13分35秒。信じられないタイムだった。これまでで最低のタイム。去年の秋の感謝祭より30秒も遅く、今年の春の最低より10秒も遅かった。原因が分からない。9月28日(火)、赤坂御所の1周3・3km、激しいアップダウンコース(TBSの坂を想定して)で、それまでの自己ベストを約1分縮めた。12分08秒。
 3・3kmを12分08秒で走れる人間が、どうして3・4kmを13分35秒もかかるのだろう? 全くもって理解出来ない。走り終わったとき、時計を見た瞬間、そこに刻まれているタイムに我が目を疑った。
 TBS感謝祭のときはいつもそうなのだが、何か身体がだるい。力が入らないのだ。土曜日のレースも、2周目から何だか身体全体がだるくなって、西野君と谷川さんの姿がじりっじりっと小さく遠くになって行くのが分かるのだが、身体が前に進まないし、食らい付いて行こうという気力も沸かなかった。心のどこかに無意識に「こんなもんでいいかな~」と半分諦めている自分がいたような気がする。しかし今回、西野君と谷川さんは速かった。前回より30秒くらいタイムを縮めていた。僕もそのはずだったのに・・・・・・・・
 この日のために、あるいは丹後60kmのために半年間ずっと走りこんできた。仕上がりも上々だった。なのに何故?
 確かに精神的にかなり落ち込んでいた。60kmの後遺症もあったかも知れない。感謝祭のレースは、いつもネックになるのだが、アップの時間が極端に短い(僕は普段、タイムをやるときは、5~6kmジョッグを十分やってから、タイムに入る)など、いろいろ原因は考えられるが、それにしても去年から30秒、今年の春の感謝祭より10秒も遅いというのは解せない。一体何が悪かったのだろう? やはりメンタル面か。
 確かにどこかぼうっとしていたと思う。その証拠に最初の1周目、時計をチェックするのを忘れていた。走りながら、時々、安ゴン(安原)のことをぼんやり考えていた。この半年、このレースを目標に頑張っていたことは彼が一番良く知っていた。大阪などでは、新幹線の駅から局まで走った。大阪泊まりのときは、仕事が終わってから淀川を20km走った。宮崎を何回走ったか。
 しかし、その集大成ともいうべく目標としていたこのレースを彼は見れない。今、彼は冷たい部屋の中で一体どんな気持ちなのだろう? さぞ悔しい思いをしているのだろうな~? などとぼんやり考えていた。走っている途中で、今回の事件に対する無念と残念、「何でそんな馬鹿なことをしでかしたんだ」という彼に対する怒りや情けなさ、彼の行動を逸早く察知し、それを是正・矯正できなかった自分の無力に対する遣り切れない気持ち等等が綯い交ぜになり、思わず込み上げて来る瞬間もあった。
 そんなことを漠然と考えながら、ずるずると下がり、いつのまにか何もないレースが終わっていた。まるで自分がこの世に存在していないようにレースは終わった。
 「東さん、あのことはあのこと、今はレースに集中してください。皆に迷惑がかかると思います」という唯是君の僕を見るに見かねた叱咤に、ちょっと目が覚め、最後の駅伝の1周(1km)は気合を入れて走った。タイムは3分35秒。一緒に走った森脇君は最後の坂で思わず苦しみに歪んだ声を出していた。そして、走った後、死にそうに倒れこんでいたが、僕は同じペースで後1周行けそうだった。
 僕は思う。また頑張ろうと思う。また一からやり直そうと、そう思う。昨日の夜はへこんだ。渋井さんは、大阪女子国際の惨敗の後、2ヶ月間人に会いたくなかったらしい。気持ちは痛いほど分かる。僕は、正直言ってまだへこんでいる。今日までへこみ倒そうと思っている。でも、いつまでもへこんでなんかいられない。時間は確実に進む。僕等には平等に明日がある。「がしがし」生きて行かなければならない明日がある。
 今日、早稲田競争部監督の渡辺君に電話した。早稲田の練習メニューの内容を聞いた。そのハードに驚いた。そういえば、土曜日の感謝祭で一般男子スタートで2位に入った佐野君という役者さん(おそらく金八先生に出演)が、僕にそっと寄って来て「東さん、卑怯だと思ったのですが、いつもHPの日記を読ませて頂いて、練習しました」と言って来た。HPを見ることが別に卑怯でもなんでもない。公表していることだから。しかし、彼のような実直な好青年も、この日記を見てくれているのだ。また、頑張らなければ。そして、こつこつと冬を積み重ねなければ、春はやって来ない。
 感謝祭が終わって、地下の駐車場で、金八先生が声をかけて下さった。その瞬間、金八先生の昔の言葉が一瞬脳裏に浮かんだ。「大きな志を持つものは、小さな屈辱に耐えよ。耐えられるはず」これは、父親が殺人を犯した生徒(確か、近藤真彦氏が演じていた)に投げかけた先生の言葉だった。そして、もう一つ「どんなに頑張っても駄目なときは駄目。しかし、それでも諦めずに7回挑戦しろ」・・・・・僕はまだ4回しか挑戦していない。