食べていたお店に、ふらっと立ち寄った。
扉を開けると、懐かしいおやっさんの顔が見える。
「いらっしゃい~~あらっ。ずいぶん久しぶりだね」
人の移り変わりが激しい東京で、何年も見かけない
お客の顔を覚えてくれている。
この街の記憶の片隅に、自分の気配がまだうっすらと
残っている気がしてちょっと嬉しくなった。
この場所にはもう住んでいないけど
東京の街に自分の小さな小さな何かが、ほんの
わずかに生き残っているような錯覚もしてくる。
東京は冷たいとみんながお決まりのフレーズを
よく口にするけど、やっぱり僕にとって東京は
人も街も魅力あふれる温かい場所だった。
そんなことを考えながら焼肉定食をほおばる。
いつもと変わらない味がした。
