今回のテーマはくる病、骨軟化症です。
骨の石灰化障害により石灰化が進まず、
骨中の類骨の割合が増加する疾患です。
▼誘因、原因に関して
ビタミンD、カルシウム、リンの摂取不足などによる栄養欠乏が原因とされています。
腫瘍、先天性異常、腎臓及び肝臓の障害、抗痙攣薬などの
薬剤使用に伴って発症する場合もあります。
◎ビタミンD
脂溶性ビタミンの一種。
食物から摂取するほか、紫外線による皮膚下での光化学的な生成が可能。
腸からのカルシウム吸収を助ける働きや
骨から血中へカルシウムを放出して血中のカルシウム濃度を調整する働きがある。
近年、日光浴不足による産生低下が指摘されている。
◎カルシウム
体内で最も多いミネラル成分で、骨及び歯を形成するリン酸カルシウムが殆どを占める。
残りは血液、筋肉、神経内で血液の凝固や神経・筋肉の興奮の調整などに作用する
カルシウムイオンとして働く。
カルシウムは日本人が不足している栄養素の代表格で、
不足すると骨や歯の形成・維持に悪影響が及ぶ他、
イライラするなどの精神状態にも現れる。
◎リン
体内でカルシウムの次に多いミネラル成分。
カルシウムと共に骨や歯を形成する成分となる。
骨や歯の他にも筋肉、脳、神経など様々な組織でエネルギー代謝を助ける
重要な役割を担っている。
▼病態生理
ビタミンDは腸からのカルシウムとリンの吸収を助ける働きがあり、
ビタミンDが不足すると血液中のカルシウム、リンが低下します。
ビタミンDの代謝障害によりカルシウムやリンが骨に沈着せず骨の石灰化が進まずに、
石灰化が不十分な類骨が増加します。
成長軟骨板(骨端線)が閉鎖する前の成長期の小児ではくる病、
成長期を過ぎた成人では骨軟化症と言います。
成長期には骨端にある成長軟骨板という軟骨層で軟骨が石灰化により骨化(軟骨内骨化)し、骨は長軸方向に伸びていきます。
くる病ではこの骨の成長期に石灰化障害が起こることから
下肢のO脚やⅩ脚、脊柱変形、
低身長などの骨の変形、成長障害が起こります。
成長が止まった成人の場合は関節痛や腰背部痛、
骨痛と呼ばれる大腿部の疼痛、筋力低下、脱力感などが生じます。
★くる病、骨軟化症の種類
原因から、ビタミンD欠乏性、ビタミンD依存性、
低リン血症に分類されます。
ビタミンD欠乏症はビタミンDの不足、
ビタミンD依存性は先天性異常によるものが原因になります。
低リン血性くる病・骨軟化症は先天的なリン転送障害及び腎尿細管、
腸管でのリン吸収障害によるものが原因とされます。
・低リン血症(ビタミンD抵抗性)
→家族性低リン血性くる病・骨軟化症、腫瘍性骨軟化症、ファンコーニ症候群、
未熟児くる病、その他のくる病・骨軟化症。
・ビタミンD依存性
Ⅰ型ビタミンD依存性くる病・骨軟化症、Ⅱ型ビタミンD依存性くる病・骨軟化症。
◎ファンコーニ症候群
尿細管の障害によってアミノ酸、糖、リン酸などが尿中に漏れ出し、
骨の石灰化障害や成長障害が起こる疾患。
▼症状、臨床所見に関して
病態生理でも記載したように、くる病では下肢のO脚やX脚、
脊柱変形、低身長などが生じます。
骨軟化症では関節痛や腰背部痛、
骨痛と呼ばれる大腿部の疼痛、筋力低下、脱力感などが見られます。
不機嫌、情緒不安定になるなど精神症状があらわれることもあります。
◎O脚、Ⅹ脚
両膝が外側に弯曲し、左右の足関節内果部を合わせても
大腿骨内果部が接しない下腿の形態的異常がO脚。
内反膝ともいう。
それに対し両膝が内側に弯曲し左右の大腿骨内果部を合わせたときに
足関節内果部が接しない形態的異常がⅩ脚。
外反膝ともいう。
今回はここまでです。
次回はくる病、骨軟化症の検査と治療に関してご紹介していきたいと思います!!