矢野顕子 /『Hitotsudake The Very Best』 | ongaku:キョウノイチマイby『飄逸庵』

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あまりに疲れていると、家の中で迷子になる事がある。

 

そんなに広い家ではない。

 

真夜中にトイレに行く。

意識が朦朧として、寝室まで辿り着かず、リビングのソファーに寝てしまう。

酷い時はこんなこともある。

障子に頭を突っ込む。

やはり、意識が朦朧として、寝室まで辿り着かず、リビングのソファーに寝てしまう。

酷い時は玄関から出て、近くの電信柱におしっこをする。

 

不安だ。

 

このままいってもっと酷くなったらと思ったら怖い。

 

『暗闇の路上でヨサコイを躍る』

 

今は何かと「ヨサコイ踊りだ」。

私の世代は踊ったことは無いだろうが、娘が小学校時代、運動会で踊っていた。

 

ん?

 

ソーラン節じゃなかったか。

急に不安になる。

 

あれは恐らく『ソーラン節』だ。

 

夜中に寝ぼけて暗い路上でヨサコイ踊りと思って、ソーラン節を躍る。

なにかダメな気がする。

寝ぼけて夜中に外に出ること自体アレだが、ソーラン節をヨサコイと思っているのはダメだろう。

 

そもそも、どちらも踊ったことが無いのだ。

 

『ヨサコイ』も『ソーラン節』もあったものでは無い。じゃあ、いったい何を踊っているのだ。

疲れすぎると人は訳の分からないことをする。

 

そんな事を不安に感じつつ書斎で音楽を聴いている。

 

矢野顕子が1996年にリリースしたベストアルバムだ。

 

タイトルが彼女の代表する「ひとつだけ」を冠している。

 

元々好きな曲だったが、忌野清志郎とのデュエットバージョンを聴いて、今は別れて暮らしている娘に対してこの歌詞のような気持ちを持っている。

そのおかげで、わたしの中では思いの詰まった外せない曲になった。

 

本盤は、矢野顕子がデビュー20周年を記念して製作されたものだ。

よって、「ひとつだけ」も、オリジナル版ではなく、セルフカバーしたものだ。

 

こうやって、ベスト盤で聴くと「この人は、オンリーワンのアーティストだが、微細な世の中の流れを掴んで、その時の音楽を巧みに取り入れている」と感じた。

 

だからこそ、独特な歌唱法をしていても聴いてしまうのだ。

 

元々はジャズ・ミュージシャンになりたかった彼女は、高円寺にあったレストランでピアノ演奏を始める。帰宅するのが夜中になることも多く父の知り合いだった安部譲二の元に居候をして音楽活動を始める。安部譲二が経営していた『青山ロブロイ』でもプレイするようになったことで、筒美京平ら業界人の間で話題になり、プロへの道を進みだす。

 

彼女のプレイを聴いていると本当に楽しんで音を紡ぎだしているように感じる。

 

それはタイトルのつけ方にも出ている。

 

『ラーメン食べたい』

 

直球だ。

 

本作で僕の好きな曲は先に述べた『ひとつだけ』、細野晴臣とのデュエットでも有名な『自転車でおいで』(原盤では佐野元春)。彼女らしいジャジーな『Watching You』、The Boomの宮沢和史が作詞作曲を手掛けた『中央線』、奥田民生(というかユニコーン)のカバー『素晴らしい日々』が特筆している。

 

彼女の手にかかれば、他者の曲も自分の曲にしてしまう。

 

 

 

 

 

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