先日、『鳥肌実』という知る人ぞ知る超過激芸人を観に行った。彼がやるのは政治思想的パフォーマンスで、過激なアジテーションがネタになっているのだ。思想結社の宣伝カーよろしく、だみ声でぶつ演説(ネタ)には迫力があり、何とも言えない風刺とユーモアがある。チャップリンの映画、『独裁者』を彷彿させる衣装に、情けないほど小柄で小心者の雰囲気。しかし、思想的には、極めて右派で、そのアンバランスさが堪らない。これまで、深夜のテレビに何度か出演したことがあるが、いずれも放送禁止で全面カット。一度など生放送中、ネタの途中で、放送中止命令が出され、急にCMに切り替わったことがあった。そんな彼の夢は政権放送に出ることらしい。ネタの内容には、方々の各種団体から、正式にクレームが付けられ、彼曰く「そろそろ命が危ない」らしい。次の演説会を武道館でやりたかったらしいが、武道館側に断られたそうだ。それでも、彼はめげない。そのアナ―キーな姿勢が、一部のコアーな若者に受けているのだ。その証拠に日比谷野音が六千人の観客で超満である。中には子供連れで来ている家族もあり、どうなってんだか? 彼が放つ「一億火の玉、大和魂、本土決戦、欲しがりません勝つまでは」等の絶叫に、若者が熱狂する。ちょっと異様な光景である。一緒に行った、高田文夫先生、水道橋博士共々目が点。僕らを案内してくれた、元ニュースステーションのお天気お姉さんの乾さんは、腹抱えて大爆笑。続けて、現在上映中の映画『パールハーバー』内での大日本帝国海軍の活躍の様子を、館内で直立不動、最敬礼のもと、拝観したという一連のネタは秀逸だった。思わず、気をつけ、敬礼をしていた僕だった。