
藤巻健史
藤巻健史先生の財政破綻本は読んだことがなかったので一度読んでみようと中古で割と新しめのものを購入した。
まだ第1章しか読んでいないが、なるほど認識が少しズレているなと思うと同時に、世間一般の人がたどり着き易いであろう話ばかりなのである種参考になるなと思った。
現実と明らかに乖離したトンデモないことを言ったかと思えば、「ただこれは正直、少し脅かしすぎです」と自分で自分を窘める。
その後再度現実に近い形で無垢な読者を脅し始める。
要は読者を脅しすかしてドルを買うように勧め、少しでも予言が成就するよう働きかけているということだ。
読者は自ら藤巻氏の予言の成就に貢献することになるという寸法。
財政再建
第一章では「財政再建しなければならない」ということが暗黙のうちに前提条件となっている。
そして、本書における(少なくとも第一章を読む限り)財政再建とは「政府債務をゼロにすること」を意味していると考えられる。
「〇〇年で借金を完済できる」といった説明がたびたび出てくるので「財政再建=政府債務ゼロ=当然目指すべきもの」と考えているのは間違いないだろう。
財政再建が必要だとか、そのためには政府の借金をゼロにしなければならないといった説明はでてこない。
おそらく彼にとってそれは至極当たり前のことであり、わざわざ説明し前提の共有を確認するまでもないことなのだろう。
政府債務ゼロ
では、本当に政府債務ゼロにすると何が起きるのだろうか?(第一章はこれ以外特筆すべきことはなく、借金をゼロにするのは大変だということが書いてありました)
このあたりどこかの時点を区切って日銀当座預金残高、国債発行残高、民間預金残高等を正確に出してシミュレーションしてみたい。
近いうちにやってみることとする。
ここではザックリとして考え方だけ書きなぐっておく。
基本的に税収で国債を償還すると民間の預金、つまり我々のお金が消滅する。
国債は誰が持っているか?
税収で国債を償還しても国債保有者に金が戻るだけだろ!
といった指摘はよく見かけますが、この指摘は「一般の消費者が国債を保有している」という勘違いを元にしています。
こちらは令和4年度3月末の国債保有者割合。
家計の国債保有割合は1.2%にすぎない。
半分近くを日銀が保有し、あとは民間の金融がほとんど持っており、海外は7.6%となっている。
だから、日銀の保有する国債と民間の金融が持っている国債が償還されるとどうなるかを考えれば良いということになる。
お金とは
償還の話をする前に「お金」について認識を合わせておきたい。
まず、普通「お金」と聞いたら財布の中の現金紙幣や硬貨を思い浮かべることだろう。
もしかしたら銀行の普通預金を思い浮かべるかもしれない。
それらを合計した金額をマネーストック(以降MSと略称する)と一般的には呼ぶ。(正確にはMSはM1,M2...と区分があるがそこまでは触れない)
そして、このMSこそが「お金」として扱うことにする。
日銀保有国債の税収による償還
それでは早速日銀保有分国債を税収で償還してみたい。
まず日銀保有国債を100兆円とする。
これを償還するために100兆円の納税が行われたとする。
すると我々民間の預金は当然100兆円消える。
つまりMSが100兆円減少する。
そして政府預金が100兆円増加する。
(正確にはここで民間銀行の日銀当座預金が税府預金に振り返られ、民間の預金は消滅している)
次に政府がこの100兆円を使って日銀保有国債100兆円を償還する。
すると、日銀保有国債は償還され消えることになる。
同時に日銀は政府預金から100兆円の残高を減らし、100兆円を受け取ることになる。
重要なのはここだ。
日銀が受け取った100兆円はどうなるのか?
正解は「消える」。
なぜなら日銀にとって貨幣は負債だからである。
語弊覚悟でわかりやすく言うと日銀にある政府預金は日銀からみる「マイナス100兆円」なのだ。
そこに100兆円の支払いを受けたのだからトータルプラマイゼロになる、というわけだ。
日銀保有国債の税収による償還のまとめ
日銀保有国債の税収による償還をまとめるとこうだ。
MS(我々のお金) マイナス100兆円
日銀の資産であり政府の負債である国債 マイナス100兆円
政府の負債、借金である国債は消しこむことができたが、日銀と我々の資産であるMSも同額消滅してしまったことがわかるだろう。
民間銀行保有国債の税収による償還
次に民間銀行が保有する国債を税収によって償還してみたい。
まず民間銀行保有国債を100兆円とする。
これを償還するために100兆円の納税が行われたとする。
すると我々民間の預金は当然100兆円消える。
つまりMSが100兆円減少する。
そして政府預金が100兆円増加する。
(正確にはここで民間銀行の日銀当座預金が税府預金に振り返られ、民間の預金は消滅している)
ここまでは日銀と同じだが、少し詳しく納税時のお金の動きを説明する。
民間銀行は日銀当座預金という資産を持っている。
そして、我々一般の消費者は銀行に口座を持ち預金を持っている。
この預金は銀行にとっては負債である。
預金が100万円ある状態を便宜的に説明するとこうなる。
民間銀行A 日銀当座預金100万円
民間銀行A 一般消費者の預金100万円
ここから納税処理が行われるとこうなる。
民間銀行A 日銀当座預金0万円
民間銀行A 一般消費者の預金0万円
日銀 政府預金100万円
大切なことは預金は消滅し、移動するのは日銀当座預金だけということだ。
それでは話を戻して政府がこの100兆円を使って民間銀行保有国債を償還する。
すると民間銀行保有国債100兆円は当然消える。
また、民間銀行保有日銀当座預金が100兆円増える。
一般消費者の預金は変化なし。
民間銀行保有国債の税収による償還のまとめ
民間銀行保有国債の税収による償還をまとめるとこうだ。
S(我々のお金) マイナス100兆円
民間銀行の資産であり政府の負債である国債 マイナス100兆円
民間銀行の資産である日銀当座預金 プラス100兆円
政府の負債、借金である国債は消しこむことができたが、我々の資産であるMSも同額消滅してしまったことがわかるだろう。
まとめ
長々と説明してきたが、国債を発行し政府支出するとMSは増え、納税して国債を償還するとMSは減るということが重要なポイントだ。
そして藤巻氏の財政再建では国債を全て償還しようとするので、かなりの金額がMSから消えてしまい経済が一気に冷え込むことが予想される。
おそらく藤巻氏は償還されると持ち主にお金が移動するだけだ、と思っているのだろう。
これは明らかに間違っている。