【“ご当地グルメ”を生み出すために】
たまに栃木県の宇都宮市にいく機会がある。宇都宮は「餃子の街」としてPRしていて 私も行くと必ず餃子を食べることにしている。ただ確かに味はおいしいのだが、そんな に飛び抜けておいしい、という程ではない。宮崎でも持ち帰りを中心に多店舗展開して いる餃子チェーンがあるが「それを買って自宅で焼いたものの方がうまいんじゃない か?」と思うようなものもある。しかしそれでも宇都宮は「餃子の街」なのだ。
このような食べ物を「ご当地グルメ」というのが最近一般的になってきた。「ご当地グルメ」 と「名物」の違いはなかなか難しいのだが、私なりに分析すると名物は地元特産の食材 をメインにしたもので結構歴史的に食べられてきたもので、価格帯は普通~高級といった 分類ができる。これに対しご当地グルメは“こじつけ”は別にして、地元の食材であるか どうかはあまり関係がない。むしろ高校生などから自然発生的に生まれてきたものが 多い。さらに価格帯は安い~普通で地元の人達も日常的に食べているもの、と分類して よいと思う。
その概念に当てはめると、名物といえるものは大分の関サバ、下関のふぐ(現地では “ふく”という)、熊本の馬刺、宮崎でいえば延岡のメヒカリ、門川の金鱧(はも)、宮崎牛 や日向かぼちゃもその中に入れても良いだろう。それに引き替えご当地グルメの代表は 博多、喜多方(福島)、和歌山、札幌、佐野(栃木)など全国各地のラーメン、名古屋の みそかつ、福井や駒ヶ根(長野)のソースカツ丼、小倉の焼きうどんに富士宮の焼きそば、 佐世保のハンバーガー、デザート系ではあるが鹿児島の「白クマ」もその仲間に入れら れるだろう。
これらご当地グルメにはどの程度地域活性化の効果があるのだろうか。確たるデータは ないのだが、各地域ではそれぞれ「名店マップ」などを作ったりして、特に宇都宮のような 歴史的遺跡や観光施設に乏しい地方都市においては観光の核にもなっている。また、 そのノウハウを持って全国にフランチャイズ展開する地場企業も生まれてくる。(私の大学 のそばにも地元資本の「名古屋のみそかつの店」「福井のソースカツ丼の店」などが 相次いで進出してきている。
ご当地グルメの成功しているもの、特にここ最近売り出し始めたものを見てみると次のよう なことがいえる。以下が私が考える「ご当地グルメ成功のための10か条」だ。
1 地域にコーディネータ的なまとめ役がいる。 2 もともと地元に愛されている店が数店舗はある。 3 アピールするのに何らかのこじつけではできる。 4 酒のつまみなどではなく“ご飯”ないしは“おかず”であり、あまり好き嫌いのないもの。 5 自宅でも調理、ないしは持ち帰りなどができ「各家庭の味」を持つことができる。 6 価格が安い。少なくともサラリーマンが昼休みに食べられるような価格帯。 7 市長や市職員も含め名刺に使用したり、懇親会で県外客にPRするなどする。 8 統一したロゴ、キャッチフレーズを策定しイメージの統一を図る。 9 分かりやすいマップなどを作成する。 10 登録商標は、一店舗で管理するのではなく団体で管理する。
1がまず成功の鍵で、自分の店が流行ればという枠を超えて街を盛り上げる、という観点で 同業者などをまとめたり、比較可能な程度に内容を揃えるなどができる“カリスマ”の存在が 不可欠だ。2は結局はやはり根も葉もないと難しいということで、まったく脈略がないと、いくら それをPR使用としても市民から「なんで?」といわれて盛り上がらない結果になってしまう。 3は例えば宇都宮の餃子は、宇都宮市の職員がなにか街をPRできるものがないかと考えた とき、いろいろ調べると「餃子の消費量が日本一」ということが分かり、よく考えると流行って いて「これはイケル!」ということではやり始めたそうで、何らかのこじつけでも一応理由が 付けられるということだ。4は老若男女等しく楽しめること、特に子供も大好きで、幅広く みんなが楽しめるものである必要がある。いわゆる“珍味”では難しいということだ。5は要は あまり難しい流儀がなく、誰でも“自己流”が持てることだ。つまり高級食材を使うのではなく、 スーパーで買えるものですべて完成できなければならない。6は、やはり「地元の市民に愛さ れるものでなければダメ」ということで気軽に市民同士で食べられるもの、つまり価格が安い ものということだ。7は市長以下が自信を持ってPRしなければならない、ということだ。コン ベンションのビュッフェ形式の懇親会などに出たり手伝ったりすると、高級食材はよく並ぶ (宮崎であればシェフがその場で焼く宮崎牛のステーキなど)が、そのような場