僕は、行政課題・事案に向き合う上で、行政側(県職員等)の意見だけを聞いていては、どうしても片務的・偏向的になりがちなので、出来るだけ、当事者(県民の皆様)等の意見を幅広く聞き、出来るだけ客観的・中立的・公平・公正な立場で、事に向き合うように努めている(中々うまく行かない場合も多いが・・・・)。それが、県民の皆様に負託を受けた僕の立場・スタンス・責任であろうと考えている。

 

 そういった意味で、本日、都農町のS農家さん(6例目)を訪問させて頂き、色々と話を伺った。大変参考になる話を聞いた。S農家さんには、大変忙しい中、ご協力、有り難うございました。

 このS農家さんは、国の疫学調査チームが初発であると発表(7月23日)した農家さんである。僕自身の8月9日のブログでも書いたが、初発であるというなら、それなりのしっかりした根拠・確証が示されるべきであろう。4月20日以降採材された血液・抗体検査のみで果たして全体の「初発」と断定出来るものなのだろうか? それは、あくまで、20日以降の検査結果で分かる範囲で「初発」ということであろう。

 

 まぁ、初発云々は別にして、抗体検査により、3月中旬にS農場にウィルスが侵入していたことはまず間違い無い事実であろう。

 また、僕個人としては、重要なのは、初発であるかないかよりむしろ、どこから?何を経由して?何を媒介に?どういう経路で?ウィルスが侵入したか?であると思う。その事の解明・究明が正に「今後、畜産農家さんはどういうところに注意すべきか?」の問いに答えてくれるものである。


 意見交換は、そのS農家さんの掛かり付け獣医師さんも立ち会われた。

 その獣医師さんからも幾つか重要な指摘やお叱りを受けた。

 

 僕自身のブログ(7月25日「初発・6例目」の内容一部訂正とお詫び)

 獣医師さんの指摘①・・・・・7月25日の僕のブログで、読者やご本人に誤解を与える表現があったことをお詫び申し上げなければならない。

 上から7行目に「開業獣医師に口蹄疫の可能性の認識は無かった」と表現されているが、これは読み方によっては「開業獣医師には、そもそも口蹄疫の知識が無かった」と読み取れるというもの。

 これは、全くの誤解で、僕としては「その時の牛の症状からして、口蹄疫を疑う症状ではなかった」という意味で書いたつもりであった。お詫びして訂正させて頂きたい。


 指摘②・・・・4月14日に、そのS農家さんへ、家保の再度の立ち入りがあった際、「S農家さんの牛達と同じような症状を示す家畜農家さんは他に無いのか? 或いは、他の農家さんからの家保への通報は無いか?」の問いに対して、その時の家保の職員は「ありません」と答えたらしい。

 実際は、4月9日に都農町のM農家さん(掛かり付けの獣医さん)から通報があった(この4月9日のM農家さんが、4月20日第1例目の疑似患畜確認農家さんである)。

 家保の家畜防疫員は、S農家さんもM農家さんもこれと言って口蹄疫症状の疑いは無かったので、「ありません」と答えたということだったが、「通報があったか?どうか?」について聞かれたら、正しい情報は伝えるべきだったと思う。家保の立場としては、情報公開によって風評被害等を危惧した部分もあろうかと思うが・・・・・・今後の反省点であろう。


 指摘③・・・・・4月22日、S農家さんの農場に疫学関連で立ち入り調査した際、県は、S農家さんから3月31日に採取していた検体を動衛研に送っているが、それは、S農家さんの提案・要望により送った。

 指摘④・・・・・従来の症例判断基準等の見直し。必ずしも口蹄疫を疑うものだけでなく、口蹄疫で無いことの安心を得る手段としての症例判断基準と検体送付基準が検討されるべきである。


 他にも様々な指摘があった。最後に、総括的に指摘されておられたが、感染源・感染ルートの全容解明は捜査権・強制権等が付与されなければ中々難しいであろうということだった。これは、僕と共通認識である。


 S農家さんの指摘①・・・・感染源・感染ルートの解明は様々な観点から、様々な農家の調査をしっかりやって頂きたい。疫学調査チーム等の調査は生ぬるいのではないのか?

 

 例えば、7月19日付宮日新聞に掲載された川南の大規模農場の件。

 記事・・・・「口蹄疫問題で、4月下旬に疑い例が確認された川南町の大規模農場(因みに第7例目)で、獣医師が県の家畜保健衛生所に異常を通報した6日前から、牛数頭によだれの症状が出ていたことが18日、経営会社への取材で分かった。当時は、国内10年ぶりとなる都農町の1例目の公表前。別の関係者によると、国が実施した抗体検査の結果から、大規模農場の感染時期は遅くとも4月上旬とみられる。口蹄疫問題では、数十軒の農場で症状が見過ごされた可能性が指摘されているが、農林水産省の疫学調査チームは牛700頭以上を飼育する大規模農場の状況が、感染拡大ルート究明の鍵の一つとみて調査を進めている」

 指摘②・・・・・どういう調査をどの程度進めているのか?。聞き取り調査だけで、事実・真実が判明するのか? 自分が経験した範囲では、調査は甘い。


 同新聞記事・・・・「・・・・同26日から大規模農場で殺処分に従事した他県の獣医師は「風邪と間違えるかもしれない症状だったが、多くの牛が発症していた」と話す。

 指摘③・・・・この時の様子はどうだったのか?どれくらいの数の牛にどれくらいの症状が出ていたのか? また、何故、検体を採取したのは症状を出している牛だけだったのか?他に、既に治癒した牛がいるかも知れないことを疑い、症状を出していない牛も検体を採取すべきではなかったのか?

 指摘④・・・・3月31日にS農家で、4月9日にM農家で、同じような症状を呈した家畜がいて、口蹄疫を疑う症状では無かったにせよ、家保はその時、「何かあるな?」とどうして疑問に思わなかったのか?

 ・・・・・・・・他にも、様々な指摘があった。


 ※家伝法や防疫マニュアルは、基本的には畜産農家(当事者)や獣医師の倫理・モラル・正義感によって成り立っている。性質上、その倫理・モラル・正義感を疑う法律では無いし、法律違反を徹底的に捜査し厳罰化する法体系でもない。

 そういう部分も今後の課題であろう。


 いずれにしろ、10年前、本県と北海道で発生した口蹄疫。この時は、感染源・感染ルートが結局解明されなかった。この反省に基づき、今回は、国・県・自治体等も協力し、キチンと解明されければならないと考える。そうでなければ、今回の未曾有の被災による多くの犠牲が報われないし、畜産農家さん達の再建への不安は払拭されない。