(本文より抜粋)


2016年春、波田陽区は、妻子を伴い活動の拠点を地元に移した。
「丁度、子供が小学校に上がるタイミングで。自分の環境を変えるには、もうここしかないと」
地元と書いたが、正確には生まれ育った山口県に程近い、九州は福岡。
そこには、彼の所属事務所の九州支部があった。


一発屋、地元へ帰る……『故郷に錦を飾る』などと言うが、それとは程遠い状況での帰郷。
彼の錦は既にボロボロ。
見る影もない。


加えて、吉本興業の一大プロジェクト、「住みます芸人」が、全国各地に移り住み独自の活動を展開しているご時世である。
地方を拠点に活動すること自体は、今や別段珍しくもなかった。


実際、波田が籍を置くワタナベ九州の一大功労者、"パラシュート部隊"の二人と"ゴリケン"も、十年以上前の2006年に福岡へ移り住み、かつて博多華丸大吉も在籍した福岡吉本一色だった土地で、文字通りゼロから仕事を開拓し人気を獲得した。


とはいえ、一世を風靡した、全国区の知名度を誇る"一発屋"が、地方に移住し活動したという例は聞いたことが無い。
その意味で、波田の決断は画期的だったと言える。
芸の発明ではなく、生き方の発明……芸人の働き方改革である。



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