元日本ライト級チャンピオンの嶋田雄大さん と 元日本スーパーフェザー級、元東洋太平洋スーパーフェザー級チャンピオンの本望信人さんが、あのバレロにかつて挑戦しました
あのリック吉村さんの持っていた日本ライト級タイトルに2度挑むも失敗、3度目の挑戦で時の日本ライト級チャンピオン木村登勇さんを破って戴冠して5度防衛して返上…
そこから4年待ち続け、2008年、36歳にしてついにチャンスを得たのは一つ階級下のスーパーフェザー級で、さらに、チャンピオンは怪物バレロ…
バレロに挑戦予定だった外国選手が出場できなくなり、そのピンチヒッターとして急遽舞い込んだ挑戦話…
あのマイク・タイソンの強さに憧れ、富山県から世界チャンピオンになるために、高校卒業後に東京に出てきたという嶋田さん
よりによって、よりによって、チャンピオンはあの全勝全KOの殺戮マシーン
…が、待ちに待って、ついに、ついに掴んだ世界チャンピオンへの挑戦を断る理由はなかったわけだ
…で、結果はみなさまご存知だと思います
エドウィン・バレロは帝拳所属のチャンピオンで、人間離れした怪物級の世界チャンピオンでありました
サウスポーの強打はあまりに危険だったが、しかし、ガードも甘いし隙もあるように感じる
…が、野生動物的、いや、太古の恐竜のような肉食獣の飢餓感と獰猛さに溢れていた
もう戦術とか作戦なんぞ無関係な領域の、圧倒的な攻撃力でなにもかもを蹂躙してしまう強さがあった
僕は、ふいに見直したくなる
そう
やはり、日本を代表する技巧派ボクサーファイター、本望信人さんのバレロ挑戦も忘れられない
ジム移籍問題に苦しむも、日本スーパーフェザー級を8度、東洋太平洋スーパーフェザー級を1度防衛し、2007年、30歳の時にあのバレロへの挑戦権を得る
よりによって、よりによって、あの怪物バレロ…
本望さんにはある弱点があった
それはあまりにも切れやすい両瞼だった
バッティング一つ発生で、かなりの試合で負傷判定になってしまっていた
また、本望さんには一発もなかった
距離を保ち、足捌きと手数を駆使してポイントを稼ぎ続ける…が必勝パターンだった
攻撃特化のラッシャー型バレロはどう考えても相性が悪い、と言うか、悪すぎる
バレロの強打に瞼をかすめられただけで負傷TKOの危機、足が止まって捕まれば袋叩き…
活路はいずこに…⁇
見当たらない
技巧派の本望さんには相応しくない、全体重を載せた、捨身の一撃しかない
あの怪物のチンをカウンターで打ち抜く以外、勝機は見当たらない…
…この一戦は会場で観ました
感動したなぁ
まさに、特攻、玉砕…ではありますが、先の嶋田雄大さんも同じなのですが…
挑んだ相手が破格の怪物だからこそ、燃え盛る男の意地、ボクサーの矜持が美しく、儚く、粉々に砕け散る時、我々の心には神々しいほどの激情が溢れだすのだ
痛い…
痛い…
そして、込み上げてくる
熱いものが、込み上げてくる
どちらのタイトルマッチも忘れられない
…で、バレロはスーパーフェザー級に続いてライト級も制覇、が、あまりに我が強すぎて帝拳は手を焼き手放した、と記憶している
家庭内暴力に飲酒運転…等々、話題になった
全勝全KOのベネズエラの怪物は2010年、自分の妻を刺殺し逮捕され、警察署の独房にて自ら首を吊って自死する
薬物とアルコールで精神崩壊していたとも言われる
日本のボクサーたちの 命懸け と、混乱と混沌の奈落に堕ちた、27勝27KO無敗の、パーフェクトレコードを積み上げた狂気のチャンピオン…
この対比を、どう受け止めればよいのか…⁇
たまに、ごくたまにだけど、それを想う時、なにがなにやらよくわからなくなってしまう
誠実さと夢…
と
狂気と混沌…
よくわからなくなってしまうのだ
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