古市コータロー BD tour 2021 -Lowdown Blues- レポ | 髭モダン Talkin'

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仙台在住のMOD音響職人が綴る気ままなブログ。
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およそ10ヶ月ぶりの音楽の旅は、ベテランの部類に入る僕らにとっても、これまで味わったことのないツアーとなった。

コロナ禍というのは昨年同様であるが、時短や休業要請により店が開いてないということで打上げも出来ずライヴ後に夕飯も食べられないという事態。

何とも味気ないけど今は仕方なし。こんな事もあるんだねぇ。

 

なので面白裏話はもちろん、締めのラーメンや楽しく飲んでいる写真が無いままのレポになることをお許しあれ。

とはいえギリギリの状況のなか開催にこぎつけた福岡と神戸も含めて、全公演を(時間変更はあったにせよ)無事に完走できたことは喜ばしい限りだし、各地の皆さんの元気な顔を見ることが出来て本当に嬉しかった。

こんな状況下で快くライヴをやらせてくれた各会場、あたたかい現地スタッフの皆んなにも感謝しかない。

 

ライヴに関しては6公演どれも素晴らしく、セットリストは同じ(数曲だけイレギュラーはあったが)ながら微妙にニュアンスは違うという、いつも以上に本能的というか瞬発力のあるきらめきに満ちていた。

SNSにもアップしているがそもそもコータローのリハは短い。リハというより音の感じを確認するサウンドチェックであり、今回もほとんどが10分くらいだろうか。

池袋では照明の色味やきっかけを調整するため少し長めに音出ししたが、それでも1曲を通して演奏することはない。

事前準備は度重ねたひとりリハで体に叩き込んでいて、当日は確認のみ。あとは出たとこ勝負のチャレンジを楽しんでいる節もある。

適当という意味ではなく、その瞬間のパッションだったり閃きだったり、あとはオーディエンスの反応や会場の雰囲気を感じながら魂でプレイしているのだろう。まさにライヴ。

だからこそ変化に富み、アコギ1本であれだけの一体感を生み出せるのではないかと思っている。

これはとても高度なテクニックであり、長年の蓄積と実力と勝負勘みたいなものに優れていないと不可能だ。

 

ついでに音のことにも触れておくと、僕もそれについていかなければならず、事前のチューニングは念入りにやっているがリハでの音決めは6割程度(リハ10分ではそれが限界。笑)あとはイメージを膨らませ、本番中の彼のプレイや客席の様子を感じながらミキサー卓を操作している。

だから一定のクオリティーは保ちつつ、公演によって音も少し違う感じに響いていたはずだ。かなり痺れる作業で一瞬の気も抜けないが、おかげでかなり鍛えられている。

 

今ツアーの大きな変化は歌詞カード(iPad)の排除だ。

これまでも客席から顔や手元・足元がよく見えるようにと譜面台をiPadに変えたり、足元のモニタースピーカーを通常よりだいぶ両脇に離してセットしたりと2人で見栄えの良さを試行錯誤してきたが、今回は歌詞カードもやめると言ってきた。

もちろん何もないほうが見た目もスッキリしていいが、歌詞は大丈夫?と訊くと「間違うかもしれないけど、せっかくお客さんいるのに歌詞カードに目線がいってるのもねぇ」という。

その意図に賛同し、マイクスタンドも前からではなく姿をなるべく隠さず照明の影も出にくいように横から伸ばすようにした。

さらにはこれまで1~2曲でリズムボックを使っていたが、今回はシンプルに全編ギターと声だけになった。より一層ステージ上が潔く男っぽい雰囲気になり、さらにルーム感あふれた感じになっていたと思う。

こだわる男の面目躍如。違いがわかる男、というCMのフレーズを思い出すではないか(笑)。

 

結果どのライヴでも浮き彫りになったのは、古市コータローという人間の茶目っ気と艶っぽさ。計算しているわけだはないだろうが、それらが黄金比ともいえる抜群のバランスなのがまた憎い。

