今回はマジシャン特集ということで、僕は、今ちまたで話題の天才子供マジシャン、『山上兄弟』を東京プリンスホテル鳳凰の間に観に行った。なにせ東京プリンス鳳凰の間である。ここはあの有名な「東スポ映画祭」が行われる伝統と由緒あるセレモニールームなのだ。勿論、僕はここでショーなんかやったことなど無い。この時点でもう負けている。そこでディナーならぬ、子供らしくランチ付きのショーをさらりとやってのけるのだ。末恐ろしい兄弟であるのだ。ランチを食べてイリュージョンを楽しむ、そんな完璧なイベントに、子供の日ということもあってか、約400名の子供連れの家族が訪れていた。『山上兄弟』とは、マジシャン北見マキ氏のご子息で、6歳と7歳の男兄弟なのだ。僕自身、北見氏とは、その昔(ツーツーレロレロの頃)浅草演芸場で一緒の舞台を踏んでいたことがある。日本奇術協会長の北見伸師匠の愛弟子で、今は世界を又にかけ活躍しているマジシャンである。氏に聞く所によると、マジックができる、つまり観客の目の錯覚を利用して不思議な世界を繰り広げるということを認識・理解できる歳が5歳~6歳からなのだそうだ。それ以下になってしまうと、マジックという概念が理解できず、平気でタネをばらしてしまうらしいのだ。つまり、人がマジックをできる最年少の限界が『山上兄弟』だという訳である。今、それをギネスに申請しているのだそうだが、これが通れば、恐らくこの記録を破れるものは現代の人類にはいないということになる。考えて見ると子供の頃マジックは夢だった。憧れだった。人は一度は空を飛びたいと思い、空中に浮きたいと思った。オウムの麻原尊師は実はマジシャンになりたかったのだと思う。そして、マジックの原型が魔法使いであり、アニメのドラえもんである。「どこでもドア」や「仲直り棒」などがマジックの応用であり原点でもあるのだ。人はマジックに魅了される動物だ。一瞬にして人が消えてしまう現象に感動し、自分も一度消えてしまいたい、誰かを消してしまいたいと強く思うのだ。僕は、これまでの人生で何度消えてしまいたいと思ったことか……ガキの頃、万引きをし、店員と目と目が合った時、カミさんにオイタがばれた時、謹慎をくらった時等々………うぅぅぅ、もしあの時自分を消す事ができたら……「穴があったら入りたい」という言葉の表象がマジックなのだ。浮気がばれた亭主が奥さんの前で、自ら大きな布を取りだし、それを目の前でヒラヒラさせ、一瞬のうちに自分の姿を消す。まさしくドリームだ! その夢を叶えてくれるのがマジック(イリュージョン)なのだ。こんな世知辛い世の中だからこそ、時代はまさに超常現象を標榜しているのだ。それを叶えてくれる世界最年少のマジシャン『山上兄弟』、ブラボー! そして、時代のもう一つのキーワードは「キッズ」である。時代は少子高齢化。これからは子供(キッズ)がポイントになる時代なのだ。芸能界では、大活躍のミニモニやえなりかずき君。歌舞伎の子役、スポーツも野球のリトルリーグやサッカーの12歳以下の部などは、世界トップである。実際、子供で博士もいるし、株を動かすディーラーもいる。僕はこれからはもっともっと様々な分野に日本のキッズが進出して行くような気がする。例えば、子供の起業家(社長)が現れてもいいだろう。子供のシェフなんてどうだ? 子供の格闘家、子供のサラリーマン、子供の親分。子供の気象予報士、子供の弁護士。子供のリストラオヤジ、子供のテリー伊藤、子供の長寿日本一、って訳わかんない! とにかく、社会でキッズが重要な役割を担う時代が到来しようとしている。そう言えば、浅草キッドも名前はキッズである。もしかすると彼らの時代も、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。話は大分脇道に逸れたが、時代の重要なキーワードの「マジック(イリュージョン)」と「キッズ」、この二つを併せ持った『山上兄弟』は最強であると言わざるを得ない。その舞台での威風堂々たる態度、鮮やかなテクニック、愛嬌、スター性、どれをとっても大人を凌駕している。全く末恐ろしいキッズが登場してきたものだ。この歳からあんなに鮮やかにマジックをこなしていたら、将来は一体どうなるのだろう? きっと、何でも消せるようになる。憎い奴、ライバル、ニキビ、デヴィ夫人、月、地球、病巣、記憶、過去、思い出……ありとあらゆる物を消せるのだ。そうなると、何かを消したい人からの依頼が殺到し、キリスト、サイババに次ぐ山上兄弟伝説が始まるのだ。