先日、小雪がちらつく中、都内某所を車で走っていた。ふと歩道を見ると、こんな寒い中、必死に走っている物好きなランナーがいる。毛糸の帽子を被り、何やら真剣な表情である。見ると、何と、あのK-1中量級日本チャンピオンの、魔沙斗選手であった。それは、まるで缶コーヒーのCMで、雨の中を走っている新庄のようだった。つい先日、キックボクシングの竹田選手を破って、再度日本チャンピオンになったばかりだと言うのに、もうトレーニングを始めているのだ。それもこんな天気の日に……魔沙斗選手とは、今年の正月、日テレの正月特番で一緒に走った。僕は、これまで多くの現役スポーツ選手と走った経験を持つ。中・長距離を走らせたら、格闘家の中ではボクシング現役世界チャンプが最も速い。その中でも一際速いという薬師寺選手や、飯田選手、畑山選手というそうそうたるメンバーと走った。手前味噌で大変申し訳無いが、そのいずれの選手よりも長距離では僕の方が速かった。これは、密かに僕の自慢でもあった。しかし、今年の正月、初めて負けた。それが魔沙斗選手だった。彼は、アップダウンの激しいトリッキーなコース約2kmを、何と6分40秒で走って来たのだ。1km、3分20秒。これは、女子マラソンのトップランナーのスピードである。タイムにして、僕より、約10秒速いのだ。これには正直驚いた。70kgの体重で、このタイムは凄い。その時から僕の中では、魔沙斗選手が目標になった。勿論、走りだけの目標である……しかし、小雪の中の真剣な魔沙斗選手を見たら、「こりゃ、敵わないな~」とちょっと弱気になったのだった。