キーン コーン カーン コーン…
起立 礼 着席!!
先生「・・・みんな、机の上にあるもの、ぜーんぶしまいなさい」
生徒たち「…?(ざわざわ)」
先生「…1時間目は算数の時間でしたが、今日はみんなで一緒に考えなくてはならないことがあります」
生徒A「…わーい、算数嫌いだからいいや」
先生「喝!!(生徒Aの頭に拳骨を振り下ろす)」
生徒A「うわーん!!」
先生「泣きなさい、それで気が晴れるなら泣けばいいのよ!!」
生徒たち「…(不穏な気配に震え始める)」
先生「今朝のボクシングニュース、みんな知ってるわね?…返事は!?」
生徒たち「は、はい!!」
先生「…はい、じゃぁhigege91クン、説明してください!!」
higege91「…ぐ、ぼ、ぼくが?」
先生「そうよ、はやく!!」
higege91「…はい、もじゃもじゃ頭のかつて冠鷲(カンムリワシ)と言われた髭のおじさんが、亀田興穀選手の世界戦を痛烈批判しちゃったんです…」
先生「…もっと詳しく!! ちゃんと答えないと国語1にしちゃうわよ!!!」
higege91「…えーと、問題となっているのは、26日付の毎日新聞朝刊で、紙面上で髭のおじさんは「日本選手と戦わず、本来のフライ級はWBA、WBCとも王者が強いこともあり、1階級下げて空位の王座決定戦に出る。金をかければ、そんなに簡単に世界挑戦できるのか。ボクシングの歴史から見たら、この現状は何だ」…とまくし立てちゃいまして、それを聞いた協栄ジムの会長や父親の史朗氏が激昂してまして、今後は髭のおじさんのジムとはマッチメークしないって、絶縁宣言しちゃったんです…」
先生「…まぁ、そんなところね、簡単に言っちゃうと。みんなはどう思っているのかしら?…じゃぁ、みんな目をつぶりなさい、そして、先生の質問に答えるのよ!!」
生徒たち「…は、はーい」
生徒たち、目をつぶる。
先生「…はい、亀田興穀は強い!! …って思う子は手を上げなさい!!! 目、つぶったままよ!!」
約6割くらいの生徒たちが恐る恐る手を上げる…
先生の心の声…なぁるほど、もうちょっと多いかと思ったけど、最近バッシング多いからな…
…と、higege91が バン!!! っと机を叩いて立ち上がる!!!
higege91「…みんな、目を開けろ!! 目を覚ませー!!」
先生「コラ!! 勝手に目を開けちゃダメじゃないの!!」
higege91「具志堅会長(髭のおじさん)は本気で怒ってるんだ!! かつてライトフライ級王座を13度も連続防衛した日本屈指の名王者だった人なんだぞ!! …そんで、古巣であるかつての所属ジムである協栄ジムを叩く…ってことは尋常じゃないよ!! よっぽど腹に据えかねたんだと思うんだ、今回ばかりは真面目に考えないとどうにもならないよ!! 本当に強いか弱いか…ってことよりも、あの具志堅会長が人生を賭けて怒っている…って「意味」を重く受け止める必要があるんじゃないのか!? …「ちょっちゅねー」じゃないんだ、今回ばかりは…!!」
先生「…ぐ」
higege91「さらに言えば、具志堅会長は亀田興穀選手自体の実力はある程度(…どの程度?)認めているんだ、でも、弱い外国人とばかり対戦しているのに、日本や東洋太平洋のランキングに押し込んだ日本ボクシングコミッション(JBC)にも問題がある…ってことを訴えてるんだ、それはやっぱり一理あると思うんだ、ボクシングファン=亀田3兄弟ファンでないことは確かなんだ、ボクシング界全体の底上げ…に期待して黙っていた古いファンもこうなっちゃ認められなくなっちゃう、見て見ぬ振りも出来なくなっちゃう…、これは危機的状況だよ、先生、僕はもう我慢できないよ、誰が本当のことを言っているのかまったくわからないよ、何を信じたらいいのかわからないよ、亀田は本当に強いの?…日本人ランカーと闘ったら負けちゃうの!? …どうしてハードパンチャーと闘わないの!? 先生、苦しいよぉ…、胸が張り裂けて中からコウモリが飛び出して、雷がとどろいて、怪物たちやゾンビたちが町中徘徊しはじめて人類滅亡になっちゃうよ…!!!」
higege91、ガンガン!! …と机に頭を叩きつけ始める。
先生「…こらぁ、やめなさい、怪物やゾンビで町中溢れ帰ったら先生困っちゃうでしょ!!」
ガン、ガン、ガン、ガン…!!!
