昨今、異常なまでのペットブームである。僕がよくジョギングする駒沢公園も、天気の良い午後など、まるでペットの大品評会である。多くのペット自慢が愛ペットの散歩に集う。とにかく色んな種類の犬や猫。どれもこれも高級ペットばかりで、野良犬や野良猫は、遠くの木陰から羨ましそうにながめている。ペットの中には犬や猫だけでなくトカゲや蛇などもいたりする。時々、肩に鷹を乗っけた人もいる。まるで鷹匠だ。この鷹が登場すると、鷹を天敵にしているカラスが急に大人しくなるのには助かる。先日、ジョッグの途中、ベンチで休んでいた。すると、見知らぬ中年の女性が高級そうな犬を連れ、僕に近づいて来た。そして「ちょっとすみませんが、このワンちゃんをちょっとの間だけ、みていて下さらない?」と言い、毛並みの良い小型犬を、僕に勝手に預けてどこかへ行ってしまった。トイレに行ったのかな? と思って、僕はその小型犬をしばらく抱いて待っていた。その犬はとても可愛らしい目で僕をじっと見つめていた。まるで「どうする~アイフル~」のCMのように。それくらい可愛かった。しかし、主人の女性が中々帰って来ない。30分くらい経ったであろうか、その女性が遠くから走って来た。そして驚いたことに僕らの前で突然泣き崩れたのだ。「チーコ! ごめんね! やっぱり私は貴方を捨てられないわ!」 彼女はこの犬を捨てようと思っていたのだ。彼女は僕の腕から、チーコを引っ手繰ると、礼も言わずつかつかと去って行った。遠ざかりながら、チーコがずっと僕を見つめていた。僕の頭の中には「どうする~ アイフル~」の音楽がずっと流れていた。