【修学旅行誘致のためにも平和祈念施設の充実を】 先日宮崎県は、教育旅行(修学旅行のこと)の受け入れのための官民挙げた組織を立ち上げた。私は過剰な誘致政策には疑問は持っているが、修学旅行は昨今の大規模団体旅行(社員旅行など)減少傾向の中では、大きなマーケットであり子供のとき宮崎に来てもらうことは恒久的な知名度アップにもつながるので、推進する意味はあると思う。 確かに最近は“体験型観光”が重視され、それへの新たな取り組みが求められている。しかし旅行会社の担当者などに聞くと、修学旅行においてはそれ以前に「自主研修」と「平和学習」が極めて重要な要素として求められるのだそうだ。「自主研修」については修学旅行を扱う旅行代理店向けに「GoGoみやざきフリーきっぷ」という宮崎交通の路線バスが市内中心部のバスが格安で乗車できるチケットを300円で発売している。(一般販売はしていない)確かに路面電車や循環バスもなく使いにくい難点はあるが、手当はしている。 しかし宮崎には「平和学習」が出来る施設はない。確かにその名も「平和の塔」もあるが、やはりいくら戦後は平和のシンボルとしての存在になったとはいえ「八紘一宇」(はっこういちう:「八紘」は四方と四隅つまり世界。「宇」は屋根や家という意味。もともとは神武天皇が美々津からお船出をして大和橿原宮に即位したときに述べたとされる言葉。天皇陛下の元に世界を平和にする、という解釈で「大東亜共栄圏」などとともに戦時下で国威発揚に使われた言葉)という言葉が刻んであることも考えると、これを平和学習の場として利用するのは現実問題難しいだろう。 九州の修学旅行で鹿児島や長崎が強いのは、やはり平和学習が出来る場があるということは大きな要素だ。我々の同世代であれば、小学校で鹿児島の知覧、中学校で長崎の原爆資料館を修学旅行で見学した方も多いはずである。特に「知覧特攻平和会館」は特攻隊員の顔写真や絶筆などが並び、涙なくしてみることのできない“平和”を考えるには格好の施設である。つまり平和学習の重要性などを考えると、やはりいま宮崎に修学旅行に来ても知覧を含めた移動となり、移動距離などを勘案すると敬遠される可能性が高い状態となっている。 私はその意味でも、宮崎にもそのような“平和”を考える施設が必要だと考えている。宮崎空港が戦前は軍事基地だったことはご存じだろうか。宮崎空港は旧海軍赤江飛行場、宮崎海軍航空隊基地であり、「日本防衛の南九州最大の航空基地として、陸海軍共同作戦を含む数多くの戦闘作戦に、特別攻撃隊及び雷撃隊出撃の基地となって、大東亜戦の戦史に残る偉跡の地である。」(宮崎海軍航空隊鎮魂碑碑文より)この飛行場からは、3人乗りの陸上爆撃機「銀河」が爆弾を積んで体当たり攻撃する「銀河隊」や「雷撃隊」(魚雷で攻撃する部隊)が出撃。1945年3月~5月まで48機142が飛び立ち、南海に散っていった。 宮崎空港側にこの戦没者を祀る慰霊碑がある。そこには墓碑銘や遺詠が残されている。(その中で私は特に大沼嘉朗氏(海軍予科練出身)の「とつくにの空を旅するもろ人を飛雲にのりてまもる観音」という歌が印象に残っている)他にも多くの石碑が並ぶ荘厳な場所である。また、ここは行かれたことがなくても写真のような塹壕をご覧になったことはないだろうか。これは一ッ葉有料道路・南線から空港を眺めると見えるものだ。これも旧海軍が敵機来襲のとき戦闘機を隠すのに使用したものだ。 私は、宮崎にも特攻隊や雷撃隊が出征し散っていったことを周知し、平和を考えることの出来る施設を建設する必要があると考えている。海軍としての飛行場の規模や散っていった人々の人数などを考えても、宮崎でもそのような施設を建設する価値は十分あると思う。散逸した資料や情報の収集などの課題もあるが、経験者の方々もまだ生存されている方も多くいまなら間に合うのではないだろうか。そしてその施設があれば、宮崎でも知覧のような「平和学習」が可能になり、修学旅行の幅も大きく広がるのではないだろうか。 もちろんこのような施設は、修学旅行生だけでなく、団体旅行や個人旅行者。そしてもちろん市民県民一人ひとりも、何気なく利用している宮崎空港からもこのような歴史があったこと、そして平和の意味を感じることができるのではないだろうか。宮崎から散った先人達の歴史を後世に語り継ぐためにも、修学旅行誘致のためにも、この施設の必要性、重要性について真剣に考える必要があると思う。(2004.6.6) バックナンバーはホームページhttp://stakei.fc2web.comで見ることができます。 *********************************** 武井俊輔(Syunsuke Takei) ◇メールマガジンの購読・中止はこちら◇ Home: syunsuke@usagi.made.ne.jp URL: http://stakei.fc2web.com/ From Inokashira Tokyo ***********************************---