(この小説はフィクションです)
⑬ 「潜 像」 (16)
問題の根が深く特効薬が見いだせない。
やおら、龍蔵が座り直し口を開いた。
「この新聞にも出てるように、「自殺に追い込む会」何て作って、
イジメとったグループも有る。皆んな貧乏してるんや。
貧乏言うても金のない貧乏や無いんや、心の貧乏や。
言い訳バッカリしてる先生も貧乏人や。
その解決方法に特効薬は無いやろけど、
徐々に貧乏から脱出できるように、
授業として遊びを取り入れたらどうやろ。
柔道やダンスを強制するより意味が有る思うんや。
柔道を批判するわけや無いけど、導入するんやったら、
事前に適格かどうか調査が必要や、
子供らが興味示さんかったら意味ないがな。
日本から世界に広まったスポーツやと、
単純な意識で物事を決めた嫌いがあるな。
役人の単純細胞が考え出したことやから、
当然と言えば当然やけど、
押し付けられた子供らはタマッタもんやない。
過去の統計から、部活の等のスポーツで、
柔道の死亡率が一番高いんや。
受身も満足に教えんといきなり柔道をやるからや。
指導者不足も一因や。コンナンをただの押し付け授業言うんや。
ワシが何で授業に遊びと思うかもしれんが、
子供同士で大笑いしたり、クラス全員が一緒になって、
無心に遊ぶ事は少ないと思うんや。
みんなと笑顔を共有する心を忘れてしもてるんや。
缶蹴り、縄跳び、鬼ごっこ、なんでもエエんや。
大声出して大笑いしながら無心に遊ぶんや、
柔道を強制するより、興味を示してくれると思うで。
指導者は、定年後暇を持て余しとる遊びの神様や。
雨の日は、民話やとか昔話を、詳しい老人に語ってもらうんや。
戦争を語り継いでもらうんもエエ、まだ戦争に行った人も健在や、
戦後のドサクサの中で生きてきた体験談でもエエ。
生の戦争の話が聞けるんは今のうちや。
子供らに、戦争を実感してもらう最後のチャンスや。
将棋をやってもエエし、女の子やったら手芸や料理でもエエ。
工夫したら、ナンボでも遊びは有る思うんや。
人との交わりによって信頼関係も生まれるし、
イジメなんかしてた事が、バカバカしゅうなってくれたらエエンヤ。
日本の子供は、自主性を持った優しい心の子バッカリや。
イジメなんて陰険な行動に走らしたんは、
大人や社会に原因があるんや。
先生との信頼関係を築く意味でも、
先生も一緒になって遊ぶんや。
やってるウチに子供らが新しい遊びを考え出して、
笑顔の活気ある学校になる思うんや。
皆んなが意見出し合うて、遊び会議でも開いたら、
もっとユニークな事が考えられるかもしれん」
龍蔵の提案に、皆んなが顔を見合わせた。
「そうやな、意外な発想が成功する可能性は有るな。
興味を示してくれる事が第一や、皆んなが夢中になりだしたら、
「葬式ごっこ」やら「自殺に追い込む会」なんて、
考えとる事がバカバカしなるわ」
近藤が相槌あいづちを打つ。
「オンナジやるんやったら、
小学校から高校まで義務化したらエエんや。
毎日が無理やったら、一週間に一、二時間とか、
夏休みや春休みも利用したらエエんや。
遊びも社会勉強にはエエと思うけど、
地域の人とボランティアやるのも一つの方法や。
地域の清掃したり、老人と一緒に交通指導員をやったりしたら、
自覚も生まれるし地域の活性化にもなる。
とにかく社会勉強してくれたら、本来はエエ子ばっかりや。
それが成功して笑顔の街になってくれたら言うこと無しや。
ホンマノ事言うたら、中学の一年生になったら、
一年間は社会勉強の時間にあててもうたらエエ思たんやけど、
それじゃ徴兵制度みたいやと反発出そうやから、
言葉変えて愛情学校にしたらどうやろうかと考えたんや
先の人生考えたら、若いときに一年ぐらい社会勉強しても、
無駄ではないと思たんや。
コンナンは役人の石頭ではアカンのや、
生徒の意見、柔軟な頭の民間の提案やったら、
子供らの興味をソソル授業が出来ると思うんや」
お銀が考えを話した。
マミちゃんが、お絵描きをやめて見つめている。
「早よう学校行きたいな、学校に行ったら遊べれるんやろ?」
「この子、全部聞いてたんやな」
お銀が膝の上に乗せる、マミちゃんが抱きついた。
-つづくー
(トラちゃんのスケッチ)