正月、甥や姪を連れて、遊びに来た妹が、
手土産として、いわゆる「高級食パン」を持ってきてくれた。



 「高級食パン」で検索すると、CMがらみでたくさんのサイトや店が紹介されるが、

このサイトあたりが有名どころを網羅しているのではないだろうか。

変な名前の高級食パン店をプロデュースしてきた岸本拓也なる人物のことも
「高級食パン」「変な名前」で検索すると、たくさん出てくる。


上記のパンも、彼のプロデュースした店のものらしい。

全国展開で有名な「乃が美」は2013年の創業というから、

高級食パンというものが、ここ10年ほどのブームで、

ブームであるからには、廃れていくものも多く、

中には生き残っていくものもあろう、と思う。

 

いくつか食べたことのあるものはいずれも、

「生地はきめ細かく柔らかく、ほのかな甘みでそのままいくらでも食べられる」

というタイプで、パンとしては確かに高いが、菓子としても食事としても、納得できる価格だろう。

 

ただ、私は食パンについて、

おいしいとか好きだとか、軽々には書けないのだ。

 

実は25年ほど前、食パンを宅配するという事業をしていた。

 

当時私は、ケーブルテレビ会社の下請けで、番組ガイド誌を自分の名前でつくり、広告を取って、ケーブルテレビ加入宅に配布するという仕事をメインにしていた。

まだケーブルテレビの加入者も少なく、売上は印刷と配布の経費に消えた。
 

利益どころか、広告の製作や営業の経費、つまりは自分の取り分も出ない中、

何か利益の出せる事業を、ということで考えた挙句、(横浜にあった会社の真似だったが)

パン屋さんに焼いてもらったパンを、番組ガイド誌で宣伝すれば、

注文はくるだろう、と、パンの宅配を始めた。

ラードを入れて食べ応えのある角食に「まじめパン」

柔らかく山形に焼いたイギリスタイプには「女王パン」という名前を付けた。

 




もちろん、宅配にだって一定の人件費はかかるわけで、利益など出ようはずもない。

最終的には、番組ガイド誌の仕事はケーブルテレビ会社に吸収され、私は契約社員になった。

パンの宅配事業は、パン工場に引き継いでもらって、いまだに続いている。

(ウチの朝食は基本ずっと「まじめパン」である)

 




妹の持ってきてくれた食パンを、facebookに投稿したら、

ウチの近くにも、おいしいパン屋さんがあります!と、

わざわざ東京からパンを送ってくださった方がいらっしゃった。

 

おっしゃるように、

「生地はきめ細かく柔らかく、ほのかな甘みでそのままいくらでも食べられる」

お手本のような高級食パンである。

納得のくちどけ、香り、焼いたときの香ばしさ。

 

ただ、誰のせいでもなく

私は、食パンについて

おいしいとか好きだとか、言ってしまうことに躊躇するのである。


いまだに記憶がしょっぱくて、

冷静に味を評価することができないのである。