>内山は吹っ切れたすがすがしい顔をしていた。引退を決めた理由は明確で「前以上に必死に努力できない人間がリングに上がるのは違う、と思った。中途半端な気持ちで試合をすることは絶対にできない」と説明した。潔い決断だった。
強打で高いKO率を誇った。毎試合、見る者に「いつ相手を倒すのか」と期待を抱かせる激しい戦いを演じてきた。内山自身が結果以上に誇ってきたのは、そこへたどり着くまでの道のりだ。以前、「僕が見せたいのは派手さではなく、努力次第ではい上がれるということ」と語っていた。ボクシングの名門、拓大に入学した直後は補欠にも選ばれなかった。荷物持ちをしながら、「屈辱。見返してやりたい」と誓った。全部員が帰省し大学で練習できなかった夏休み中も出身高校で練習を続け、レギュラーの座をつかみとった。
プロでも「地味で地味で本当にきつい」練習を愚直にこなし誰もが認める実績を積み重ねた。37歳。拳や肘に慢性的な痛みを抱え、以前のように練習で追い込めなくなった。現役続行の道はどうしても選べなかった。
「KOじゃないと面白くないと思っていた」と続けた真っ向勝負で、多くのファンから支持された。本場・米国での試合は実現しなかったが、6年以上王座を保持した。記録にも記憶にも残る名ボクサーだった。
…内山選手だけは負けない、負けるはずがない…という安心感がずっとあった
その根拠は内山選手の常に冷静なるその佇まいと破格の強打にあった
ガードを高く掲げ、そのガードの隙間から相手をじっと観察したうえで、鋭すぎるハンマーのようなボディーブローを捻じ込む
文字通り もんどりうって キャンバスに這いつくばってしまった挑戦者も一人ではない
その破格のハードパンチャーぶりを評して 「KOダイナマイト」 の異名ををとった内山選手でありますが、個人的には「ジャパニーズ・ハグラ―」と呼び続けてきました
往年の名チャンピオン、伝説のハードパンチャーはサウスポーでありましたが、その強烈なる倒すボクシングに近しいものを感じていました
ジワジワと相手をなぶってゆき、そして、圧倒して飲み込む
そのストロングスタイルには倒し屋としての美学が凝縮されておりました
が、内山選手の凄みとは、そんな研ぎ澄まされた殺傷本能と決定的なるハードパンチ以上に、その落ち着きと冷静さ、決して驕ることのない、慢心のない性格にあったのだと改めて感じ入ります
その真面目さゆえに、その進退を明言するまでに時間がかかったのだと想像できる
個人的なる内山選手ベストバウトはV10のジョムトーン・チューワッタナ戦かなぁ?
前評判の良かったジョムトーンを全く寄せ付けませんでしたねぇ
V6戦のブライアン・バスケス戦も忘れ難い
あれは正規×暫定の王座統一戦でありましたねぇ
そして、王座戴冠となったファン・カルロス・サルガド戦ですね
サルガドといえば、あのホルヘ・リナレスを僅か1R1分足らずでTKOに葬ってチャンピオンになったメキシカンでしたね
これは生観戦しておりますが、会場は東京ビックサイトでしたが、まぁ、最終ラウンドのKOシーンに会場は大熱狂でありましたぁ
あれも忘れ難いなぁ
さて、で、内山選手の引退を語るうえで、過去のどの記事を再収録しような悩んでいたのですが…
ううむ
で、どのタイミングで内山選手のことを一番考えたかな?というと、やっぱり、王座陥落のジェスレル・コラレス戦①なんですよねぇ
あの衝撃の2RKO負けを会場で目の当たりにした時、なんというか、物凄く申し訳ない気持ちになったことを思い出します
ただの一観客であるだけの僕が、自分の「慢心」が招いてしまったような奇妙な気持ちに苛まれたわけです
内山高志が負けるはずがない…という、勝手なる、一方的なる慢心…
あの夜は本当に胸が痛かったなぁ…
あの、大田区総合体育館から蒲田駅まで歩いてゆくまでの間の記憶がありません…
あれほどの「呆然」はかつて味わったことがございません
でも、そこまでの気持ちにさせてくれた内山選手には、改めまして、本当に感謝でいっぱいであります
日本人として、あれだけ「誇らしい気持ち」にさせてもらったことにも感謝の気持ちが溢れてきます
俺たちには内山高志がいる…というあの熱くこみ上げてくる気持ちは本当に忘れ難い
…ということで、いつかの「悶々」(笑)、ジェスレル・コラレス①のまさかの敗戦の、その夜の記事を再収録したいと思います
内山選手のことを一番考えた夜の記事…
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2016年4月27日の過去記事…
あなたは内山高志に再起して欲しいか?否か?
