殴られても、殴られても、殴られても… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

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さて、上の写真でありますが、昨日(2011.1.31)の有明コロシアムで行なわれた興行に登場した二人のボクサーであります…


左の赤いグローブが前日本スーパーフェザー級チャンピオンにして、WBA世界スーパーフェザー級チャンピオンの内山高志選手に挑み、その重い左ジャブを喰い過ぎて瞼を完全に塞がれ、8R終了TKO負けとなった三浦隆司選手…


右の青いグローブが日本5位の福原力也選手と、先の三浦選手が返上した日本スーパーフェザー級王座を決定戦で争い、「2-1」の僅差のスプリットデシジョンで勝利して新チャンピオンとなった岡田誠一選手であります…


そう、この両者は昨年2月のチャンピオンカーニバルで拳を交えた仲であり、奇しくもこの夜、同じリングに上がったのでありますね…


写真の対決時は日本チャンピオンと指名挑戦者の立場であり、「エグ過ぎる」ほどの、空前絶後の消耗戦となり、延々たる限界を超えた「殴り合い」の果てにチャンピオンの三浦選手が判定勝利をモノにしたのですが、この王座を返上し、念願の世界挑戦者となった三浦選手でありますが、「世界の壁」の高さを痛感する形で、8R終了時に、自ら『棄権』を申し出たのだと言う…


---このまま続けたら死んでしまう。


試合後、本人がそのように語り、その声が新聞紙面に上がったのだ… 非常に衝撃的な表現だと感じた…


右目は完全に塞がってしまい、視力を失った状態でこのまま世界チャンピオンと戦ったら殺されてしまう…と、挑戦者は恐怖した、ということではないか…?


ズバリ、英断であった…と思う。


チャンピオンの内山選手は2R早々右手を脱臼(新聞報道によれば)していたそうで、さらに、偶然のバッティングにより右目をカット、出血に悩まされていて、それでも試合を優位に運んでいたものの、挑戦者の左ストレートがまともに当たり、なんと痛恨のダウンを喰う大ピンチを迎えたのだが、それでも、この時、挑戦者は「勝てる気がしなかった…」的なコメントを残している。


そんな、挑戦者の心を想う…


そう、いつかの岡田戦、本当に壮絶の境地を僕は観た覚えがあるのだ…


これだけの「打ち合い」はそうはお目にかかれない… 危ない、危険すぎるほどの「打ち合い」…


それほどの「打ち合い」を潜り抜けてきた三浦選手が「限界」を申し出た…と聞き、なんだか胸が熱くなった…


そして、そんな三浦選手と、かつて真っ向勝負の「打ち合い」をしたのが、新しい日本チャンピオンとなった岡田選手で、しかし、こちらもこちらで、やはり、王座決定戦のリングで壮絶に打たれまくった…


鋭いワンツーに不意に繰り出される左右アッパーカットが武器の、フットワークのある福原選手の固いパンチをこれでもかこれでもかと浴び続けながらも、しかし、前に出続けた岡田選手…


正直、素人目から観ても打たせすぎ、打たれすぎであった…


そういえば、最強後楽園決勝戦の川村戦もそうだったし、で、タイトル初挑戦となった三浦戦もそう…


で、今回もそうじゃないか…!?


あぁっ、命を削りながらも、それを承知でもなお、それでも「チャンピオン」になるために前進をやめない岡田選手の「戦い方」であるが、本当に胸が痛くなるほどの悲壮感と切実が滲み出ていた…


なんたる不器用!! そして、なんたる美しき純朴…!!!


そんな「ゾンビ」と化した岡田選手と対峙した福原選手は恐怖したのではなかったか!?


そうだ、手応え抜群のKOパンチ…になってもおかしくないほどの有効打の雨あられをお見舞いしてもなお、しかし、「ゾンビ」はその前進をやめない…


淡々と、黙々と、ただひたすらに前進し続けてくる… そして、しつこくしつこくボディー打ちを打ち続けるのだ…


これは何かの冗談だろっ!? だって、倒れなくちゃおかしいだろ!? 


そんな被弾の限界を越えて、しかし、それでもなお攻め続けてきた岡田選手の前に、元日本スーパーバンタム級チャンピオンの腰は折れ、軽快だったフットワークはまるでセメントで固められたかのように重くなってしまったのだ…


打たれても、打たれても、打たれても…


そんな岡田選手が、世界チャンピオンの厚い壁の前に跳ね返された三浦選手の、「後継日本チャンピオン」となったことに、何か、因縁めいたものを僕は感じたのだ…


三浦選手も岡田選手も、こういっては何だが、やや打たせ過ぎてしまう傾向にあり、この両者はそういう意味で非常に似ているのだ…


が、そんな三浦選手が、さすがに今回は続けたら「死んでしまう」と感じた…と言う記事を読み、あぁ、諦めることの勇気もまた賞賛されるべきである…と感じた。


三浦選手は自らのディフェンス技術に失望して自信喪失…なんて記事も読みましたが、その一方で、日本スーパーフェザー級「新」チャンピオンとなった岡田選手、やはり、今回も打たれ過ぎたけれども、さすがに「日本一」となったことの喜びに興奮した様子で、「次は世界を目指す」と勝利者インタビューで声を弾ませた…


僕はこの、「打たれても、打たれても、打たれても」なボクサーたちが大好きだ…


しかし、そんな因縁のある、過去に対戦経験もある二人の対照的な姿の彼方に、「同じ苦悩」と「同じ歯軋り」と、「同じ美しさ」を感じたのだ…


かつて、限界の果てで「殴りあった」、この二人のボクサー辿り着いた、一旦の「結果」を想いながら、思わず、普段はしない一人酒をせずにはいられなくなった…


苦い…


実にこの酒は苦い…


そんな切なさを酒の肴にして、安い酒を飲む…


とても苦くて、喉の奥が、焼けるように熱くなる。


痛い、胸が痛い…


御愛読感謝


つづく