「津屋崎(つやざき)」なり「油津(あぶらつ)」なり、地名を聞いてピンとくる人は、九州以外では少ないだろう。

 

津屋崎も油津も、「津」という字が示すように、港町だ。

津屋崎の方は、福岡市と北九州市の間(宗像市の隣)、合併して「福津市」になっているし、

油津は、飫肥城のある宮崎県日南市にあって、

九州の、北と南、ともに自治体名でもない、単なる「まちの名前」である。

 

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津屋崎の話からする。

2009年、ご自身が移住して、「津屋崎ブランチ」という拠点施設を立ち上げ、「移住交流ビジネス化業務」を始めたのが、山口覚氏。

合併前の人口は1万4千だった地域に、900人の移住者をよんだという。

12月11日は、戸出のCOMSYOKUさんで、【地域のおこし方会議 〜0から1を生み出す「対話」の場〜】 というタイトルで、その山口さんのセミナーがあった。



ファシリテーターらしく、
4人ずつのテーブルでの自己紹介、感想の共有、シャッフルなどをはさみつつ、
どのようにして「移住者のくる地域」を作り上げていったか、話していただいた。

まず第一は、「対話」

地元の人たちが何を求めているか、地域にどんなアイディアが眠っているか、思い込みなしに耳を澄まして聴くこと。
子どもから、人前では話したがらない中高生や、既成概念にとらわれていそうな高齢者からも、表面に出てこない「本音」を聞き出す。

ディベート(討論)は「どちらが正しいか」をやりあうが、そうではなく、「対話(ダイアログ)」で、互いに理解し合うことにこそ、意味がある。
そのためには「否定も断定もしない」ことが大事。否定や断定に出会うと、人は口を閉じる。
「答えは一つと思わない」ことで、「アイディアをつなぐ」ことができる。

「心の変容を許す」ことで、自由にアイディアが羽ばたく。

 

異分野のものがつながることで、イノベーションは起こる。

 

第二は、「発明家的発想」を心がけること。

商店街の始まりは、伊勢の門前町。
駅や港、「人の集まるところ」に商店街ができたので、商店街があるから人が集まったわけではない。

 

常識を疑い、本質を考える。

1.課題解決法 2.水平思考(たとえ話) 3.組み合わせ法

 

さまざまな具体的な活動が生まれた。

 家賃前払い方式で空き家の再生

 部活カフェ

 プチ起業塾、からの、シェアカフェ

 大交流会

 

そして第三が、「仕事×地域づくり」である。

企業やお店が「ただ儲かればよい」ではなく、「人に求められることを仕事に」しているのと同様に、

地域も、「どうやったら人が来るか、お金が落ちるか」ではなく、「日本や世界にとって、どういう役割を果たす地域になるのか」を考える。

「思い」をもち、「役割」に集中する人なら、周りが、応援しようという気持ちになる。

 

「できるだけ平凡なことをやろう」

競争ではなくマネ、インパクトではなく平和、ブランドではなくあたりまえ、週末ではなく平日

 

夕陽の風景や、新鮮な魚、キラキラした人間同士の関係などなど、本物は「指標」にのらない。

人口を増やすのは、目的ではなく手段。

ついには、近所の神社で、お年寄りたちも「記憶にない」という、結婚式が行われた。

 

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株式会社油津応援団専務の木藤亮太氏の講演は、

12月12日、富山商工会議所の部会合同セミナー。
木藤さんの講演があるという情報をいただき、
会議所に申し込んで、参加させていただいた。

 

 

木藤氏も、2013年、「月90万円、4年間で20店舗を誘致」という契約で、

福岡から日南市油津に移り住んだ。

 

「とにかく圧倒的な少子高齢化の中で、商店街の再生などありえない」

 

1.「覚悟」  覚悟を決めると応援する人財が集まる

 

最初は、商店街の入り口で閉店していた喫茶店をリノベーション。

会議所の事務局長だった方と飲食業のプロとで、会社を立ち上げ、

補助金頼みではない完全民間ベースでスタート。市民出資を得る。

 

2.「現象」  意図・デザインした場から生まれるものがある。

 

スーパーを減築、カフェテリア方式の飲食店と、中庭をはさんだ有料のフリースペースにする。

スペースはスタジオやスクールとして活用される「かっこいい公民館」

中高生が「土曜朝市」を復活

 

3.「活用」  ないものねだりから、あるもの活かしへ

 

油津には、年間30隻のクルーズ船が入ってくる。一回4千人の乗船客とともに、千人の乗組員が、リピーターになってくれる可能性がある。

カープのキャンプが歩ける距離の球場で行われ、一ヶ月で5万人来る。道を赤く塗り、「カープ館」をつくり、駅もカープ色にしてもらい、優勝パレードをしてもらった。

 

4.「自走」  必要に駆られれば、自ら動き出す

 

ブティックがIT企業のオフィスに、地元出身者を雇用

商店街に幼稚園

名大生がゲストハウスを開く

いつのまにか地元の人がゲストハウスを開いていた

 

5.「理由」  何のためのまちづくりか

 

商店街の課題ではなく、地域の課題にフォーカス

「商店街に何ができるか」

子どもたちにバトンタッチできるよう

再生ではなく、ゼロベースでデザイン

 

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お二人のやっていること、考え方が、あまりに似ているので驚いた。

 

競争よりも協力、所有よりも共有、依存から自立


互いに顔の見えるような地域を舞台に、徹底的にあるものを見直し、

起業のアイディアを突き詰め、練っていく。

 

同時並行、相乗効果、建築のおしゃれさ。

 

そして、既存組織との適度な距離感。

 

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学ぶばかりでは意味がない。

そろそろ「自分の番」だろうと思っている。