先日、母方のおばさんが亡くなった。89歳だった。
御縁所(僧侶)が、戌年でしょう、自分の母親が90歳なので、すぐわかるんです、という。
僧侶の母親は、もと東京の人だそうで、
東京大空襲の時には小学校5年生、彼女はこちらに疎開していたが、ご両親が亡くなった。
直接伝える人はいなかったというが、
その年頃の女の子が、雰囲気で察しないわけがない。
炎の中で大勢が亡くなる様子を
報道で、あるいは人づてに、何度も見聞きし、
ありありと思い浮かべて、その後を過ごしたに違いない。
いま、認知症が進んできて、
施設では周囲の人に「逃げろ、逃げろ」と言っている、
寺では、大事なものを風呂敷に包んで外に放り出したりした、
「私の大事な着物が、春になって雪の下から出てきたこともある」
とおっしゃる。
げに憎むべきは、憎しみを組織化する、戦争である。
奪いあって滅んでいく愚かさを、ただ言い続けるしかあるまい、
そう思っている。