ちょっと前の話になるが、去年の大晦日、話題の「猪木BOM-BA―YE」を観戦した。浅草キッドにお願いして席を取ってもらったのだが、それが凄い席で、何とリングサイドなのだ。アリーナ席より前、完全に関係者席。僕達の前にはリングしかないという席なのだ。こんな席が、それも急に頼んで取れるとは、一体浅草キッドって何者なのだろう? 僕らの真反対では、古館アナが実況をしている。青コーナーの選手は入場の際、僕らの直ぐ目の前を通るのだ。当然、カメラに僕らも映り込んでしまう。その夜、同じ時間帯で録画の裏番組に出演していた僕は、できるだけカメラに映り込まないように、時には帽子で顔を隠しながら、時には僕だと分からないように顔の表情を変えながら観戦していた。僕らの業界では、同じ時間帯の裏表の番組には出演しない紳士協定があるからだ。その内、猪木さんがリング上で、脛(すね)相撲というアトラクションを始めた。それにチャレンジする人を募っていて、何と僕が指名されたのだ。リングに上がると言う事は、当然テレビに映る。しかし、猪木さんに指名されれば上がらない訳には行かない。仕方なく、破れかぶれでリングに上がった。神聖なリングに上がったのは初めてである。埼玉アリーナ満杯の4万人の大観衆。「血湧き肉踊る」とはまさしくこのこと。すっかり興奮した僕は、上半身裸になり、猪木さんと脛相撲。脛を合わせたかなと思った瞬間、突然、頬にビンタを食らった。興奮しているせいか痛く無く、それどころか何故か幸せな気分になった。もう裏番組のことなどすっかり忘れ、思わず「ありがとうございました!」と小躍りしていた。