2021ー記述15
28歳、女性
特に誘因なく手足に掻痒を伴う腫脹が出現
抗ヒスタミン薬、ストロンゲストクラスのステロイド外用薬は改善なし
1週後に38.5度の発熱、両手腫脹、紅斑、水疱を伴い、
頸部〜躯幹、四肢にびまん性に散発し融合する紅斑が出現
PSL20mg3日間内服し速やかに改善、PSLは1週間で漸減終了したが微熱が持続。
1ヶ月後、特に誘因なく同様の皮疹が再燃。
以前から子宮内膜症に対して内服していた合成プロゲステロン製剤による薬疹を疑い、同薬を中止したところ速やかに改善。解熱した。
同薬のDLSTはS.I値256%だった
その後、合成プロゲステロン製剤は再開しなかったが、1ヶ月後に同様の皮疹が再燃。
診断確定のため、(エストロゲン)と(プロゲステロン)に対する皮内反応を行うこととした。
Autoimmune progesterone dermatitis (APD)
・外因性・内因性プロゲステロンに対するアレルギー反応
・I型,IV型アレルギーのほか多彩な病態が関与
・紅斑,蕁麻疹,喘息やアナフィラキシーなどの多様な臨床像
・近年は progestogen hypersensitivity とも報告される.
・妊娠で悪化し、閉経で改善する
・現時点で治療法は確立されていない.
抗アレルギー薬、PSL内服、結合型エストロゲンやアンドロゲン内服
蕁麻疹型、アナフィラキシー型にはオマリズマブなど
・プロゲステロンに対する減感作療法が有効との報告もある
月経周期に関与する女性ホルモンに起因した疾患
(3疾患)
①月経疹
②Autoimmune progesterone dermatitis(ASD)
③Estorogen dermatitis(ED)
①月経疹
月経に伴う中毒疹の一種でかつ、ASDとEDが否定できるもの
②APD
プロゲステロンに対するⅠ型、Ⅳ型アレルギー反応
③ED
エストロゲンに対する過敏反応
臨床像:いずれも共通して多様な症状を呈する
蕁麻疹型、多形紅斑型、丘疹型、水疱型など
診断・検査:プロゲステロン、エストロゲンの皮内テスト
即時または遅発型反応が、
プロゲステロンで陽性→APD
エストロゲンで陽性→ED
全て陰性→月経疹
引用:日皮会誌:130(2),233-237,2020(令和 2)