【「宮崎にはない」という“飢え”を解消するために】
先日宮崎から友人が上京して、新宿・渋谷などを案内した。そして1泊2日の滞在の間に 3度も行ったのが「スターバックスコーヒー」だった。確かにコーヒーも上質で高級感があり、 全面禁煙なども魅力的なのだが、友人がそこに興味を持った最大の理由は「宮崎に はない」ということだった。
確かに宮崎はマーケット規模の関係か、このような全国フランチャイズ店舗の進出は概して 遅い。マクドナルドやローソンはコマーシャルはあるものの宮崎県内には店舗がないという 時代が長く続いた。吉野家なども出店は全国でも最も遅い部類である。例えばスター バックスコーヒーにしても宮崎以外で県内に店舗がない“空白県”は青森、山形、島根、 鳥取、徳島、高知、の5県だけで九州では宮崎だけだ。同じコーヒーでいえばスターバックス よりも格安な「ドトールコーヒー」というコーヒーチェーンがあるが、これも全国で空白県は宮崎 以外では徳島や島根の2県しかない。宮崎県よりも人口の少ない県が10県あるが、その中 でも福井、佐賀、山梨、和歌山、富山にはこのような店舗も揃っている。確かに経済力という 意味では単純に人口では割りきれないが、やはりこのような「全国にある○○がない」という のは、民放が2チャンネルしかないことと並んで、宮崎の若者が宮崎に“飢え”を感じる 理由であるし、東京や福岡への過度のあこがれを生んでしまう要因だと思う。
また県外から宮崎に移住した方や赴任された方が必ずといっていいほど口にするの が、「専門書のある書店がない」ということだ。ここに文化的“飢え”がある。もちろん 雑誌や文庫を買うことのできる書店はあるし、明るい雰囲気で私も気に入っている書店も ある。しかしここで述べているのは業界大手の「紀伊国屋書店」「丸善」「八重洲ブックセンター」 「ジュンク堂書店」「リブロ」といった専門書も幅広く扱う書店のことだ。 昨今いわゆるこのような大手による「巨大書店」が増えている。福岡は業界最大手の 紀伊国屋書店が4店舗展開しているのを始め、上記の大手はすべて進出している。また、 紀伊国屋書店が長崎、熊本、鹿児島に、神戸市が地盤で最近首都圏に積極的に進出 しているジュンク堂書店が大分、鹿児島に出店している。これも空白地は宮崎以外では 福岡が日常生活圏といえる佐賀だけだ。経済産業省の「平成14年 品目別事業所数」に よると「書籍・雑誌小売業」の事業者数は全国で38位の682件、九州では宮崎より下は、 これも佐賀だけだ 話をコーヒーショップに戻すと、その上で宮崎を見ると「タリーズコーヒー」が中心市街地に 2店舗ある。オープンしたときは非常に話題性が高く、若者には非常に受けている。街に彩りを 添えており、タリーズがあることは意味があることだと思う。 私はこのようなコーヒーショップ(特にスターバックスコーヒーなど)や紀伊国屋書店のような大手 書店は街の魅力アップに欠かせないツール(道具)だと思っている。このような魅力の高い全国 チェーンの中心市街地への進出には当初の入居に掛かる経費を一部補填するなどしてでも、 行政が積極的に誘致をするべきだと思う。それでも赤字を補填するなどは際限がなくなるの で避けるべきだが、行政として中心市街地にそのような店舗を迎え入れたい、という姿勢を示す べきだと思う。
来月のイオン進出に対し、中心市街地の空洞化が大いに懸念されている。確かにバリア フリーなどの進歩したイオンが魅力的なのは理解できる。しかし、東京で毎日電車に乗って、 街を歩いて思うのだが、やはり“多くの人がいる公共空間”が社会性を磨く場所として必要だと 思う。駄菓子屋もなくなりコンビニになり“会話”を交わす場所はどんどんなくなっている。 2月に雑誌「SPA!」で「いま地方都市で凶悪犯罪が多発するのはなぜか」という特集があった が、10年前と比較した「重要窃盗犯」(ピッキングや侵入盗や自動車盗、ひったくり、すりなど) 全国平均をみると、1992年は248.6だが、2002年は375.5。32都府県で10年前より多くなっている。 (「朝日新聞 新年特集号」 2004.1.3) このように犯罪が地方化していくことに、地方での人間関係が希薄になっていることが挙げら れる。私は人と人とが触れあう場としての中心市街地の意義は高いと思う。その観点から 中心市街地の崩壊は避けなければならない喫緊の課題であると思う。私は公共交通の 重要性も常に考えているが、公共交通にしても市街地がなければ成り立たない。イオンは交通 弱者には決して暖かいとはいえない。 もちろんイオン問題での各種アンケートなどで、市民の中心市街地への理解や支持が得られて いなかったことは事実だった。ただイオン