東京都知事選について、思い付くままに、徒然に。

 東京都知事選の構図や争点(らしきもの)が定まりつつある。多様な候補者が出馬し、多面的かつ重層的な議論がなされることは、一有権者として、また民主主義の醸成として望ましいことである。

 宇都宮候補が「都知事選の争点は原発ゼロのワンイシューではない」と発言している。そんなことは当たり前、言わずもがなである。東京都が一自治体として抱える課題は山積している・・・・・・超少子高齢人口減社会での活力維持・向上、2020年東京オリンピック・パラリンピックの成功、景気・経済・雇用対策、医療・福祉・年金・介護、子育て、教育、防災・治安対策、インフラ整備、環境、観光、コミュニティ、エネルギー対策等々・・・・・


 ここに来て「原発ゼロ」が争点化されようとしている。エネルギー政策は一義的には国のマターである。僕は、「自立的地方分権国家の樹立」論者なので、国と地方の役割分担を明確にすべきと予てから主張している。ざっくり言うと、国は、防衛・外交・マクロ経済(金融政策等)・エネルギー政策等を担当し、それら以外の数多の行政・住民サービスは地方が担当するということである。よって、一義的には、原発政策(エネルギー政策)は国家マターといえる。つまり、東京都としては、「東京のエネルギー・電力供給は、都民の生活や経済活動等の維持確保管理の観点から、安価でかつ安定した供給を国に対して強く要望していく」というのが、東京の取るべき態度であろう。


 しかし、全国の約10分の1のエネルギーを消費している大消費地の東京。加えて、東京は、首都圏のエネルギーを一手に支える東京電力の株(1.2%)を持つ、第四位の大株主である。東京電力に対して、つまり、東電経営方針(福一対応含む)や原発再稼働(新潟・柏崎刈羽)等に関して、それ相応の、一定の影響力を保持している。

 ここで、仮に「原発ゼロ・脱原発」を主張するのなら、現在の首都圏へのエネルギー供給体制をどう維持確保管理していくのか、具体策が求められよう。現在の火力発電依存体質では、環境破壊や資源の海外流出問題も含め、いつまでもは持たないだろう。

 勿論、東京都が自立的・地産地消的な発電(再生可能エネルギー整備や節電意識の醸成、特に最低でも非常用電源等は常に確保する)に尽力するのは当然であるが。

 

 また、そもそも「東京電力の持ち株の配当・利益はどこに使われているか?今後それをどうするか?」誰も論じない。宇都宮氏が、「原発ゼロ」を唱えるのなら、公営企業会計(特に都電や都バスの運営)に使われている、この配当・利益は要らないというのか? 組合バックでそれが言えるのか? 東京電力の法的整理まで踏み込めるのか? 大阪のように、都バスの(特に運転手さん等の)人件費や経費等を大幅カット出来るのか?

 因みに、細川氏も民主党がつくとなると、民主支持母体の電力総連(再稼働容認派)との関係はどうなるのか? 非常に複雑である。

 

 翻って、「原発はやはりベース電源」「原発再稼働容認」と言うのなら、原発の絶対安全確保や使用済み核燃料(再処理)の問題をどう解決に向かわせるのか? 「東京都の為に再稼働容認」というのなら、大消費地である東京自身が、「乾式キャスク」等によって一時仮置き場になる覚悟があるのか。最早、これまでのような原発立地自治体や青森だけのイシューではない。誰もそこまでの議論に踏み込まない。政治の怠慢・逃げと言える。恐らく、国も候補者もそこは触れて欲しくない封印場所なのだろう。正に、核のゴミと同じである。

 いずれにしろ、「原発再稼働容認」論者・候補者は、先ず真っ先に新潟県民の皆様に頭を下げに行くべきである。


 後、防災・治安対策や医療・福祉・年金・介護・子育て対策等は当たり前であるが、余り明確な争点になっていないのが、景気・経済・雇用対策である。アベノミクスがここまで概ね順調で、これからが本格的な景気回復、デフレ脱却の正念場である。ならば、この景気を絶対に腰折れさせてはいけない。今年4月から消費増税(8%)、また、来年は10%にまでなろうというご時世である。

 アベノミクスの恩恵がまだ行き届いていない、地方や中小企業、我々一般庶民は、実体経済の中で景気回復の実感も湧かないまま社会保障や増税等で負担増を強いられる。ここは、景気腰折れ防止やデフレ脱却促進の観点から、都の政策として、「減税(都税分)」をすべきであろう。期間は2~3年、減額は数%、財源は景気上振れ分・消費税増税の地方分・行財政改革(政治行政自らが身を切る覚悟として行政経費や人件費等の更なる削減)・法人事業税(一部国税化)の戻しや法人住民税の国税化の拒否(もし出来れば)分等を充てる。

 しかし、現時点で、こういう政策をどの候補者も言わない。

 

 宇都宮氏が懸念するように、このまま「脱原発・原発ゼロ」のワンイシューに持っていかれるのか。東京都知事選挙は、地上戦より空中戦と言われる。特に、選挙期間が今回のように超短期であればあるほど、メディア対応・戦略、イメージ戦略等が重視される傾向にあり、巷間言われる「魔物が住む」選挙になる。肩書きや経歴のみが先行し、果たしてこれらの候補者に、日本最大の地方自治体を運営・経営していく真の情熱やエネルギー、発想力、創造力、体力、瞬発力等があるのか。日本や世界の諸都市をリードし、範とならなけれなならないダイナモ・エンジンたる首都東京の選挙(民主主義)が果たしてそれでいいのだろうか。