弾き語りも8年めに突入し安定感が増したという部分もあるだろう。そこに内側から溢れるエネルギーが歌やギターにブレンドされ、肉体化したしなやかさと儚い美しさをまとって放たれていた。

以前より何回も言っているけれど、彼のライヴというのは音楽を通しての人生劇場である。いや、音楽は人生を映し出す鏡であるならば、これぞ究極の音楽と言えなくもない。

 

MCで「おれなんて納税している中学生みたいなもんだよ」と話していたが、細部にまでこだわった上でありのままの自分をさらけ出すそのリアルさこそ、多くの人を惹きつけ笑顔や元気や勇気をもたらす、彼なりのブルースであり美意識なのだと思う。

それは決して枯れた渋さみたいな方向ではなく、大人の色気をまとったキラキラした光の粒のようであった。

 

ツアー初日の仙台。数日前に連絡がきた。

「仙台っていま酒飲めるんだっけ?」

時短要請は出ていたが20時までなら堂々と飲めるよと返事をすると、予定を変更して前乗りすることになった。

本当はアラバキの前日に行こうと予約していたお気に入りの居酒屋へと夕方早めから顔を出す。

突然行ったので店の女将が驚いて「あら、コータローさん!どうしたの?ライヴ明日でしょ?」

「いま東京は外で飲めないし、この前ここ来れなかったから前乗りしちゃったよ!」

時間は短かったけれど楽しく酔った。

 

翌日のライヴMCで「いや〜酒って大事だよねぇ〜」と言っていたが、本当にそう思う。

正確にいえば、酒を飲みながら話したり笑ったりして得るものは大きいという意味である。

ツアー中のメンタルもそうだし、人との出会いやMCネタなど。

僕らなんてツアーの計画やアイディアなどは、ほぼ飲みながらの席で決まっているのだ。

ただ事務的にその町に行き決まったライヴをこなすタイプではないので、なおさらである。そこは誤解なきよう。

 

仙台の会場は僕の行きつけでもあり後輩がやっている、そば食堂やぶ信。コータローとも何度も飲みに行っている場所。

年に幾度かここでライヴはやっているが、広さ的にちょっと狭いなと思い別の会場を探していたのだけれど、コータローから2daysにしてやぶ信でやってみたいなという提案があり、ビビる店主(笑)に頼み込んだ。機材は後輩の柚原が持って来てくれた。

結果的にアットホーム感満載の2daysになり、ここがスタートで大正解。本人もいたく気分がよかったようである。(飲みながら吸いながらやれるからというだけではないよ。笑)

 

今回のツアーはここを皮切りに、福岡ROOMS〜神戸VARIT.〜池袋LIVE INN ROSAと、だんだんと会場が広くなっていく非常に振り幅の大きい会場設定だったが、ここで会場選びについても触れておきたい。

 

単に行き慣れて知った場所という基準は僕らにはなく、お客様はもちろん演者もスタッフも居心地のいい会場がベターだと思っている。

広さだけではなく楽屋問題とか音環境とか清潔感とかドリンクとか料金設定とか、様々な面を考慮しながら悩みまくって決めているのだ。たぶん他の人より厳しい基準で。

 

何より重要視しているのが、会場側も僕らと一緒にライヴを少しでも良くしようと楽しみながら努力してくれているかどうか。店側でありながらツアースタッフのような感覚も持ちやってくれる会場を選んでいることをお伝えしておきたい。僕らも各地でそんな風にハコのスタッフに接しているつもり。

それがあきらかにライヴの余韻にも影響すると思うのだ。

ハコ貸しで事務的な場所が多いなか、今回の4会場はどこも完璧に素晴らしかった!

