この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。

                 



                   「言  霊 (ことだま)」  9



「誠君の心意気には賛同するし、目的が人助けや、


話聞いたら協力せんわけにはいかん。


そやけどな、これを実行するんは容易な事やない。


君が体験したように、施設に入る子供たちは一向に減らん。


そうかと言うて、政府が全く救済してないんか言うと、


そうでもない。


手当をすれど、助けを求める子供らが多すぎるんや。


政府の政策が悪いのも一因やが、


無理解な親が増えてるんが大きな原因や。


戦後のドサクサの中やと、


小さいころから苦労して育ったやろ。


食いもんが無うて、芋のツル食べて育った子は、


チョット裕福になって、麦飯や白いご飯が出たとき、


一粒のご飯粒も残さず食べつくす。


兄弟や、腹の空かした子供を見っけたら、


自分の食べ物を半分にしてでも分け与えた。


ところが日本が復興してきて、


裕福な家庭環境で育つと苦しみをしらん。


本人が悪いんやなしに、時代の流れで育った欠陥人間や。


そんな人間が大人になって結婚する。


ワシに言わしたら、人生の経験不足で苦しみをしらんのや。


そんな子供から脱皮してない者が親になるやろ


そやから子供の痛みが理解できんし、


虐待しても虐待の意識がないんや。


最近、自分の子供や親、


祖父母を虐待や殺害したりするんは、


ガキのころに甘やかされて育ったか、


子供のころに親から虐待を受けてたかのドッチかや。


殺しといて誰でもよかったなんてホザクンは、


罪の意識も無い、


善悪の判断もできん人間の仮面をかぶった鬼や。


ノホホンと育つと、そんなアホンダラが世にはびこるんや。


いかに教育が必要かが解かると思うんや。


何も勉強バッカリが教育やないんや。


人間としての、最低限度の躾(しつけ)が必要なんや」


 お銀が、気を利かせて酒を注いだ。


                            -つづくー