地中海沿岸に栄華を誇ったカルタゴは、古代ローマによる数次にわたる攻撃で滅亡した。アッシリアが滅び、ペルシャ、マケドニア、そしてカルタゴ。この後、ローマ帝国も4世紀末に東西に分裂し、西ローマは476年に滅亡したーーーまさに、盛者必衰。覇を唱え、世にときめく者も国も、いつかは黄昏を迎えるーーー22日(火)TBSの特番を収録した後、オフィス北野の新年会。訳あって(その原因は僕なんだけど)ここ数年新年会は開かれなかった。久々の顔、勢ぞろい。ラッシャーと松尾はいなかったが、殆どのメンバーが揃って、旧交を暖め合った。普段あんまり会えない柳ゆうれいや義太夫君、らっきょ・・・・・・・しかし、たけし軍団も、辞めていった人間を含めて、述べで計算すると、恐らく200人を超える。 思えば、多くの人間がうちに来て、僕らと本人の人生の歴史に思い出を刻んで行った。 そう考えると、感慨もひとしお。 直ぐに辞めるだろうと思っていた人間が辞めず、絶対辞めないだろうと思っていた奴が案外あっさり辞めて行った。 ワインを呑みながら、いつのまにかこれまでの一人一人のメンバーの顔を思い出し、それぞれに纏わるエピソードを思いだしていた。 浅草キッドなんかは、どちらかと言うと、直ぐ辞めそうだった。が、今や、うちのエースに成長した。その小野ももう40歳と聞き、ちょっとビックリ! 師匠のマネージャーのイヨリ(イヨリは、うちに入社した頃、僕のマネージャーで、僕は彼をジュニアと呼んでいる。早稲田出身で、当時早稲田で唯一モヒカンだった男である)が「東さん、懸案の『小説たけし学校』書かないんですか?」なんて聞いて来る。一時書こうかなと思ってアクションを起こしたが、色々な制約や縛りが生じて、なかなか自分が表現したいまま上梓できないという懸念があって自分の中で頓挫させてしまっていた。書きたいことをありのままに書けないのなら書いたってしょうがない、そんな叔思いだった・・・・・・・・・・僕がダンカンに「たけし軍団の衰退は、俺と、君が極対、二項対立にあったことが原因だと思う」と心境を吐露すると、ダンカンが「確かにそう思う。でも、僕は何度か東君に一緒にやろうと提案したけど、断られたんだよ」だって・・・・・・俺が断ったのかよ! って自分に突っ込む。あまり記憶にないが、確かに、あの頃(10年~15年前)、軍団のぬるまゆ体質(寄らば大樹の陰ーー師匠にくっ付いていれば、何とかなる的なーーーどこか甘っちょろい体質)が嫌だった。それに、後輩が何人も支えていて、僕らが上にいつまでも君臨していると、下の連中に中々チャンスが回らないだろうという配慮等、様々な理由で僕は、一旦軍団と距離を置き、彼とコラボレートすることはついぞ無かった。そう言う事に関してもざっくばらんに話せる今回の新年会は実に有意義なものであった。 最後に師匠が、「将来は、沖縄に土地でも買って、皆で住もうか?」なんてさりげなく言う。 ユートピア思想。 武者小路実篤は、20世紀初頭、宮崎に「新しき村」を創った。人道主義の実践から自由恋愛を提唱したら、何と奥さんが自由恋愛してしまい、村は崩壊した。 井上ひさし氏は、『ひょうっこりひょうたん島』で、氏独特のユートピア思想を発し、『キリキリ人(国)』で文学化した。その昔から、多くの民が、ユートピア思想を実践し、理想の社会・共同体を目指し、幸福のあり方を模索して来た。 人間は自分の死期さえ分からない不確定性に満ちた存在である。しかし、人は『脳化』している。脳化とは、ああすればこうなると理屈を考えること。すべてが意識のもとにコントロール可能だと思いたがる。しかし、何度も言うように、人間は不確かな生物である。ある程度、歳を重ねると、その不確かさを実感し、不確かな自然の世界が最も暮らしやすいと五感で感じとるようになる。それは、同時に死期を感じとっていることでもある。 アッシリアが、ペルシャが、そしてカルタゴが滅亡したように、我々もいつかは人生の黄昏を迎えるーーー回生ーーーそれまで、いかに我々が、人間として成長し、内発的発展に努めるかが、いつかのユートピア建設への最大の課題であろう・・・・・・・なんて考えていたら、飲み会終わっちゃった。