 

福岡、前乗りは空港で合流。

コータローの舎弟(笑)古賀くんが迎えにきてくれホテルまで。

夕飯まで少し時間があったので、2人でパトロールしつつコンビニでビールを買いホテルで飲酒。緊急事態宣言が出たばかりで店はほとんどやっていなかったので、早めに解散し明日に備える。

 

昼はホテル近くでラーメン&焼き飯セットを食べ、少し早めに会場のROOMSにイン。

福岡と神戸はコロナ感染者が急増していて、イベント自粛要請はなかったものの、延期を余儀なくされそうな気配が直前まであった。

会場側と何度も相談・交渉し時間変更で何とか開催できることになったが、平日だったため時間を早めたことで来れなくなったお客様が多くいて申し訳ありませんでした。

それでも今やらなければ、しばらくはまた福岡には来られないだろうと思い決行した次第。

 

相変わらずの整理整頓されたキレイな空間、アナログ卓の優しい音とセンスいい仲野さんの照明もいつも通りで、コーちゃんもついセトリにない曲をやってしまったようだ。

古賀くんとその仲間たちの心こもったスタッフワークで、僕としても音に集中できて有り難かった。

 

神戸への移動日、まずは博多駅で駅弁を物色。

前日から「明日はやっぱり、かしわめしかねぇ〜」と話していたが、ちょっと時間があったので幾つかの弁当屋を覗く。

美味しそうなレストラン弁当が売っていて、このニューウェーブ感もありかなぁと見ていると「佐藤くん、やっぱり正統派でいこうよ」「やっぱそうだよね!」とオーセンティックな老舗かしわめしを購入。ブレない男だ(笑)

 

夕方前に神戸到着。

最近は元町に泊まっていたのだが(もちろん夜飲みに繰り出すため。笑)今回は店が開いてないということで会場近くにホテルを取っていた。

チェックインのとき、千円プラスすると少し広くてウルトラファインミストシャワー付きの部屋に変えられますよと言われると、コータローの目の色が変わった。

K「マジか!?佐藤くん、部屋そっちにしようよ!」

H「それ使ったことないけど、いいの?」

K「マジいいよ。肌も髪も調子よくなるのよ、これがさぁ。」

じゃそっちの部屋にして下さい、というとフロントの人はちょっと驚いたようだった。きっとマニュアルで誰にでもおすすめしていたのだろうが僕らがそれに食いついたので、変わったおじさんもいるなぁと思ったのかもしれない(笑)。

 

街の様子を調査しにパトロールへ繰り出す。神戸もほとんど飲み屋はやっていなかった。

馴染みの店に挨拶してから、コータローが前から行きたかったうどん屋でかすうどんを食べ(美味だった!)、コンビニで酒をゲットし部屋へと戻る。

 

ライヴ当日、昼。ランチのためロビー集合。

例のシャワーだが確かにその効果はすごかった。髪の毛の調子がすこぶる良い。

「シャワーかなり良いね。髪の毛がサラサラだよ」と僕が言うと「でしょ〜!」と満足げなコーちゃんであった。

前日から決めていたカツ丼を食べに行く。

ブツが運ばれてくる前にテーブルに置いてある沢庵漬けの壺をあけ、このたくあんがシビれるのよぉ〜と鼻の下を伸ばすスター。

一旦ホテルに戻る際にはすでに明日の昼メシのミーティングをする僕たちであった。

 

さて神戸VARIT.公演。ここは、ただいま〜って感じである。

いつも僕らのわがままも受け入れてくれ、ほんと気分良くやらせてもらえるハコだ。

 

この日もサクッとリハが終わり、何気なくステージを見ると犬の縫いぐるみを抱えたコータローがうろちょろしている。

店に置いてあったその縫いぐるみ(ミュートという名前が付いていた)をステージのどこかに置こうと思案している様子。

何気なく寝かせて本番。あまり目立たなかったのが気になったのか途中のMCでは犬の縫いぐるみと戯れる小芝居まで(笑)。

あれにはハコのスタッフも大笑いしてたな。

 

