この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。



                         「呪 文」  5



「何や、美雪ちゃん寝てしもてるがな」


 お銀が、笑いながら毛布をかけてやった。


「話を聞いてた思たんやけど、平気な顔して寝てるわ。


この子は大物になるで」


 近藤が覗き込んだ。


「その行方不明になった川本の捜査は続いてますんか?」


「勿論や、川本の行方知れずが、


何かのカギを握ってると睨んでるんや。


短期間に二人の秘書が行方不明や、


何にもない言う方がおかしいやろ。


大岩代議士からの情報収集が難しいんで、


地元警察が事務所を中心に洗うてるんや。


新しい情報では、会計責任者がクビになって、


事務所がゴタゴタしてるみたいや」


 近藤が、最新情報を打ち明けてくれた。


「二人も行方不明になって、今度は会計責任者がクビですか。


ゴタゴタどころやありまへんで。


大岩に変化は有りませんのか?」


 龍蔵は、代議士の動きが気になった。


「それがな、ワシら察の弱みで、


代議士の捜査になると必ず上層部の横槍が入って、


捜査が思うように進まんのや。


上の方の圧力で、捜査を断念することもよう有ることや」


 進展の無さがうかがえる。


 お銀が走り込んできた。


「本田さんの弟や言う人が来てますで」


「本田の弟?」


 龍蔵と近藤が顔を見合わせた。


「おじゃまします、ワシ本田明いいます。


こんな顔で失礼します、仕事がサンドイッチマンで、


こんなピエロみたいな化粧してますんや。


兄貴が殺されたと聞いたもんやから、


家へいってみたら、龍蔵さん言う人が、


美雪ちゃんを連れて行ったと聞いて、


書置きしてもうた住所頼りに寄せてもらいましたんや。


美雪ちゃんが、こうして寝かしてもうてるんを見て安心しましたわ。


兄貴が殺されたことについて詳しゅう知らんのやけど、


何か教えてもらえませんやろか?」


 突然のピエロの出現に、二人が驚きの目をむけた。


                            -つづく-