全国肉牛事業協同組合さん、日本養豚協会さん等からの抗議と謝罪の要求が出された。

 信じられなかった。がっかりした。我々は、日本畜産振興の同志・仲間ではないのか? 仲間が仲間を叩いてどうするのか? 全国肉牛事業者共同組合さんからは、H20年に開催された「20周年記念行事」のとき、出席を依頼され、東京の会場に足を運ばせて頂いたことがある。


 抗議文の中に「口蹄疫発生の初動対策の稚拙さ・・・・・・」とあるが、我々は第一例目が確認された直後、即座に対策本部を立ち上げ、国が示している防疫指針に忠実に従い、迅速に防疫措置に取り組んで来た。恐らく、全国どこの地区で発生してもこの指針に則って防疫措置がなされたであろう。


 厳密に言えば、特に初期の時点で、人と人、人と物との接触感染を防ぐことは極めて困難だと思う。勿論、感染経路の可能性は人・モノ・車両だけではない。小動物、ハエや昆虫、鳥、水、空気、乾いた糞尿が風で飛ばされる等、様々なことが考えられる。それらを完全に封じ込めることが果たして出来ただろうか?

 初期の頃、シャワー施設や消毒資材等が不足していて、一部行き渡らなかったこと等も事実である。農家さん達の相互扶助の意識から、一部農家さん同士の行き来があったのではないかとも言われている。勿論、今後の反省点であるが、そんなことを今、一々論っていたら切りがない。

 

 何しろ、前例の無い前代未聞の事態である。今回、それなりの課題や問題は浮き彫りになった。それは、どこの地区でも同じであっただろう。しかし、それでも、我々は出来うる限り全力で防疫対策を講じてきた。

 専門家の方々は、口々に「児湯地区とえびの地区から出てないことは奇跡に近い。地元の頑張りは凄い」と仰っておられる。

 

 今回、規模が拡大したのは、川南町を中心とした児湯という畜産の密集地帯・大規模・系列的営農地で発生したこと、ウィルスの増殖力が極めて強い豚に感染したこと、防疫指針が大規模・密集地を想定していないものになっていたこと、ウィルスの増殖力が10年前と全く違っていたこと、感染経路や感染源が未だ解明されておらず、その対応に苦慮したこと等が要因として挙げられる。それら複合的原因が重なって我が国で前例の無い規模に膨れあがったと言える。


 種雄牛6頭の移動に関しても、国と十分に協議し、国のご協力・ご指導の下、清浄性・安全性を十二分に確認し、万全を期し、移動させて頂いた。

 49頭に関しては、今回、残念ながら前頭殺処分を余儀なくされた。これに関しても、防疫指針に則り、豚の殺処分・埋設から先に行っていた。

 因みに本日中に、この49頭は殺処分する予定である。


 何度も言うが、我々は、日本畜産振興のための同志・仲間ではないのか? 抗議より、一層の応援やご指導を頂きたいくらいである。

 日本の畜産のために、感染拡大を全力で阻止し、また、日本畜産の財産をも出来る限り守っていくことも同時にやって行かなくてはならない。

 

 とにかく、我々は、発生農場や国や地元自治体、関係団体、県民の皆様等とも一丸となって、口蹄疫をここで封じ込め、一日も早い終息を目標に、県外には絶対に出さないという強い認識のもと一致団結し、地元の農家さん始め関係各位のご協力やご決断も頂いているのだ。同時に本県畜産、とくに畜産の要である、日本一に輝いた宮崎牛の再建への希望の灯を出来るだけ消さないように全力で取り組んできたつもりである。

 そういう意味でも、今回の抗議は誠に残念なことである。

 今は、お互いを叩き合って、犯人捜しなどをしている場合ではない。一刻も早く、拡大を防止し、終息に向け、全国からのご協力やご指導も頂きながら全力を尽くす時期であると考える。

 

 明日、首相が来県される予定らしい。県庁を訪問され、僕や現地対策本部と協議をされ、そのまま東京に帰られるらしい。

 僕との協議に時間を割くくらいだったら、その時間を地元視察に充てて頂けないだろうか? 国の対策本部長として、被害農家や地元自治体関係者等に会って頂きたい。

 時間が無いというのであれば、宮崎空港から児湯地区まで直接、ヘリか何かで移動されればいいのではないだろうか?


 本日までの新たな確認は6例、殺処分対象1,333頭。いずれも児湯地区である。しかし、この1,333頭の大部分はワクチン接種殺処分対象内家畜である。

 昨日の殺処分5,018頭。患畜・疑似患畜とワクチン接種分とを合わせて約28万頭が殺処分対象である。

 昨日までの殺処分完了が112,028頭。天候や移動制限緩和の問題もあるが、ワクチン接種以外の新たな発生を抑え、終息に向かうためには、今週が最大の山場になろう。

 今週は、えびの清浄化とスーパー種牛5頭のことも決着が付く。