防衛失敗の内山が一夜明けコメント 「しばらく休みます」 デイリースポーツ
>衝撃の2回KO負けで、WBA世界スーパーフェザー級王座の12度目の防衛に失敗した前スーパー王者の内山高志(36)=ワタナベ=が一夜明けた28日、テレビ東京を通じて「今日のところは勘弁してください。一夜明けて悔しさがこみ上げています。後輩の2人(河野、田口)にはおめでとうございます、と伝えてください」と、コメントと写真を発表した。
渡辺均会長は昨夜遅く「今まで頑張ってくれてありがとう。長めに休んでほしい」とメールを送り、内山からは「ありがとうございます。しばらく休みます」と返信があったという。
今後について渡辺会長は「100パーセント内山次第。納得のいくまで休めばいい。再起するなら手を尽くすし、引退して第2の人生を送るのならそれでいい」と、時間を区切らずに内山の決心を待つ。
…まず初めに、内山選手に申し上げたい
我々ボクシングファンに大きな夢と希望と、そして、我らがチャンピオンとして、これ以上ない誇らしさを与えてくれて本当にありがとうございました、と申し上げたい…と感じております
しかしながら、まさかのV12防衛失敗の陥落は会場におりましたが、あの魔の2R 2:59の衝撃的瞬間から心は一瞬たりとも晴れることはない
まだ、打ちひしがれている
とても冷静になんてなれない
が、内山陥落という出来事から派生する、その圧倒的なる虚無感は紛うことなき「リアル」なのであります
払っても払っても拭えない悶々…
冒頭に内山選手への感謝の気持ちを記させていただいたものの、しかし、まだ受け入れられないのが正直なところ
かつて、長谷川選手が日本武道館でモンティエルの一撃を喰った際、ボクサーの本能が働き、ダウンを拒んだばかりに滅多打ちにあった夜も確かに延々と考えました
なぜ、長谷川選手は倒れてしまわなかったのか?
一度倒れてしまって間をおいてから再開したら、逆転の可能性はあったのではないか?
…が、勝負の世界は非情であります
「たら・れば」ほど虚しいものはない
でも、考えてしまう
考えないわけにはいかないのがファン心理であります
内山、ダウンの2回を振り返る「最初にもらったパンチは何か分からない」 スポーツ報知
> ―1回の相手の印象は。
「やりづらさがあった。スピードもあるな、と。やったことがない感覚の相手。左も見えづらかった」
―2回にダウンした。
「1回にポイントを取られて、次から行こうという感覚だった。最初もらったパンチは何か分からない」
―その後は。
「もらった後は冷静にやろうとした。だいぶ落ち着いていたので、いいのをやり返そうと思って前に出たところをやられた。完全なKO負け」
―クリンチの指示があったが。
「もちろん聞こえていたけど、やり返したい気持ちがあった」
―ダメージはあったのか。
「意識はしっかりしているつもりだったが、その後の反応ができていないので(ダメージは)残っていたのでは。もう少しガードをしっかりしていれば良かった。倒されたのは実力」
…試合を振り返る
まず、1Rの立ち上がり、パナマからやってきた24歳のサウスポー、暫定チャンピオン・コラレスは前日計量で苦しんだとの報道があったものの、しかし、その動きたるや躍動感に溢れ、その褐色の肉体は全身がバネのような印象を受けたわけですが、その時点で、おそらくは本人も、陣営も、そして、観客もざわざわと嫌な予感を感じずにはいられなかったのではなかったのか?
個人的には、36歳の内山選手に慢心や油断の類はなかったと思う
新聞報道等には実現しないビックマッチやマンネリズムと化した防衛ロードの果てにモチベーションの低下が敗戦の背景にあるとの見方もありますが、僕はそうは感じてはいない
弱肉強食たるボクシングというスポーツの、残酷性と絶対性がまざまざと露呈しただけに過ぎないと感じた
その瞬間、あるいは、その瞬間を迎えた瞬間に強い者、強かったものこそが、チャンピオン…
ただ、それだけの話である
が、頭では理解できても感情はそうはいかない…
さて、変則的なコラレスの大味なるパンチは空を切るも、そのスピード感に場内はどよめく
危ない、あれが当たったら危ない
スタミナ難が予想されるコラレスだけに、中盤以降に勝負の重心を置くのは定石…だが、出鼻をくじかれた感覚は心理的に内山選手に大きなダメージを及ぼしたと想像できる
先の試合後の談話にそれは垣間見える
--- 「1回にポイントを取られて、次から行こうという感覚だった。最初もらったパンチは何か分からない」
…歴戦の雄である内山選手にこのような「焦燥感」を与えたコラレスの変則強打とスピード感こそは、現実のダメージングブロー以上の破壊力を秘めていたのではないか?
あの躍動感、あのスピード感、そして、あの眩しいほどの若さ…こそが、中年に差し掛かったスーパーチャンピオンの精密機械的精神に「まぎれ」を起こしたのではないか?
