秘密裏に制作していたコラボCD「杜のソラシド」が、先日6/20の同イベントで無事にリリースできた。
はっきり言ってあまり例をみない、とても素晴らしいアルバムに仕上がったと思う。
各曲に関しては参加メンバーそれぞれの発言に譲るとして、僕なりにプロデュースと音作りの面からこのアルバムを解説していきたい。
そもそもどうしてこのCDを作ることを思いついたかというと、それはやはり3月の地震で中止〜延期となったイベント、杜のソラシドvol.11がきっかけだった。
*杜のソラシド・・・堀下さゆりオーガナイズ、GROOVE COUNCIL制作のもと「仙台にグッドミュージックを!」と仙台で開催してきたライヴイベント。毎回ゲストを迎えてこれまでに11回開催。
中止を決めお客様を返した後ライヴでやるはずだったセッションを録画しYouTubeに公開、同じ顔ぶれでの振替公演をやることもその日のうちに意思確認し合っていたのだが、それでもなお何とも言えない悔しさとやるせなさが心の中でくすぶっていた。きっと参加メンバーも同じだったろう。
夜、家に帰りベッドの中で悶々とそのことを考える。
ちょうど今年は堀下さゆり、押谷沙樹、佐山亜紀の3人それぞれから音源を出したいと相談されていたこともあり、何か新たな音源をリベンジ公演で出せたらいいのではと思い当たった。
それをサプライズプレゼントにして、当日来てくれたお客様に3月のお詫びも兼ねられれば最高ではないか。
1曲ずつ新曲を録音もしくは共作曲1曲というのが現実的(時間的に)とは思えたが、3人の個性と世界観と声、そしてリハや別ライヴで垣間見えた相性の良さを考えたとき、単なるコンピではないコンセプトコラボアルバムも可能なんじゃないか?と閃いた。
企画ものユニットでもソロの寄せ集めでもない、何か新しい形が作れるかもしれないとイメージは膨らんでいく。
バンドから個々の集合体へと変わったビートルズのアビーロード、ロジャー・ニコルスがパレードのマレイ・マクレオドと組んだスモール・サークル・オブ・フレンズの1stが頭に浮かぶ。
個々の素晴らしさが存分に詰め込まれ、さらにはトータル感も同居したあのアルバムの感じ。
翌日すぐにコラボ音源を出そうと3人に話して全員一致で、やろう!ということになった。
ただ僕のイメージをうまく言葉で伝られなくて、もしかすると皆んなは一種のコンピと捉えていたのかもしれないが、まぁそこは進めながら音として具現化させていけば見えてくるだろう。
昨年僕とVORZ BARの2人(道地&松田)が立ち上げたvo'groove records、今年はより強力なリリースをしていこうと話していて、この信頼する2人にも方向性を相談しうちのレーベルからのリリースを決める。
さらに昨年から僕らの活動を支援したいとずっと言ってくれていた、音楽仲間であり飲み仲間の後藤氏の協力もあり、プロジェクトは動き出した。
ソロを各2曲、書き下ろし共作曲を1曲。共作はもちろんソロ曲でも他の2人がコーラスで参加するという構想を皆に伝えた。
アルバムタイトルは何がいいかと悩んでいたが、そもそも延期となったイベントが発端だし出演者もこのメンバーだ。これはストレートに「杜のソラシド」にしてはどうだろうか?と堀下さゆりに相談する。
3人で作るアルバムに自分のイベントタイトルを付けていいですかねぇ?という彼女らしい意見もあったが、これを作る経緯とvo'grooveからリリースする(要するに仙台発信)という観点からも、これが一番しっくりくるということに落ち着く。
ならばこれまでライヴのみで歌ってきたテーマ曲も収録したいと堀下より提案を受け、それも入れた全8曲のアルバムという大枠が定まった。
ちなみにこのタイトル曲は、新しい青葉城恋唄(仙台を代表する1曲)のような存在になり得る名曲だと評判である。
あとは音源を地道にアレンジし録音しミックスしていく。果たして6/20に間に合うのか?進行スケジュールを3人に伝え、僕は調子が悪く総入れ替えしたばかりのレコーディング用DAWシステムに、定番以外のマニアックなプラグインエフェクトも追加購入していった。
素材は間違いなくいいのはわかっているので、それを最大限に光らせるサウンドプロダクションにとって必要だったからである。
録音前から音のイメージははっきりしていた。ふんだんに入るコーラスワークを美しく響かせること。楽器は1曲2つまでに絞り音数を整理して歌(声とメロ)の存在感をきっちり出すこと。それぞれの個性と調和を最高のバランスで配すること。そして目の前で鳴っているような優しいアコースティックサウンドに仕上げること。
レコーディングは個別ソロ曲からそれぞれスタートさせた。
堀下はピアノと吉池千秋さんのアップライトベース、佐山はアコギと押谷のピアノ、押谷はピアノ弾き語りという編成。そのすべてにコーラスをオーバーダビングしてゆく。
