↑熊本に予定されるTSMCの工場の完成予想図
結論から言うと、TSMCの誘致は九州の経済のためにも日本の半導体製造の技術獲得のためにも私はやったほうがいいと思います。
このところTSMC(台積電公司)にたいする陰謀論がネットではあふれています。
要約すると、TSMCは表向きは台湾企業になっているが創業者のモリス・チャン(張忠謀)が中国大陸の南東部の浙江省寧波市の生れだということ。関連企業や幹部職員に大陸出身者や中共党と近い人間がいるということで、TSMCは隠れ中国共産党の企業で、
日本の熊本県に拠点を持つのは安全保障や経済安全保障上も脅威だという主張です。
これですが、台湾の近現代史を知らない人がよくやる典型的な誤解です。
今の台湾(中華民国)とは、国共内戦のころに当時の政権だった国民党が避難してきてできた国なのです。
(厳密には1949年に台湾が中華民国に返還されて、1949年ごろに共産党のクーデターで人民共和国が建国された)
なので大陸にルーツを持った人が台湾に多いのは当たり前なのです。
今の台湾と中国本土は経済や人脈ではつながっていて、両岸の交流は北朝鮮と韓国よりもはるかに活発です。
さらに日本の熊本県に工場が計画されているのは、別に侵略的な意図はなく、インフレーションと円安で日本に工場を作ったほうが安上がりだからです。
中国と台湾は犬猿の仲で敵国だと思い込んでいる人はこの関係性には気が付きません。
日本ではマイノリティの台湾独立派の声ばかりが、なぜか誇張されて拡散されので現実の中台関係を知っている人が少ないのです。
深田萌絵ですが、TSMC陰謀論を調べるとたいていは彼女が情報の発信源です。
深田の言っている主張はよくある中国脅威論の延長(中共が日本企業を乗っ取っている)であり、なんの現実性も無いことばかりです。
土壌が汚染されて水俣病の再来になるともいいますが、これは再開発反対運動の時に護憲派がよくやる手口です。
環境破壊をゼロにするなら、経済活動ゼロにするしかありません。
過疎化している熊本では広大な土地は余っています。汚染が心配なら周辺の過疎地域の一部の高齢者は転居してもらえばいいのです。
「外資が悪だ」という反グローバリズムの考え方は、資本主義や自由経済を否定する考え方です。
TPP(太平洋トレード条約)やRCEP(地域包括経済)への反対論もそうです。
「日本の土着の企業を守れ」というと聞こえはいいですが、これは経済よりもナショナリズムを優先して国際的な競争をなくせと言っているのに近いです。
競争原理が低下すると経済は「ソ連化」して減退していく可能性が高いです。
「日本企業による日本製の半導体を作れ」というのも一見すると愛国的に見てますが、今の日本には悲しいことに先端の半導体を量産する能力が無いのです。いまだにFAXやエクセルを使っているように、日本企業はIT嫌い、テクノロジー嫌いが強く、まったく20年前から技術の進歩が緩やかなのです。
こうなっている以上、台湾企業を誘致して、最新の半導体とはどういうものなのかを学ぶ必要があります。
深田の反TSMC運動ですが、かつてのTPP反対運動と同じく自由経済を否定して日本の孤立化と後退に貢献することになります。
日米英戦闘機開発もそうですが、日本国民は「国産信仰」を捨てて多国間の競争により技術の進歩をやるのがいいことだと思考を切り替えたほうがいいと思います。
(深田萌絵は元投資家タレントとしてもテレビに出たことがあり経歴も怪しすぎる・・・。)