インターバルで自陣コーナーに戻った内山選手が丸椅子に腰かけながら、苦笑いをしていたのを僕は覚えているが、その時点で、ある種の不穏を感じ、それを隠そうとしていたものはV11チャンピオンの意地だったのだと思う
しかし、決着の時は、その一分後に訪れた
24歳、怖いもの知らずのサウスポー、暫定チャンピオン・コラレスは内山選手の打ち終わりを狙っていた
そして、それはドンピシャのカウンターとなって36歳の歴戦の雄の顎を打ち抜いたわけでありますが、この一撃で試合が終わってもおかしくないほどの角度とタイミングであった
上り調子の若き暫定チャンピオンの勢いが、加齢と衰退を精神力と節制でカバーし続けて来たスーパーチャンピオンを丸呑みした瞬間であった
結果が全て…が世界タイトルマッチのリングであります
僕は内山選手の「賢さ」と「健全」さに常に全幅の信頼を抱いていた
それだけに、この結果が重く重く堪えるのだ
果たして、あの左カウンターが炸裂しなかったとして、2R 2:59で試合が決着しなかったとして、では、今の内山選手にコラレスを攻略することはできたか?
それでもやはり、内山陥落という結果は変わらなかったのではないか?
内山選手をこよなく愛する僕でありますが、しかし、そのように感じる
だからこそ、余計に悔しい
虚無感に苛まれる
僕は4月27日の夜から今朝まで、延々と悶え続けている
若さと勢い、そして、実力が勝敗を分かっただけに過ぎない
頭ではわかっていても、理解するにはあまりにも苦々しい現実である
36歳のスーパーチャンピオンは抜群の左カウンターを喰らってもなお這い上がり、10カウントを拒否、その後、揺れる膝を引き摺って抗戦するもダウンを追加され、R2終了間際、あと1秒が持ちこたえられずに3度目のダウンを喫し、スリーノックダウンで自動的にタイトルを失った…
さて、内山選手の進退はまだわからないという
まずはゆっくり休養するということですが、果たして、どのような決断を下すのか?
現在36歳の内山選手の軌跡の輝かしさは不滅である…が、まだ、続きがあるならば、果たして、みなさまは見たいか?
あるいは、もう充分とお感じになるのでしょうか?
…正直に申し上げます
僕は見たい
敗者に鞭を打つような発言になるのかもしれない
が、あまりにも悔しい
悔し過ぎる
もはや中年となった内山選手に「進化」や「のびしろ」を期待するのは酷だと思う
しかし、内山選手には「賢さ」と「精神力」のたくましさがある
これは歴代の日本のボクサーの中で群を抜いての最高峰であると僕は感じている
ならば「奇蹟」は起こせるのではないか?
…と、僕の延々たる思考は終着したのだ
そうだ、かつて、輪島功一さんが圧倒的不利を幾度となく覆して王座陥落後に超強敵にリベンジを果たして2度も王座返り咲きを果たしたように、内山選手にもこの屈辱を晴らして欲しいっと激しく感じております
試合観戦直後、僕は2R 2:59以降に、仮に、試合が続いていたとしても、内山選手は王座陥落していたのではないか? と感じたということは先に書きました…
が、このあまりにも悔しい敗戦と屈辱を経験した36歳の「ボクシング賢人」がそれを乗り越えようと再びの節制と試行錯誤、そして、復讐のためにその最後のボクシング道にあらゆるエネルギーを注ぎ込んだ時、「奇蹟」が起こらないはずがない…と、僕の精神は昂揚したのだ
ある
ありえる
いや、絶対にあるっ‼
さて、しかし、この延々たる思考が一段落して現実に返った時、そうか、内山選手の進退はまだ未定なのだ…と我に返ると、やはり、あの喪失感と虚無感に苛まれる
無常なる、負の思考の繰り返しは実に耐え難い
さて、内山選手に「復帰」「再起」を期待するのは酷だ、という意見も多数あるかと思いますが、しかし、「ボクシング賢人」の捲土重来を絶対に見たい、と、わがままを言うのも、ボクシングファンの務めではないのか?
と、開き直り始めている
改めて、内山選手に感謝を述べさせていただきます
どうもありがとうございました
そして、これからもよろしくおねがいいたします
…復活を待つ
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あぁ、我ながら悶えてるなぁ~(汗)
いいじゃない
こういう風に、大好きなボクサーのことを自分の肉親の進路進退のことのように悩んじゃうなんていいじゃない
こういう気持ちにさせてくれるのが世界チャンピオンなんですよねぇ
で、特に、内山選手には「悶え」させてもらいましたぜ
さぁ、ジム開設か、あるいは 猫カフェ開業(⁉) かなんて記事も挙がってますが、いずれにせよ応援させていただきます
内山アニキよ、KOダイナマイトよ、あんたは最高だったぜ‼
本当にお疲れさまでしたっ
そして、本当に、本当にありがとうございましたっ
御愛読感謝
つづく