タイトなスケジュールの中、皆んな本当に底力を見せてくれた。名曲だらけで歌、演奏、アレンジどれをとっても素晴らしい。
仙台と大阪でリーモート録音しながら、少しずつ音源が形になってゆく。
もっと時間をかければ、もしかすると完成度は上がったかもしれない。しかし作る経緯も含めた熱量と鮮度をそのまま真空パックしたかった。
ジャケットやCD盤面など印刷関係の準備も同時進行していく。
アルバムタイトルから、仙台っぽくて、でもローカル色が出過ぎない洗練さもある、いい具合のアートワークは何かと考えた。
以前ご一緒したことのある仙台のイラストレーター佐々木洋子さんの水彩画だ!と、すぐに電話すると快く引き受けてくれた。
3人のライヴ映像を見てもらいつつイメージを伝えラフを何枚か書いてもらい、そこから絞り込んだものに細かいニュアンスを加えてもらう。
結果、これ以上ない素敵なイラストが仕上がってきた。僕も演者もテンションがあがり制作に拍車がかかる。
パズルのピースをはめ込んでゆくように徐々にソロ曲が揃い始め、テーマ曲も形が見えてきて残すはコラボ共作曲。
曲順も決めなければ。サウンドと共にこのアルバムのトータル性を左右する大事な作業なのでかなり悩むかと思っていたのだが、案外すんなりと落ち着いた。
この曲をここに持ってきたかというセオリー通りではない並びの部分もあるけれど、僕としてはこれしかない!という曲順だ。
コラボ共作曲に取り掛かる頃、印刷プレスの関係で締め切りは残り10日くらいとなっていた。
アルバム1曲めに入れようと考えていたので、ポップなサビから始まってAメロ〜Bメロ、間奏と後奏はコーラスワークで勝負というイメージ。
長引くコロナ禍で気分も沈みがちだけれど、音楽の灯を消さずに未来を見据えて乗り越えていこうというメッセージを、説教くさくならずに軽やかに込められないだろうかと堀下に話した。
このアルバムの色を決めると言っても過言ではない素敵な歌詞とメロディーのサビを彼女は作ってくれた。
そこに続いてAメロ佐山〜Bメロ押谷とリレー方式で作詞作曲作業が続く。
楽器はあえてピアノ1本にしようと決めた。
押谷が納得いくまで何テイクもピアノを録音し毎日のように送ってきてきれて、メールじゃニュアンスが伝わらないからと1日に何度も電話で話しながら詰めていった。(彼女のパートは地元大阪で録音している)
どのテイクも素晴らしかったのだが、僕も彼女ももっといいのが出来るのでは?という粘りというか、いや違うな、執念か(笑)。
コーラスもこんな感じがいいとオーダーして、押谷にしか作れない独特なハーモニーが出来上がった。
歌詞の細かい部分や歌い分け(誰がどこをどう歌うか)は、歌入れのスタジオの中で話し合い試しながら録音していった。
気になる部分はいくつかのパターンを録っておいて、そこに大阪からの音源を被せた時点で僕が判断し抜き差しする。
ポップセンス光るテーマサビ、センシティブなピアノ、絶妙なコーラスワーク、ラストは佐山が声のみで締めくくる。本当に素晴らしいパフォーマンスとチームワークであった。
録音素材が出揃った時点で、これは名盤になると確信した。
ここから僕の怒涛のミックス作業が始まる。
専門的な話は置いといて、音のイメージは先述の4つ(コーラス、声の存在感、個性と調和、質感)をポイントに、音数がシンプルなだけに音の空間処理を(気づかれない程度に)全曲ちょっとずつ別な色付けを施した。
コーラスはビートルズ、ビーチ・ボーイズ、10cc、ロジャー・ニコルス、クイーン、カーペンターズ、プリファブスプラウトを参考にして曲ごとに微妙な味付けとアレンジ。
堀下ソロの生ピアノとアップライトベースの音色、佐山ソロのアコギの音色とピアノとのバランス、押谷ソロのピアノの質感、全員のボーカルの息遣いも聴きどころ。
曲間にもこだわったので是非CDで通して聴いていただきたい。
とまぁつらつらと書いてきたが、ほんと3人の高い音楽性と今の魅力がぎっしり詰まっていて、ソロとしてもグループとしても聴ける一粒で三度美味しいCDなのである。
柔らかさの中に隠された硬い芯、穏やかながら一直線に進んでゆく希望が感じられる尊いアルバムが完成した。この3人でなければこうはならなかったのは間違いない。
vo'groove自信の1枚、ぜひ多くの人に聴いていただければ嬉しい。
収録曲トレイラーはこちら↓
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2021.6.20 release
『杜のソラシド』CD
堀下さゆり&押谷沙樹&佐山亜紀
¥2,500(tax in) 8曲入り
©︎vo’groove records
*通販のご案内
「杜ソラCD」係
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*店頭販売
VORZ BAR(仙台)
そば食堂やぶ信(仙台)
*今後の参加メンバーの各ライヴ会場でも販売します。