この小説はフィクションです



                       「無 愧」  20


 瀧蔵は、君原の情報にかけてみた。


写真一枚からの情報は、貴重な探索と期待が大きい。


 亡き池谷組長の一人娘、紀子に来てもらった。


今日は、紺のスーツに身を固め、


引き締まった美しさをみせる。


「呼び出してすんませんな。


この君原ハンが貴重な情報を得てきたもんやから、


捜索に加わってもらおう思いましてな」


 瀧蔵は、くつろぐ皆に紹介した。


「これだけのメンバーに御嬢さんが加わったら鬼に金棒や。


ワシらは最高のパホーマンスで応援させてもらいますで」


 忠吉が、紀子に酒を注いだ。


「よろしくお願いします。


それで、何から手をつけたら?」


 瀧蔵の顔を窺う。


「この写真一枚を頼りに探してますんや。


さっそく君原ハンが、敏江が働いてたバーを見つけてくれました。


このバーのマスターの態度から、


三井も知ってる可能性がありそうですんや。


今後、君原ハンが流しながら店に寄って、


三井の事ばっかり聞き込んだら、マスターは疑うはずや。


それでのうても知らんと突っぱねてるらしい。


 そこで、店に客として行ってもうて、


以前君原ハンの流しに惚れこんでファンやとでも言うて接したら、


何とか店に潜り込めるやないかと考えたんですわ。


何か口実をもうけて入らんと、


女が一人で一見の客として入るのは不自然や。


男のワシが行くより、


ここは紀子ハンに動いてもうた方が気を許すと考えたんですわ。


そこいらのコマイ打ち合わせは、君原ハンとやってもらえますか。


他にも情報が入って来る可能性がありますんや。


その時は、場所に応じてワシなり竜二が潜り込みます。


一人で行くのが不自然やったら、いつでも声かけてくれますか」


 さっそく、紀子と君原が打ち合わせを始めた。


「夜やったら、ワシらの中で協力できるモンもいてます。


全員で網張ったら、解決は早い気がしますわ」


 忠吉が楽観視する。


一杯飲み終わった紀子は、君原と共に京橋に向かった。


「紀子ハン、ワシこの食堂で情報を得ましたんや。


ここで、ワシがこの辺りを流してると聞いた言う事にしましょうか。


とりあえず、一回は様子見に入った方がエエ気がしますわ」


 君原が入り口の引き戸を開けた。


                            -つづくー


                トラちゃんのスケッチ