北野監督の最新作「Dolls」を観た。公開初日の初回、出演者並びに監督の舞台挨拶がある回を拝見させてもらった。「Dolls」は、これまでの監督の作品とは全体の色調が異なり、まさに新境地の開拓である。これまで監督の作品は、青を基調とし、世界では「北野ブルー」と言われ、高く評価されて来た。それが今回の作品は四季折々の風景が実に色鮮やかに描かれている。これまでの作風をぶち壊す新しい試みなのか、はたまた師匠特有の気まぐれや単なる思いつきなのか? 分からないが、とにかく映像は綺麗だった。僕は、監督の作品に対する感想を口にして、これまで何度となくしくじっている。ベネチア映画祭グランプリの「Hanabi」の時など、「最後のシーンに出て来る少女は余計だったんじゃないですかね~」と感想を述べた。ところが、実はその少女が監督の愛娘(小さい頃に会ったっきりだったので分からなかった)で、周りの空気を硬直させてしまった経験がある。初監督作品の「その男凶暴につき」では、主演(師匠)の刑事が意味も無くずっと歩き続けるシーンがあった。「こんな長い歩きのシーンは不自然ですよ。まるで上映時間の尺が足りなくなって、それを埋めるために伸ばしたみたいですよ…」とギャグのつもりで言ったら、「図星だよ! ばかやろう!」と返され、大変な顰蹙をかってしまった。で、今回も映画に関しては多くを語らないでおきたい。只、僕なりに感じたこの作品の主題は、「恋人や夫婦に見る男女間の深い絆(繋がれた紐に象徴された)」並びに「人は皆、人知の及ばない何かに操られ、生かされている人形(Doll)のようなものである」である。とにかく一度ご覧あれ!