何年かぶりに家族旅行をした。家族旅行といっても一泊二日。僕が別府大分マラソンのイベントに呼ばれたので、家族もついでに同伴するというちょっとせこい旅行なのである。それでも、家族旅行のお父さんの大変さをつくづく味わった。空港に夜到着して、死ぬほど重たい荷物を抱え、レンタカーを手配し、夜の見知らぬ道を湯布院まで運転する。運悪く、ナビが壊れていて「1キロ先、左方向!」しか言わない。やっとのことで目的地に到着し、風呂だ食事だとやたらとせわしない。翌日は、朝からイベントの仕事にでかけ、とんぼ帰りで、家族に合流し、高崎山の猿などを見学。ここでは、猿と目と目を合わせてはいけないらしい。こちらがインネンつけてると思うらしい。まるで人間と同じ。それから、ポケットに手を突っ込んではいけないらしい。エサを持ってると勘違いされ襲われるらしい。しかし、間近で見る野生の猿群は迫力があって、圧倒される。目を合わさないように、背を丸め伏し目がちに歩いていると、意地悪にわざとのぞきこんでくる猿がいたりする。人間にもこういうのがいる。ふとした隙に一匹の大きな猿と目と目が合ってしまった。「しまった!」と思ったときは遅かった。なぜか目線を外せない。彼・彼女? も僕をじっとにらんでいる。「やばっ!」そう思ったとき、その猿がひょいと僕の目の前に飛んできた。襲われるかなと思い、とっさに身構えた。すると何と、おもむろに、持ってたエサを僕にくれたのだ。「?」一体どういうこと? 係員に聞くと、この時期、猿は恋愛シーズンで、「もしかして、求愛されたのかも知れませんね?」だって。振り返るとさっきの猿がまたこっちを見つめていた。