日産のゴーン氏と、ファーウェイの孟氏と、

二人の逮捕は、おそらく後世になってから、2018年を象徴する出来事だったといわれるだろう。
私は、両方合わせて「GMショック」などと呼ばれるのではないかと思っている。
 

直接の関係のない二人の逮捕だが、

言うまでもなく、ナショナリズムとグローバリズムとのせめぎあい、
パワーバランス、つまり権力の問題だからである。


表面的には、巨大グローバル企業のトップの、ちょっとしたルール破りが、
司法当局を動かした、ということでしかない。

 

日産はグループで12兆円、ファーウェイも7兆円を超える年間売り上げがあるというから、
10億円という、庶民には想像しにくい金額も、

売上全体の0.01%、1万分の1、のことである。

 

日産の方は、規模の小さいルノーに吸収されるというおそれが、現実化していたらしい。

知らなかったが、ルノーの筆頭株主はフランス政府で、いわば国策企業だ。

日産がルノーに飲み込まれれば、三菱自動車にも大きな影響を及ぼすだろう。
 

国を代表するような企業が、黒字のまま他国に売られるという事態は、いってみれば政治問題で、

そうならないために、事前に小さな「事件」で妨害する。

まったくもって、戦争や謀略と同じ経緯である。

ファーウェイは、制裁対象の反米勢力に、通信機器を売ったという容疑らしい。
こちらはルノー以上に、中国の国策企業である。

「安全保障上の問題」ということで、両国政府をまきこんで、せめぎあいは長く続くだろう。
さっそくカナダの元外交官が中国で拘束されたりしている。

 

通信は、経済的にも軍事的にも要(かなめ)であって、

windows10がそうであるように、現在のコンピューターは原則として、遠隔でメンテナンスされている。

アップデートと称して、データの遮断や盗用プログラムを仕込んで、またさっさと消し去ることなど、メーカーの立場ならいとも簡単なことであろう。
セキュリティの根幹が他国に握られている、と国のトップが気づいたら、
これまた、黙ってはいられまい。

 

現実として、現代の巨大グローバル企業は「民間」ではないのである。

官民合同、あの手この手で、他国の人材や富を奪い合う世界に、

私たちは生きているのである。
 

GAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)に、監視が必要という議論も、現実味を帯びてきた。

行政組織が「分け前をよこせ」と言っているのだと、私は見ている。

 

どこの国にでもある官僚機構も、巨大グローバル企業とそっくりで、

客や国民のためといいながら、ひたすら組織の利害に集中するものが、

組織では、順当に出世を果たすのである。

 

個人の資質など、問題ではないのだ。