今回のテーマは滑液包炎です。
関節周囲に存在する滑液包に炎症が生じて滑膜炎を起こす疾患です。
急性・慢性の炎症で痛みや腫脹、圧痛を主症状とします。
◎滑液包
滑液を含む小嚢で、皮膚、筋肉、腱、靭帯などと
骨が摩擦を生む部位で衝撃を吸収する役割をもつ。
誘因、原因に関して
関節の慢性的な酷使(機械的刺激)が大きな発症要因になります。
外傷、痛風、偽痛風や関節リウマチ、
急性・慢性の感染症(特に黄色ブドウ球菌)なども原因になります。
中年以降の女性に好発し、変形性関節症に合併することが多いです。
変形性関節症に関してはこちらから↓
病態生理
肩や膝などの関節に生じます。
肩関節の滑液包炎は五十肩の主原因になります。
五十肩(肩関節周囲炎に関してはこちらから↓
膝窩部の滑液包炎はベーカー嚢腫と呼ばれます。
◎ベーカー嚢腫
膝の関節腔の後方(膝窩部)に生じる、滑液が貯留した袋状の腫瘤。
貯留するのは内側腓腹筋滑液包と半腱様半膜様滑液包の炎症による
滲出液(滑液)で、関節リウマチ、変形性膝関節症、
膝関節の酷使などが発症要因になる。
関節リウマチに関してはこちらから↓
滑液包は関節周囲の組織(筋肉、腱、靭帯、関節包など)間に存在する
袋状の構造(腔所)で、内面を滑膜で被覆され、滑液が含まれています。
関節運動による組織間の摩擦を軽減し、
損傷を防いで関節の運動をスムーズにする働きがあります。
なんらかの原因により炎症が起きると滑液包炎を発症します。
急性滑液包炎は通常、滑液包の滲出液を生じます。
症状、臨床所見に関して
運動時の疼痛や限局性の圧痛、
関節可動域制限、腫脹などが主症状です。
結晶誘発性関節炎や細菌の感染によるものは発赤を伴います。(紅斑性)
炎症が関節周囲で続く(慢性滑液包炎)と
関節の線維化によって関節可動域制限(機械的なひっかかりなど)を
きたすことがあります。
◎慢性滑液包炎
急性滑液包炎の既往(難治例、再発)、
外傷の反復などが原因になる。
検査、診断に関して
臨床所見として運動時の痛み、腫脹、圧痛などを確認します。
滑液包穿刺では滑液を分析し、感染症や結晶誘発性関節炎か否かを調べます。
非感染性なのか感染性なのかの鑑別が重要になります。
◎結晶誘発性関節炎
尿酸塩結晶沈着症の痛風。
ピロリン酸カルシウム結晶沈着症の偽痛風などによって生じる関節炎。
治療に関して
急性滑液包炎では保存療法として
局所安静(一時的な固定など)、
薬物療法、ステロイド薬や局所麻酔薬の関節包内注射、
穿刺・排液などが行われます。
痛みが落ち着いたら関節周囲のストレッチなども行います。
手術療法としては滑液包切除術が挙げられますが、
感染性滑液包炎では持続洗浄療法が併用されます。
慢性滑液包炎では関節可動域訓練が重要になります。
原因疾患の治療も並行して行います。
予後に関して
原因疾患の治療が行われなかったり、
慢性的な酷使が続いたりすると
再発してしまうケースが多いとされています。