(本文より抜粋)



さて、順調に走り出したかに見えた、ムーディの"ロケバス"ネタ。

実際、ロケに赴く"売れっ子"達を、運転手として現場に運ぶムーディ勝山のシュールな雄姿を、筆者も何度かテレビで拝見した。

『タレントが乗るロケバスを、タレントが運転する』という、コントの設定が現実になったかのような、"もしもシリーズ感"溢れる斬新な構図に腹を抱えて笑ったものである。

しかし、突如暗雲が立ち込める。


始まりは、一本の電話だった。
ムーディが、"ロケバス"ネタを世に送り出して一年ほどが経ったある日。
その日彼はオフで、妻子は外出中であり、家には彼一人である。
「多分、お昼か……夕方ぐらいだったと思いますね」
まだ夜の帳が下りぬ明るい内に、突如かかって来た電話の主は、天津・木村。
"バスジャック事件"の犯人、その人である。

本名、木村卓寛。
向清太朗とのお笑いコンビ、"天津"のツッコミ担当である。

親兄弟の殆ど全員が、詩吟の師範代の資格を持つという一風変わった家に生を享けた彼。自身も師範代の資格を持つ。

詩吟という古式ゆかしい日本の伝統……しかし、現代、特にお笑い界では見向きもされなかったその芸が日の目を浴びたのは、事務所の先輩である漫才コンビ・麒麟がメインパーソナリティーを務めるラジオ番組に出演した際。

そこで即興で披露し爆発的にウケた"エロ詩吟"を武器に、2008年には数々のテレビ番組に出演しその"一発"を成し遂げる。

同年九月に発売した著書『エロ詩吟 吟じます』は十万部を越えるヒットを記録した。

彼もまた、数々の栄光を手にしてきた男。
他にも色々"あると思う"が今はそれを振り返っている場合ではない。



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