「戦争論」というと一般的には、小林よしのりのマンガが有名だろうが、今日はクラウゼヴィッツの方である。
といっても、より読みやすい、下記写真の解説書の紹介である。
手元にあるのは平成14年1月の第2刷だ。久しぶりにひっぱりだした。

戦争論

「戦争反対」は誰でも言うが、では戦争とは何か、なぜ起こるかを、私たちは学校では学んでいない。
「学校で学んでいない、命にかかわる3つのS(性=セックス、宗教、戦争)」と、私は言っている。

この本、びっくりするぐらい目次が詳しい(14ページ分ある)ので、不用意に要約するより、目次を(これでも省略しつつ)並べたほうがいいだろう。

わかりやすくするためというより、大澤正道という著者の「意図」なのであろう、具体例も太平洋戦争など日本の戦争を語ることが多く、クラウゼヴィッツのというより、全体として、著者の戦争論になっているような印象だ。

 はじめに
 『戦争論』のあらまし

第1章◎クラウゼヴィッツの『戦争論』誕生の謎をさぐる
 愛国者の誕生*クラウゼヴィッツの生涯をたどる
 実戦体験1*クラウゼヴィッツは連隊の子だった
 実戦体験2*会戦の惨敗体験が『戦争論』の原点
 実戦体験3*ボロジノ会戦に大砲の威力を知る
 実戦体験4*国民総蜂起のゲリラ戦に注目する
 実戦体験5*徹頭徹尾、クラウゼヴィッツは愛国者だった

第2章◎キーワード「戦争は政治の継続」を解き明かす
 戦争の本質1*戦争は政治の継続といわれる理由
 戦争の本質2*戦争は貿易や、とりわけ政治に似ている
 二大兵書の比較*クラウゼヴィッツと孫子、どこが違う?
 源平合戦*「戦争は政治の道具」を頼朝・義経の確執にみる
 ポエニ戦争*政治に裏切られた名将ハンニバルの悲劇
 文民統制1*政治家と軍人の理想の関係は?
 文民統制2*クラウゼヴィッツに学んだ知将モルトケ
 建軍精神の確立*「軍人勅諭」はクラウゼヴィッツの影響でできた?
 建軍精神の崩壊*昭和の政治を揺るがした統帥権干犯問題
 “絶対的戦争”と“現実の戦争”*軍事を知らぬ政治家は経済を知らぬ経営者だ
 我田引水の例*レーニンはなぜ『戦争論』を愛読したか

第3章◎実戦を通して戦争の本質を明かす
 戦争の要点*戦争にみる「三つの性質」と「四つの要素」
 戦争の定義*戦争は集団化された決闘である
 戦争の現実*力の使用はどんどんエスカレートする
 軍備増強の法則*科学技術と企業が戦争をいっそう強力にした
 平和主義の危険*人道主義者の寝言は最悪である!
 将軍の決断*賭けこそ戦争を醍醐味である!
 緊張と恐怖の実例*戦場はリスクの海である
 戦争における困難1*戦争では偶然が必然となる!
 戦争における困難2*情報は当てにならぬと覚悟したほうがいい
 戦争における困難3*肉体の困苦が勝敗を分ける
 戦争における困難4*摩擦がわからなければ戦争はわからない

第4章◎戦史を通して戦争計画の過去・現在・未来に迫る!
 戦争の種類*戦争には制限戦争と殲滅戦争との二種類がある
 西洋古代の戦争*都市国家の戦争と大帝国の戦争
 西洋中世の戦争*騎兵同士の模擬戦のような戦争だった
 ルイ十四世の軍隊*戦争が常備軍をもつ政府の独占事業となる
 十八世紀の制限戦争*「武器のない外交は楽器のない楽譜のようなものだ」
 フランス革命戦争*革命軍の誕生で戦争が国民の本分となる
 ナポレオン戦争*戦争本来の激烈な力を容赦なく発揮
 ナポレオン戦争の副産物*国民総蜂起のゲリラ戦が登場する
 第二次世界大戦以降*クラウゼヴィッツの予見は的中しすぎた!

第5章◎これが勝利する指導者の資質だ
 勝利を決める五つの力*クラウゼヴィッツは精神力をもっとも重視した
 勝利の方程式*時には勝者の損失のほうが多いケースもある
 ふたつの損失*敗北を決定づけるのは精神力の損失である!
 重心の理論*勝利の秘訣は敵の重心を叩くことにある
 精神力の三要素*主要な精神力は、将軍の資質、軍人魂、愛国心
 将軍の資質1*将軍たる者は心眼をもたなければならない
 将軍の資質2*将軍たる者は果断でなければならない
 将軍の資質3*将軍は我慢強く、自制しなければならない
 将軍の資質4*将軍は学者であってはならない
 軍人の条件1*勇気と勇敢は軍人に欠かせない精神だ!
 軍人の条件2*軍人魂は軍の大黒柱である
 軍人の条件3*日本軍の軍人魂が発揮された瞬間

第6章◎これが勝利する作戦の すべてだ!
 殲滅戦争に勝ち抜く方法*勝利する作戦には九通りある
 会戦*戦争の勝敗を決するのは会戦である
 包囲作戦*包囲は攻撃に欠くことのできない手段である
 迂回作戦*側面、背面を衝く作戦も重要だ!
 追撃作戦*勝利は追撃戦で完成される!
 反撃作戦*勝機をつかんで、一気に攻勢に出る!
 奇襲作戦*秘密保持と迅速が成功の2大条件
 謀略作戦*劣勢で万策尽きたあとに出番となる欺瞞の効能
 ゲリラ作戦*ナポレオンに一泡吹かせた国民総蜂起の光と影
 大会戦*最高の知恵と最大の兵力の結晶

第7章◎こうなると負け戦になる
 『戦争論』の原点*戦争の五十パーセントは負け戦
 厳粛な現実*これが負け戦の実際である
 上策と下策*退却を生かすも殺すも、リーダー次第
 自国の戦場化*内地への退却は有利か、不利か
 敗北の本質*たんなる敗戦と完全な敗北
 敗戦と国家*敗戦で潰れる国、立ち直る国
 敗戦の主因*戦争に敗れるのは時の運か、人の非か

第8章◎防衛は攻撃に勝る
 戦いの基本*戦争は防衛にはじまり、防衛に終わる
 新発見*孫子も防衛優先論者だった!
 防衛の本質*防衛とは敵の攻撃を待ち受けること
 戦略と戦術*戦術的効果と戦略的効果の違い
 メリット1*戦術からみた防衛の利点
 メリット2*戦略からみた防衛の利点
 ふたつの構成要素*防衛戦は「待ち受け」と「反撃」からなる
 利用できる手段*防衛戦の五つの支柱
 日本の現実*専守防衛は敗北主義だ!

以上のようなものである。

クラウゼヴィッツの戦争論については、今はもっと新しい、さまざまな解説書も出ているようだ。アダム・スミスの「国富論」やマルクスの「資本論」に匹敵するという人もあるので、たとえば「護憲派」であればこそ、この分野の「教養」としてふれてみてほしいと思う。

ビジネスにも役立つ。

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