この日は会場のエレキギターを借り2曲ほど。これまた変化のあるいいムードだった。

いつものチャーこ&りんちゃん物販チームもありがとう。

ライヴ後はそのままスーパーで買い物してきてもらった軽い夕飯を食べてお開き。

 

翌日、新神戸駅でお目当のすき焼き弁当を買い一旦東京へ戻る。

僕は神戸から飛行機で仙台へ戻る予定だったのだが、緊急事態宣言の影響で欠航となり、仕方なく新幹線で東京〜仙台へ。さすがに腰が痛くなった。

 

 

いよいよツアーファイナル、コータローのホームタウン池袋での2days。

初日は仕込みがあるため予定より早めに会場入りしたら、間もなくコータローも「いや〜家にいるのも暇だしさぁ」とやってきた。

馴染みとなった会場スタッフと談笑しながらのんびり準備する。

 

この日のリハは照明のために多くを費やした。担当のS山ちゃんが一生懸命やってくれているので、より具体的にイメージが沸くようにコータローが曲の感じを丁寧に実演。こういうシーンは若手も勉強になるし貴重だと思うなぁ。

僕は僕で普段PAをやってるハコの若者に、裏技の種明かしなどする。お節介ではなく、ちゃんと聞いてくるから教えるのである。

お客さんが入ってくる前から、ここには一体感が出来上がっていた。

物販は松本社長&ユキールの黄金コンビだし。

 

開場前にコンビニに行こうかと駐車場を通ると1台のママチャリがあり、普通は車のダッシュボードに置く許可証が吊るしてあり大笑いした。

 

さてライヴだが、ここまで数本の実験と熟成がガッチリ噛み合い、照明と音も含めてファイナルに相応しい完成度の高いものになったと思う。

オーディエンスと呼応する歌とギター、一体感が半端なかった。

終わってしまうのがもったいない2日間であった。

 

ファイナルが終わり、外ではご飯も無理だねとピザを注文することにした。

会場スタッフのみんなもお腹空いているだろうからその分も、とコータローが気を利かせる。こういうとこだよね。

ここでの交流はまた次回にビシッと効いてくることだろう。

 

それにしても本来はBDケーキを出して皆んなで祝ったりするのに、何だか世知辛い世の中になったなぁとは思う。

それでももう少し耐えて、またここに集まろうと思わせてくれるツアーだったのではないだろうか。

多くは語らないが、そんな励ましと未来への希望が詰まった4ヶ所6公演だった。

 

カツ丼屋のたくあん、ラーメンのネギやチューシューの切り方に価値を見出す男は、もしかしたら自分もそんな存在を目指しているのかもしれない。表現はあれだが脇役という意味ではなく。

ギターや歌がいくら上手くてもねぇ〜とよく2人で話すのだが、ここにしかないものや代わりの利かないものといった、必要不可欠なマニアックな存在というか、味。

 

そろそろバースデーツアーっていうネーミングも恥ずかしい歳になってきたなぁと言うコータローだが、そのやんちゃぶりが健在なうちはまだまだイケるぜ!

 

BGM

仙台①/神戸/東京①_Paul Weller_Fat Pop(AL)

福岡_The Rolling Stones_Best

仙台②/東京②_Emmylou Harris_Elite Hotel(AL)

 

Opening SE

10cc/The Things We Do For Love

 

SET LIST(基本)

錆びた扉

乾いた世界に

あてのない影

愛に疲れて

それだけ

モノクロームガール

いつかきっと

マネー

ホンキートンクタウン

夏が過ぎてゆく

Girl

ジョニーへの伝言

そんなに悲しくなんてないのさ

Song Like You

Baby Moon

Heartbreaker

ハローロンリネス

(En)

Nothing Or Something

 

Ending SE

クールスロカビリークラブ/ひびわれたグラス