その地響きのような音にぞっとする先生…
先生「…あわわわ(驚愕の表情で…)」
クラスの生徒たち全員が規則正しく頭をガンガン…叩きつけ始めているではないか。
その鈍く重い音はさらに高まってゆく…
ああ、気がつけば学校のあらゆる教室の中から聞こえてくるではないか。
先生「…これは、まるで、後楽園ホールの激しく床を踏み鳴らす音のようだわ」
ガンガン…は、やがてドンドン…と変わって行く…
先生「ボクシングは真剣勝負なのよ、肉体と精神を磨き尽して闘うのよ、予定調和なんかないのよ、実力だけが全てよ、ラッキーパンチで格下の選手に敗れようとも、それも実力なのよ、結果が全てを教えてくれるわ、どんな結末が待っているのかわからないけど、私たちはその「結果」を受け止めるしかないのよ、喜びが待っているのか、不信感が待っているのか、絶望が待っているのか、誰にもわからない。この際、経緯はともかくとして、8月2日の世界戦のリングでは俄かファンも古株ファンも、支援者もアンチも納得できる本当の「ボクシング」を見せて欲しいわ、ああだのこうだの言っても時は刻まれて行くのよ、とにかくこんな騒動が原因で全てがぶち壊されるようなことだけは嫌よ、コツコツと真面目にやってるボクサーたちまで白い目で見られるのだけは勘弁して欲しいわ、だって、彼らは昼間は一般の人たちと変わらぬ労働に従事しながら青春の全てを捧げているのよ、一瞬のきらめきの中に「青春の充実」を求め、それはかくも美しいものなのよ、そういう大切なものを汚さないで、泥まみれにしないで、踏みにじらないでーぇ!!!」
…ドン ドン ドン ドン ドン
…これは、何の音?
…ドン ドン
あ、あたしの心臓の音…?
後楽園ホールの音…
あ、何?
ドン…
先生、不意に我に帰る。
教室にいたはずなのに…?
ここは?
…き、きれい
ん?
誰か来る…
…ジャリッ ジャリッ ジャリッ
誰か走ってくる…
カ、カシアス内藤さん…(ドキッ!! か、かっこいい)!?
ああ、そうよ、青春…と言う言葉を照れくさいだなんて言っちゃダメなのよ。
あたしたちも走らなくちゃ…
観客も走り抜けなくちゃ、それぞれの人生を、それぞれの青春を…!!!
…せんせい
…ねぇ、先生ったら
!?
先生、教壇で涎を流して居眠り…から目を覚ます。
いつもの教室…
先生「やだ、夢?」
higege91「…早くテスト回収してください、僕は休み時間に3R分シャドーボクシングするって決めてるんだから困るんだよね、一刻も無駄にしちゃいけないんだ、だって先生をお嫁さんにするって約束したでしょ?
世界王者になって迎えに行くって…」
先生「…(き、気味の悪い子ね、マジで)」
先生の心の声 …君にボクシングは無理だって早く諭した方が懸命なのかしら?…亀田選手はパーラもポンサクレックも危険すぎるってことなのよね?それはわかるけど、でも、ダメで元々で闘うボクサーたちがどれだけいることか?…そして、そんな悪い予想を番狂わせで覆した名勝負がどれだけあることだろう?
…ああ、でもダメなのよ、higege91クン、あなたはそのアンパンマンみたいな顔では世界王者にはなれないのよ…。早く気づいて…。お願いよぉ…
…ってことで、昨日、カシアス内藤会長のジムの選手が白星を飾った。
熊谷武彦選手(4R判定勝利)、おめでとうございます。
そして、会長に握手してもらいました。ありがとうございました。
大きくて優しい手でありました。
そんな喜びをボクシングファンは噛み締めながらホールへ足を運ぶのだ。
がんばったら、がんばった分だけ「結果」がついてくる…とは行かないこともあるけれど、それは決して無駄なことでは絶対にないと信じて…
支離滅裂ではありますが、「大切なもの」がこの騒動で汚されない事を切に願うものなり。
御愛読感謝
つづく